出典を書くことと、使える根拠を確認することは別

文化庁の他人の著作物を利用したい場合の案内は、著作物への該当性や保護対象・期間、権利制限規定などを順に確認し、許諾なしで利用できる条件に当てはまらない場合は、原則として権利者の許諾が必要と説明しています。肖像権など、別の権利や利用条件にも注意を促しています。

また、文化庁FAQの5ー⑬は、自分が制作した成果物の実績紹介でも、契約や秘密保持の確認が関係すると説明しています。引用についても、出典表示のほか、公表済みであることや利用の目的・範囲などの条件を挙げています。出典欄を埋めるだけで、引用として使えるとは限りません。 同FAQの情報基準は令和5年10月で、個別事情によって結論が変わるという注意事項もあります。

ここまでが2026年10月21日に確認した公的資料の要点です。以下は、それを資料制作の業務へ落とし込むための提案です。法的な条件の全項目を網羅するものではなく、判断に迷う場合は責任者から弁護士などの専門家へ相談します。

最初に、素材ごとの使い方を固定する

「営業資料に使う」だけでは、利用条件と比べられません。商談で投影するのか、顧客にPDFを送るのか、紙で配るのか、自社サイトへ載せるのかを分けます。PDFを送れる条件が確認できても、サイト公開まで確認できたことにはしません。

一つの素材を複数の場所で使う場合は、利用先ごとに確認欄を設けます。資料の版・ページ番号と素材IDを対応させ、写真を差し替えたときに古い許諾記録を引き継がないようにします。

管理する項目 残す内容
素材の特定 素材ID、元ファイル、資料の版・ページ・位置
入手元・出典 配布元のURL、作品名・作成者等、入手日。検索結果のURLだけで終えない
利用の根拠 規約・契約・個別許諾の記録、その原文と該当箇所、版・確認日
今回の使い方 配布先、投影・紙・PDF送付・Web掲載などの媒体、予定期間・部数等
加工と表示 切り抜き、色変更、文字の重ね方、図の描き直し、必要な出典・クレジット表記
確認の状態 確認待ち・条件を確認済み・差し替え、理由、確認者・日付、次の確認先

確認表は社内で管理し、契約や許諾メールをそのまま配布資料へ添付しません。資料に表示する出典と、社内で保管する根拠の記録を分けます。

利用条件の原文と、予定する媒体・加工を並べる

規約は提供元のページ、個別許諾は権限のある相手との記録に戻って確認します。「商用利用可」「無料素材」という短い説明だけで終えず、その素材に適用される原文の該当箇所を残します。保存の方法や範囲も、利用条件と社内ルールに従います。

確認する点 不足があるときの扱い
今回の会社・利用者・対象素材に適用される条件か 別の契約や別素材の条件を流用せず、契約管理者へ確認する
予定する配布先・媒体・用途が含まれるか PDF送付だけ確認できた場合、Web公開は別に確認する
切り抜き・翻訳・色変更などの加工を行えるか 加工してよいと推測せず、原文の箇所か追加の許諾を確認する
出典・作成者名などの表示条件は何か 指定文言と配置を配布版で読み合わせる
人物・取引先情報など、別の確認が必要か 著作権の条件だけで終了せず、関係する担当者へ戻す

図表では、元の図の画像を載せる場合と、公開データから自社で図を作る場合を区別します。後者でも、データの提供条件と、数値・単位・対象期間を確かめます。「描き直したから自由に使える」とAIに結論を出させません。

権利者が分からない、原文が見つからない、条件が矛盾する場合は確認待ちにします。見つからないことは利用の根拠になりません。期限までに解消しなければ、その素材を外すか、条件を確認できる別素材へ替えた案を用意します。専門家への相談が必要な引用・契約の解釈も、確認表に質問として残します。

想定シナリオ:商談用の資料をPDF送付とWeb掲載にも使いたい

以下は、架空の卸売会社が会社案内を更新する未実施の想定シナリオです。素材や条件は説明用に置いた設定で、実際の規約・許諾やhirostaの導入実績ではありません。

営業担当が商談用の案内を作り、顧客へのPDF送付と自社サイトへの掲載も予定しているとします。管理画面のイメージは、表計算の一覧で「素材ID・利用先・原文の場所・不足・状態・担当者」を横に並べ、確認待ちの行を絞り込める形です。

素材 手元にある根拠 配布前の対応
表紙の購入写真 購入の控えはあるが、適用規約と加工条件がない 写真のIDと購入時の条件を確認。切り抜いた表紙は確認待ちにする
公開レポートの図 URLと出典名はあるが、転載条件を確認していない 出典表示だけで採用せず、条件・許諾または引用について責任者が確認する
外注した納品物の写真 顧客へのPDF送付についての許諾記録はあるが、Web掲載の記載がない PDF送付の条件は原文と照合し、Web掲載は別の確認待ちにする

営業担当が原文を集め、資料担当が各ページの加工・表示を記録し、責任者が未確認事項の解消を確認します。追加の許諾が必要なら、利用先と加工を具体的にして問い合わせます。AIは依頼文の下書きを補助できますが、送信や利用の確約は任せません。

Web掲載の確認が間に合わない素材は、Web用の版から外します。PDF送付用とWeb用で内容が異なる場合は、ファイル名と保存先にも用途を明記し、古い版を通常の配布先から外します。個別の配布可否はこの架空例で決めず、実際の根拠と利用方法を責任者が確認します。

AIは不足の整理を補助し、人が原文と最終版を見る

AIを使うなら、社内で利用を認めた環境に、入力してよい範囲の条件文と利用予定を渡します。許諾メールの個人情報や非公開の契約全文、素材そのものを無断で入力しません。外部AIへのアップロードを認められるかも、配布への利用とは別に確認します。

依頼では「素材IDごとに条件の原文・該当箇所・予定用途を並べる」「記載がない項目は未確認とする」「権利帰属・引用の適法性・利用可否を確定しない」「資料の変更・公開・送信をしない」と指定します。AIが作った要約や確認済みという表示は、そのまま承認記録にしません。

最後は人が次を確認します。

  1. 素材一覧と資料の全ページを照合し、背景画像や小さな図も漏れていないか見る。
  2. 原文と予定用途を読み合わせ、確認待ちの素材を含む版を配布対象から外す。
  3. 実際に渡すPDFや紙の見本で、出典・クレジット、加工、差し替え漏れを確かめる。
  4. 確認者・確認日・根拠の場所・配布する版を残す。媒体や素材を変えたら再確認する。

修正範囲の管理はスライドの手直しの手順、PDFの読みやすさは公開前の読み上げ・代替情報の確認で扱っています。権利の確認が終わっても、内容や表示の確認が終わったことにはなりません。

費用と期間は、確認する素材と許諾の待ち時間で考える

まず一つの配布予定資料に絞り、素材の洗い出し、原文の収集、責任者の確認、差し替えと最終版の点検を分けます。既存の表とフォルダーで追えるなら、新しいAI連携を作る必要はありません。

費用は素材の購入・追加許諾、差し替えの制作、専門家への相談、一覧や版管理の整備を分けて考えます。期間はページ数だけでなく、出典不明の素材、用途の追加、権利者からの回答待ちで変わります。一律の金額や日数、削減効果は示していません。配布日から逆算して社内の確認期限を置き、未解決なら外す素材と担当者を決めておきます。

資料の一覧化や確認工程の整理は書類処理のガイドと業務別の支援内容へ、支援範囲・料金はサービス案内へつながります。現在の管理方法の整理はお問い合わせからご相談ください。法的な判断と、業務の仕組みづくりは担当を分けて進めます。