1. 試したこと:日付の異常と、原文との食い違いを分ける

管理表に日付が入っていても、原文と合っているとは限りません。今回は、同じ管理表を (a) 表の値だけで確認する方法と、(b) 契約本文・覚書の条項を照合する方法で整理しました。

一般的な管理手順は、満了日・通知期限・社内の判断日を分ける記事へ譲ります。この記事は、その手順のうち「原文から根拠付きで候補を書き出し、確認待ちにする」部分を動かした記録です。既存記事の想定シナリオを実運用の実績へ置き換えたものではありません。

大阪産業創造館の相談回答の現行掲載本文を2026年10月20日に確認しました。更新時の条件に注意し、更新しないための時期・手続きを締結時に確認して契約中に管理する、という説明を参照しています。以下の架空条項・日付・確認待ちの区分は今回の試作の設定です。

2. 作り方の要点:想定表を先に固定し、計算と読み取りを分ける

架空の条項表:契約6件・覚書2件

主体は「架空ラボ商会」、相手先は「架空取引先A」〜「架空取引先F」、契約名は「取引基本契約A」〜「取引基本契約F」です。すべて架空の識別名です。資料には金額・住所・宛先・動くリンクを入れていません。文字だけの短い条項表で、PDF・OCRや全文検索は試していません。

下表が今回使った期間・更新・通知の本文です。初回期間だけを扱い、過去の更新履歴はありません。

契約 条項番号 本文
A 第10条 期間は2026年4月1日から2027年3月31日まで。満了日の60暦日前の日までに、更新しない旨の書面が相手方に到達しない場合、同条件で1年間更新する。以後も同様とする。
B 第11条 期間は2026年7月1日から2027年6月30日まで。満了日の30暦日前の日までに、更新しない旨の書面が相手方に到達しない場合、同条件で1年間更新する。以後も同様とする。
C 第12条 期間は2026年10月1日から2027年9月30日まで。満了日の60暦日前の日までに、更新しない旨の書面が相手方に到達しない場合、同条件で1年間更新する。以後も同様とする。
D 第13条 期間は2027年1月1日から2027年12月31日まで。満了日の45暦日前の日までに、更新しない旨の電子メールが相手方に到達しない場合、同条件で1年間更新する。以後も同様とする。
E 第14条 期間は2026年9月1日から2027年8月31日まで。満了日の60暦日前の日までに、更新しない旨の書面が相手方に到達しない場合、同条件で1年間更新する。以後も同様とする。
F 第15条 期間は2026年8月1日から2027年1月31日まで。満了日の31暦日前の日までに、更新しない旨の書面が相手方に到達しない場合、同条件で6か月間更新する。以後も同様とする。
覚書M1 第1条 取引基本契約Cの第12条の通知条件を、満了日の30暦日前の日までの電子メール到達に変更する。この変更部分は第12条に優先し、その他は変更しない。
覚書M2 第1条 取引基本契約Eの第14条について、別途合意した対象取引に限り、満了日の30暦日前の日までの電子メール到達に変更し、この部分は第14条に優先する。その他は変更しない。

M1・M2は双方が合意した資料という入力設定です。ただし、M2の「対象取引」を特定する別途合意書は渡していません。覚書の日付が後だから全体を優先する、とは処理しません。

照合前の管理表

表中のA〜Fは上記の契約名と相手先に対応します。「なし」はこの架空資料に覚書がない設定、「空欄」は未記入です。横長の表は横にスクロールして読めます。

契約・相手先 満了日 通知期限 通知方法 根拠条項 覚書
A・架空取引先A 2027-03-31 2027-01-30 書面到達 第10条 なし
B・架空取引先B 2027-05-31 2027-06-30 書面到達 第11条 なし
C・架空取引先C 2027-09-30 2027-08-01 書面到達 第12条 M1
D・架空取引先D 2027-12-31 2027-11-16 空欄 第13条 なし
E・架空取引先E 2027-08-31 2027-07-02 書面到達 第14条 M2(適用未確認)
F・架空取引先F 2027-01-31 2026-12-31 書面到達 第15条 なし

AIの候補を作る前に固定した想定の結果表

試作者である同じAIが、先に次の表を保存し、候補の作成前に固定しました。保存時刻とファイルのハッシュを残し、照合後も内容を変えていません。担当者が作った正解表ではありません。

