1. 目的と読者から、PDFだけでよいかを決める
以下の5段階はhirostaの提案です。最初に「誰が、何を知り、どんな行動をする資料か」を一文にします。会社案内なら事業内容と問い合わせ先、申込案内なら対象者・条件・期限・申込方法が、図や紙面の配置を見なくても分かるかを考えます。
印刷や配布に同じ紙面が必要ならPDFを残し、ウェブ上で読む情報はHTMLのページにも用意する方法があります。スマホからの閲覧や、見出しをたどって必要な箇所へ移動する利用を想定し、PDFだけに情報を閉じ込めてよいか判断してください。HTMLにも見出しや表、リンクの確認は必要です。
デジタル庁の「ウェブアクセシビリティ検証結果(2025年)」では、同庁のPDFで構造・読み上げ順・画像の代替テキストなどの課題を報告しています。改善の方向性にはウェブページやテキストによる代替も含まれます。これはデジタル庁のサイトの検証結果で、hirostaの実績ではありません。 2026年10月21日に同ページを確認しました。
この報告を踏まえ、本記事では、見た目の調整に加えて「同じ情報を別の形式で届けられるか」を公開前の確認に含めます。PDFが必要かと、PDFの内容を利用できるかは、それぞれ確かめます。
2. Word・PowerPointなど、元の文書で構造を整える
PDFにする前に、元の文書で次を確認します。項目名や設定方法はソフトによって異なるため、使用中の版のヘルプも参照してください。
- 見出し: 文字を大きくするだけで終わらせず、文書の見出しスタイルやスライドのタイトルとして設定し、内容のまとまりと階層をそろえます。
- 読む順番: タイトル、本文、図表の説明、注記の順に意味がつながるかを見ます。段組みや複数のテキストボックスは、画面上の配置だけで順番を判断しません。
- 表: 何の表か、列・行の見出し、単位、条件を明示します。複雑な結合セルで対応が分かりにくい場合は、表を分けたり本文で補ったりします。
- 図・写真・グラフ: 内容の理解に必要な図には説明を用意します。「組織図」「グラフ」だけで済ませず、図が伝える関係や結論を本文にも書きます。装飾画像との扱いは区別します。
- リンクと文書情報: 「こちら」だけでなく行き先の分かるリンク名を付け、資料のタイトルと使用言語の設定も確認します。
直す箇所が多い場合は、先に対象ページと要素を決めます。修正範囲の指定と修正前後の比較は、スライドの修正範囲を決める手順で扱っています。この記事では、公開前の確認と代替の用意に絞ります。
3. 書き出したPDFで、順番・しおり・リンクを確認する
元の文書を整えただけで確認済みにせず、実際に公開する版のPDFを開きます。構造を引き継ぐタグ付きPDFの書き出し設定を確認し、書き出し後にも見出し・表・読む順番が保たれているかを見てください。タグは見出しや表などの構造を表す情報です。タグがあるだけで内容が正しく伝わるとは限りません。
- 文字として選べるか。 本文を選択・コピーし、抜けや文字化けがないかを見ます。画像をOCRで文字にした場合も元の紙面と照合します。文字が選べることだけでは、正しい読み上げ順は分かりません。
- 見出しをたどり、意味のある順に読めるか。 想定するPDF閲覧ソフトとスクリーンリーダーで、見出しから必要な章へ移動し、本文・図表・注記を読みます。左右の段が混ざる、注記が離れる、表の見出しと値の対応が分からない箇所を記録します。ソフトの単純な読み上げ機能だけで、スクリーンリーダーでの利用を確認済みとしません。
- しおりで移動できるか。 長い資料は章のしおりを用意し、名前と移動先が合うかを確かめます。しおりは文書内の移動を助けるもので、本文の見出し構造の代わりにはしません。
- リンクを操作できるか。 キーボードでリンクへ移動し、行き先の説明が分かり、目的のページが開くかを確認します。申込案内は申込先・期限・連絡先も原稿と照合し、確認のために実際の申込は送信しません。
- タイトルと言語が合うか。 PDFの文書情報を開いて確認します。チェックツールの指摘があれば内容を読み、修正後のPDFで該当箇所を再確認します。
