1. 混ざりやすい誤りを、条文案ごとに確かめる
AIが整った文章を返しても、法令の根拠まで正しいとは限りません。確認では、文章の読みやすさと根拠の正しさを分けます。
| 混ざりやすい誤り | 人が確認すること |
|---|---|
| 改正前の法令 | 適用する時点の施行版か。未施行の改正と混ざっていないか |
| 廃止・変更された通達 | 発出元の本文、番号、発出日と、その後の改正・廃止の有無 |
| 存在しない条番号 | 法令名と条・項・号が実在し、本文が案の根拠になっているか |
| 他社の規程の転記 | 出所、利用条件、自社と違う対象者・勤務条件が残っていないか |
他社の規程や検索結果の抜粋は、そのまま自社の法的根拠にはできません。社名を置き換えるだけで採用せず、自社が決める事項と法令上必要な事項を切り分けます。
Geminiの公式ヘルプは、不正確な情報を事実のように提示することがあり、法律などの専門的助言として回答に依拠しないよう案内しています。また、ソースの説明では、関連リンクは回答の一部に関係する内容で、すべての回答に付くわけではありません。
そのため、リンクがあることを照合済みの証拠にはしません。ここでの製品説明はGeminiの公式資料の範囲であり、他のサービスに同じ表示や機能があるとは扱いません。
社内の観察:近い候補が返っても、根拠があるとは限らない
関連リンクや検索候補があることと、下書きの根拠が成り立つことは分けて確認します。 この判断の材料にしたのが、hirostaが社内で開発している、学習記録を扱うAI相談の検索検証です。
2026年10月10日の探索的な比較では174問を用い、存在しない記録や対象違いを尋ねる20問でも、ベクトル検索だけでは全問で何かしら近い候補が返りました。数えたのは「検索が候補を返した質問の数」であり、AIが20問すべてに誤回答したという結果ではありません。実際の回答は代表例5件で照合し、その5件では主な事実と参照元が記録と一致しました。これは回答の正解率ではありません。観察と回答確認の範囲は公開済みの検証記録で確認できます。
hirostaはこの観察から、候補の近さだけで判断せず、IDや日付を厳密に照合し、本文に根拠があるかを読む工程が要ると判断しました。検索方式の比較と限界でも、この確認を検索方式の選択と分けて扱っています。
検証対象は学習記録であり、法令や規程の検索ではありません。この記事では、その判断を下書きの根拠確認へ応用し、文書名・番号・適用時点・本文を照合する工程を読者の会社へ提案します。法令検索で同じ挙動を観察したという報告ではありません。
2. 条文案と、根拠の種類を分けて出させる
最初に対象の規程、適用する時期、対象者、今回見直す範囲を決めます。社内資料は正本・版・適用日を揃え、入力してよい資料だけを使います。社員情報や未公開の規程を渡す前の確認は、AIへ入力する情報の判断をご覧ください。
依頼文には、次のような条件を添えます。これは頼み方の例で、実際のサービスに送信して確かめたものではありません。
指定した対象・適用時期と、提供した資料の範囲で社内規程の下書きを作ってください。条文案ごとに、根拠の種類(法令・官庁のモデル例・社内の決定・提案)、法令名と条・項・号、資料名とURL、参照箇所、施行日・改定日、対象条件を別に示してください。資料にない根拠や日付、条番号は作らず「未確認」とし、確認すべき点を挙げてください。会社がまだ決めていない条件を法令上の義務として書かないでください。
法令の条番号、モデル就業規則の条番号、自社規程の条番号は別物です。「第○条」だけでなく、どの文書の番号かを明記させます。AIが原文を引用した場合も、人が原文と照合するまでは下書きの扱いです。
日付やURLが空欄なら、担当者が一次資料を探して補います。資料を見つけられないときは、AIへ繰り返し尋ねるだけで確定せず、該当する条文案を保留して専門家や資料の発出元へ確認します。
3. 一次資料で、実在・版・本文・適用条件を照合する