契約 想定 理由・根拠の条項
A 一致(対照) 第10条と管理表の日付・書面到達が一致
B 取り違え 第11条の満了日と通知期限を管理表で逆にした
C 覚書の未反映 M1第1条の変更が通知期限・方法・根拠に未反映
D 通知方法の欠落 第13条の電子メール到達が管理表にない
E 判断材料不足 M2第1条の適用対象を特定する別途合意書がない
F 一致(対照) 第15条と管理表の日付・書面到達が一致。更新後は6か月

最初の形と、AI・コードの分担

最初から、元の管理表を変更せず、候補と根拠を別表に残す形にしました。AIには次の方針で指示しました。

(a) 管理表の値だけで、日付順の異常・空欄・未確認の表示を整理する。
原文を見ないと分からないことを、表の値だけから確定しない。
(b) 条項表から満了日、更新の条件、通知の暦日数と方法の候補を、
契約と条項番号付きで書き出す。覚書の変更範囲と優先の根拠を分ける。
適用が分からない覚書は一つに決めず、不足資料を残す。
日付計算はコードへ渡し、計算結果と管理表の食い違い候補を整理する。
有効性・解約の可否・個別の期限は確定しない。全件が人の確認待ち。
通知を作らない・送らない。管理表を自動更新しない。

(a)と(b)は、同じAIが参照範囲を制限して整理した2通りの出力です。想定や原文を隠した別セッションの比較ではなく、原文の知識を完全に切り離せたとはいえません。

日付は短いJavaScriptを手元で1回実行しました。AIが抽出した満了日と暦日数を入力し、UTCの日付から「暦日数×24時間」を引いて算術上の候補を求め、管理表との差も日数で出しました。条項の抽出をコードで代用したものではありません。法的な期間計算を実装したコードでもありません。

3. 試した結果:管理表だけでは覚書の未反映を特定できなかった

(a) 管理表の値だけを見た確認

「異常なし」は原文との一致を意味しません。一致欄は、先に固定した想定の区分と根拠まで特定できたかの読み合わせです。

契約 項目・管理表の値 AIの候補と使えた根拠 想定 一致/不一致・理由
A 日付・方法に空欄なし 日付順の異常なし。根拠は表の値だけ 一致 一致の裏付けは未確認。原文がない
B 満了05-31・通知06-30(2027年) 通知期限が満了日より後。どちらを直すか不明 取り違え 特定は不一致。順序異常までで、逆転の根拠がない
C 通知2027-08-01・書面到達・M1 空欄・日付順の異常なし。M1の反映状況は不明 覚書の未反映 特定は不一致。旧条件の残存を見落とした
D 通知方法が空欄 通知方法の欠落。方法の候補は不明 通知方法の欠落 区分は一致。補う方法は表から分からない
E M2(適用未確認) 適用関係の確認待ち。表の注記が根拠 判断材料不足 区分は一致。不足資料の具体化はできない
F 日付・方法に空欄なし 日付順の異常なし。根拠は表の値だけ 一致 一致の裏付けは未確認。原文がない

Bのような逆転は表だけでも注意を向けられます。しかし、日付順が自然なCは、覚書の名前が載っているだけでは未反映を特定できませんでした。Eも、管理表に「適用未確認」の注記を入れた条件で保留できた結果です。

(b) 原文の条項と照合した候補

更新条件の候補は、A〜Eが「期限までに不更新の通知が到達しなければ同条件で1年更新、以後同様」、Fが「同条件で6か月更新、以後同様」でした。根拠はそれぞれ第10〜15条。M1・M2は変更部分以外を変えない記載として残しました。

以下の日付はコードの算術上の候補です。Eは本文条件とM2が適用される場合の両方を残し、採用する期限を選んでいません。

契約 満了日候補 通知の計算候補 方法の候補 根拠の条項
A 2027-03-31 60暦日前=2027-01-30 書面到達 第10条
B 2027-06-30 30暦日前=2027-05-31 書面到達 第11条
C 2027-09-30 30暦日前=2027-08-31 電子メール到達 第12条・M1第1条
D 2027-12-31 45暦日前=2027-11-16 電子メール到達 第13条
E 2027-08-31 本文60暦日前=2027-07-02/M2適用時30暦日前=2027-08-01 本文は書面到達/M2適用時は電子メール到達 第14条・M2第1条
F 2027-01-31 31暦日前=2026-12-31 書面到達 第15条

