1. 回答全体と、工程ごとの時間を分けて測る

検索が遅いと決めつける前に、質問を受け付けてから回答が表示されるまでの流れを分けます。 開発・保守の担当者と、各工程の開始と終了をどこで記録するかを決めます。

  • 検索:質問に合う資料の候補を探す。
  • 読み取り:候補の本文を取り出し、回答に使う箇所を用意する。
  • AIの呼び出し:AIへ依頼してから、その結果を受け取るまで待つ。
  • 整形・表示:回答と出典を、利用者が読める形にして表示する。

これは自社の工程を整理するための例です。使っている仕組みに合わせて区切り、測れない工程は未測定と残します。 AIを途中でも呼ぶ場合は、その待ち時間も分けて記録します。検索と読み取りをまとめて測ったなら、後から別々の時間として説明しません。

回答全体の時間は、測り始めと測り終わりをそろえます。途中から回答が見える仕組みでは、「表示が始まるまで」と「最後まで表示されるまで」を混ぜないようにします。工程が並行して動く場合も、工程の時間を単純に足した値を、利用者の待ち時間と扱わないようにします。

測定日、質問を識別する番号、使った資料の版、測定の区切り、全体と工程ごとの時間を残すと、変更前後を比べる材料になります。質問本文や資料の中身を広く共有する必要はありません。記録する情報と閲覧できる人を、社内のルールに合わせて絞ります。

2. 社内の試作で測ったことと、そこからの判断

hirostaが社内で開発している、学習記録を扱うAI相談では、2026年10月10日に改善を試作しました。探索的な試作であり、本番の仕組みは変えていません。

同日の試作記録では、実際の回答1回にかかる時間は約15秒でした。そのうち、記録の検索と読み取りにかかった時間は約0.004〜2.24秒でした。前者は回答全体、後者は検索と読み取りの工程を対象にした時間です。検索だけ、読み取りだけの値には分けず、この範囲から平均や削減率を計算しません。

記録上は、回答時間の大半が検索・読み取り以外のAIへの呼び出しにあると判断しました。そのため、速くするには検索の高速化より、AIを呼び出す回数を減らすほうが効くと判断しています。

ただし、これは次に試す改善の順序を決めた段階です。呼び出し回数を減らした後の時間は測っていません。実際のAI回答の質の評価も、今回の試作では未実施です。「回答が速くなった」「質を保てた」という結果にはしていません。

この数値は、2026年10月10日の社内の試作記録に限ったものです。他社の資料や質問でも同じ時間になることや、同じ改善が有効であることを示すものではありません。

3. 一番時間を使っている工程から、変更を試す

自社で測った時間を見て、最初に変える工程を決めます。 検索・読み取りが長いなら資料を探して取り出す工程、AIの呼び出しが長いなら依頼の分け方や重複した呼び出し、整形・表示が長いなら結果を表示する工程を見直す候補にします。

一度に複数の工程を変えると、何が時間や回答に影響したかを判断しにくくなります。まず変更箇所を絞り、同じ区切りで測り直します。工程が短くなったかと、回答全体の待ち時間が短くなったかを分けて確認します。

AIを呼ぶ回数を減らす案でも、必要な資料確認や回答の確認を省いてよいとは限りません。どの呼び出しをまとめるか、どの確認を残すかを担当者と決め、変更後の回答を照合します。測定前に「これで速くなる」と確定させず、結果が出てから判断します。

検索方式を変えるかどうかは、待ち時間とは別に、必要な資料が候補に残るかの確認も必要です。方式ごとの比較は検索方式の比較と選び方と社内で比較した事例で説明しています。

4. 同じ質問で、回答の質が落ちていないかを確かめる

速さを変えたら、変更前後で同じ質問と資料を使い、業務担当者が回答を比べます。時間が短くなっただけで採用を決めず、次を確認します。

  • 資料にある事実と回答が一致し、必要な条件や注意事項が抜けていないか。
  • 出典から該当箇所を確認でき、古い版や対象違いの資料を根拠にしていないか。
  • 資料に答えがない質問では、推測で埋めず、答えられないことを示せるか。
  • 担当者が直す箇所や、確認にかかる負担が増えていないか。

根拠がない場合の扱いはAIに「記録なし」と答えさせるための確認工程、規程の版や条文の照合は社内規程のAI下書きを一次資料で照合する手順をご覧ください。

時間の比較と回答の確認結果は別々に残します。「時間は測定済み、質は未評価」なら、その状態のまま記録し、改善が完了したとは扱いません。確認できた範囲と未確認の点を示すことが、次の判断につながります。

5. 想定シナリオ:社内規程の質問に答えるAI相談

以下は架空の会社での想定シナリオです。実施済みの取り組みや成果ではありません。

担当者が「備品を申請するとき、どの書類を出せばよいですか」という架空の質問に答えるAI相談で、待ち時間が気になったとします。まず、規程を検索する時間、該当箇所を取り出す時間、AIの結果を待つ時間、出典を添えて表示する時間に分けて測ります。

AIの結果を待つ工程が一番長ければ、同じ内容を重ねて依頼していないかを見直す候補にします。変更後は同じ質問と規程で時間を測り直し、提出書類・適用条件・出典の一致を担当者が確かめます。規程にない例外を尋ねる質問も用意し、根拠のない答えを作っていないかを確認します。

この順序なら、「検索を速くしたい」という手段から始めず、測った工程と回答の確認結果をもとに、次に直す箇所を決められます。導入前に使う資料や窓口を整える方法は社内資料から答えるAIチャットの導入準備で説明しています。