確認記録にはOS、PDF閲覧ソフト、スクリーンリーダーの名前と版、対象ページも添えます。使用予定の環境を用意できなければ「読み上げ未確認」と残し、合格扱いにしません。ツールの結果と、人が実際に読んで操作した結果を分けて記録してください。
4. 図だけで伝えている内容を、本文やHTMLで伝える
たとえば申込手順が矢印の図だけなら、「申込条件を確認する→必要書類を用意する→申込先へ提出する」のように、順序を文章でも示します。提出前の条件や分岐があれば省略しません。表は項目と値の対応、グラフは比較対象・期間・単位・読み取ってほしい要点を、元の資料と一致させます。
短い説明は図の代替テキストにし、詳しい説明や複雑な表は本文やHTMLにも用意する方法があります。代替ページへのリンクはPDFの掲載ページで見つけられる位置に置きます。「詳しくはお問い合わせください」だけで、必要な説明を置き換えないようにします。
HTMLやテキストには、概要だけでなく、読者の判断に必要な条件・期限・申込方法・注記も引き継ぎます。PDFと代替の版を対応させ、更新時に両方を照合する担当を決めてください。
AIに任せるのは、説明文の下書きと見出し候補まで
この手順でのAIの用途は、図や表の説明文の下書き、見出し構成の候補の洗い出しに限ります。入力は社内で利用を認めた情報だけに絞り、公開前の機密資料をそのまま渡しません。
AIが出した説明の数値・単位・条件・関係が元の資料と一致するかは人が照合します。図にない因果関係や効果を補わせず、見出しの採用、PDFへの反映、実際の利用環境での読み上げ・操作、公開の判断は人が行います。
5. 確認済みと未確認を記録して、公開を判断する
確認表の列は、資料名・版・公開先・見出し・読み上げの順番・図や表の説明・リンク・代替の有無・確認した人・確認した日・未確認の点を基本にします。結果を「済」だけにせず、対象ページと分かったことを書き、別欄に確認環境・残る作業・担当・再確認日・公開判断を残します。
想定シナリオ:架空の会社案内の確認記録
架空の会社「こはる企画」の会社案内を、PDFとHTMLで公開する想定です。以下は記入方法を示す想定シナリオであり、実際に行った確認の記録ではありません。スマホでも追いやすいよう、確認表の1行分を項目別に示します。
| 確認表の列 | 記入例(架空) |
|---|---|
| 資料名 | こはる企画 会社案内 |
| 版 | 公開候補v2。元の文書・PDF・HTMLを同じ版で管理 |
| 公開先 | 自社サイトの会社紹介ページ。PDFとHTMLを併記する予定 |
| 見出し | 元の文書で「事業紹介」「相談の流れ」「問い合わせ先」を設定済み。PDFでの見出し移動は未確認 |
| 読み上げの順番 | 事業紹介の段組み部分と注記が未確認 |
| 図や表の説明 | 相談の流れの図を文章化した案あり。原稿との照合は未完了 |
| リンク | 問い合わせ先のリンク先を確認済み。キーボード操作は未確認 |
| 代替の有無 | HTML案あり。PDFとの内容・版の照合は未完了 |
| 確認した人 | 広報担当A(架空の担当) |
| 確認した日 | 公開候補v2を確認した日を記入する想定 |
| 未確認の点 | PDFの見出し移動・読み上げ・キーボード操作、説明文とHTMLの照合 |
この想定では、公開担当はまだ「公開可」にしません。担当と再確認日を決め、説明文と代替の照合を終え、実際の利用環境で残る操作を確認してから判断します。必要な情報を読めないまま、PDFだけの公開を先に進める例ではありません。
この記事の制作で確認したのは、出典ページに記載された課題と改善の方向性です。 上記の元文書・PDF・HTMLは制作しておらず、スクリーンリーダーやPDF閲覧ソフトでの操作、個別資料の適合性は確認していません。
実際の公開前には、申込条件や連絡先など、読めなければ行動できない情報を優先して確かめます。読み上げに問題が残るなら元文書やPDFを修正するか、同じ情報を得られるHTML・テキストを整えます。未確認を「問題なし」に変えず、確認できた範囲と代替の内容を添えて公開担当者へ渡してください。