(b)と想定表を契約ごとに照合した結果

全6件を、上の候補と固定した想定表で1件ずつ読み合わせました。各行の状態は、記載の一致候補を含めて人の原文確認待ちです。「一致」は想定表との一致で、期限の確定や解約できるという判定ではありません。

契約 項目・管理表の値 AIの候補・根拠(計算はコード) 想定 一致/不一致・理由
A 満了03-31・通知01-30(2027年)、書面 日付・方法の一致候補。第10条 一致 一致。管理表と候補の差は両日付とも0日
B 満了05-31・通知06-30(2027年) 満了06-30・通知05-31の逆転候補。第11条 取り違え 一致。管理表-候補は満了日−30日・通知期限+30日
C 通知2027-08-01、書面、第12条のみ 通知08-31・電子メール、M1第1条の変更未反映候補 覚書の未反映 一致。通知期限は候補より30日前。方法・根拠も旧記載
D 通知方法が空欄、通知2027-11-16 電子メール到達が欠落。第13条。日付は一致候補 通知方法の欠落 一致。日付差が0日でも、通知条件はそろわない
E 通知2027-07-02、書面、M2適用未確認 第14条・M2第1条の適用関係を保留 判断材料不足 一致。別途合意書がなく、本文条件との一致だけでは確定できない
F 満了2027-01-31・通知2026-12-31、書面 日付・方法の一致候補。第15条、更新後6か月 一致 一致。日付差はともに0日。更新期間も根拠を保持

この試作・この条件では、(b)の分類と理由は6件とも想定と一致しました。内訳は一致候補2件、取り違え・覚書の未反映・通知方法の欠落が各1件、判断材料不足1件です。想定を知る同じAIによる短い素材の読み合わせであり、一般的な正答率を示す数字ではありません。

かかった時間と測った範囲

2026年10月20日、想定固定の記録(UTC 05:57:12)から、候補の保存・コード実行・6件の読み合わせ完了(05:57:57)までの経過は45秒でした。素材・想定表の準備、出典調査、記事編集、ビルド・表示確認は含みません。AIが作業したこの範囲の経過時間で、人の確認時間や業務の削減時間ではありません。

4. うまくいかなかったことと、直したこと

分類の取り違えや想定表の修正は、この読み合わせではありませんでした。元の管理表も書き換えていません。最初から別表に候補・根拠・確認待ちを残し、公開用にはその理由を短く整理しました。失敗や修正を示すために、後から誤りを加えてはいません。

限界が残ったのは、Eです。計算を2通りできても、どちらの条件を使うかは決まりません。日付を計算できることと、覚書を適用できることを分け、不足している別途合意書を確認対象に残しました。

また、今回は明確な契約IDと短い条項で、変更部分の優先関係も明記しています。実際の契約全文、複数の変更合意、月単位の通知期間、月末・休日の扱い、発送と到達が曖昧な条項、既に更新を重ねた契約は試していません。コードの暦日計算をそのまま実契約の期限計算に使うことはできません。

通知先の具体的な情報も架空資料には入れていません。方法に「電子メール」と書けても、宛先・到達の確認・手続き全体がそろったことにはなりません。

5. 実際の業務で使う前に確認すること

責任者は、現在有効な期間が分かる完全な原文と、対応する覚書・変更合意をそろえます。Eのように別途合意が足りない場合は、その資料を集め、解釈が必要なら専門家へ確認します。AIの候補を見ずに担当者が整理した結果との比較も必要で、今回の同じAIによる照合では代替できません。

確認待ちの行には、不足資料、確認する責任者、社内の回答予定日を記録します。そのうえで人が原文から個別の期限・通知方法・通知先を確かめ、管理表の修正を決めます。空欄を「期限なし」と読まないようにし、社内の回答予定日と契約上の通知期限も分けます。

期限の確認後は、通知期限より前に置く社内の判断日と判断する人を、準備に必要な時間を踏まえて決めます。今回は人の担当決定や通知・手続きは実施していません。詳細は既存の管理手順を参照してください。

実契約を扱う前には、入力可能な情報と利用を認められた環境を確認します。社名を伏せただけで非公開の取引条件を外部AIへ入力してよいとはいえません。

6. 相談への案内

「覚書が管理表に戻らない」「日付の根拠を探すのに時間がかかる」「確認待ちの担当が分からない」といった困りごとから、資料の整理と人へ渡す工程を検討できます。書類処理AIの業務改善ガイドとサービス・料金もご覧ください。法的な判断を責任者と専門家に残したうえで、確認の流れを無料相談で一緒に整理できます。