照合担当は、条文案の横に確認記録を置きます。「AIが確認した」という表示ではなく、人が何を読んで判断したかを残すための記録です。
社内の検証で必要とした「IDや日付の厳密な照合」を、ここでは文書名・番号(条・項・号)・適用時点(施行日・改定日)の照合に対応づけます。そのうえで本文が下書きの主張を支えるかを読みます。以下は規程の根拠確認への応用案で、社内の比較で実施した工程ではありません。
- 発出元で資料を開く:法令はe-Gov法令検索、モデル例・通達は所管官庁の掲載元へ進みます。AIが示したURLだけに頼らず、公式サイトから文書名でも探し、法令・規程・モデル例のどの文書かを確かめます。
- 使う版と適用時点を確かめる:e-Govの法令改正履歴で「現在施行」と未施行の改正を分け、規程を適用する日との関係を確認します。モデル例は掲載ページとPDF表紙の年月を合わせます。公布日・施行日・資料の改定日・確認日を一つの日付にまとめません。
- 該当箇所の本文を読む:条・項・号、前後の条件、例外、別条への参照、附則の経過措置まで確認します。通達は番号と本文を確認し、後の改正・廃止が追えなければ未確認に戻します。
- 下書きの主張と比べる:条文が存在するだけでは足りません。「義務がある」「対象者全員に適用する」といった説明を、その本文が支えているかを確かめます。会社の独自ルールを、法令の要請に置き換えないようにします。
- 採用・修正・保留を残す:資料名・URL・版・参照箇所・照合日・確認者・判断理由を記録します。解釈や適用が決められない点には、質問内容と確認先を付けます。
保留の理由は、「確認した範囲に根拠がない」「条件が不足している」「資料を確認できない」を分けます。書き分けと人への引き継ぎは「記録なし」と「確認できない」を分ける手順をご覧ください。
厚生労働省のモデル就業規則は、2026年10月11日の確認時点で令和7年12月版が掲載されています。本文の「活用に当たって」は、表紙時点の法令等に基づくモデル例であり、事業場の実態に合わせる必要があると説明しています。掲載中のモデルを使う場合でも、関連法令のその後の改正は別に確認します。
Google検索セントラルの指針も、情報源を明らかにし、事実誤認を点検する観点を示しています。これは公開コンテンツの指針であり、社内規程の作成手続きや法的な適合を保証するものではありません。ここでは、根拠を読者や確認者がたどれる形にする参考として使っています。
想定シナリオ:架空の会社の備品貸出ルールを下書きする
架空の「みどり事務用品社」で、社内備品の貸出手順を見直す未実施の想定シナリオです。実在企業の規程やAIの実際の出力を使った例ではありません。
担当者は「貸出前に担当窓口へ申請する」という会社の方針を決め、AIに条文案を整えてもらうとします。確認対象の架空の案は「備品を借りる社員は、貸出前に担当窓口へ申請する」です。
| 下書きの横に置く項目 | この想定例での扱い |
|---|---|
| 条文案の根拠 | 会社が決めた貸出手順。法令上の申請義務とは書かない |
| 未確認の主張 | 「法令で書面申請が義務付けられている」と付いたら、出典を照合するまで採用しない |
| 会社が決める条件 | 申請方法、承認担当、返却時の確認。未決定なら案に残す |
| 確認記録 | 方針を決めた資料の版・箇所と、実際に照合した日・確認者を記す |
根拠のない法令説明が混ざったら、その説明を外し、会社の決定と提案を分け直します。備品の破損時の費用負担や懲戒まで案が広がった場合は、貸出の操作手順と一緒に確定せず、専門家に確認する論点へ分けます。
4. 届出・労使の手続き・解釈は専門家に確かめる
根拠との一致と、正式な規程として採用できることは別です。労働基準法の第89条は就業規則の作成・届出、第90条は労働組合または過半数代表者からの意見聴取と届出時の意見書添付、第92条は法令・労働協約との関係、第106条第1項は周知を定めています。これは確認先を示す要約で、条文の直接引用ではありません。
厚労省モデルの「はじめに」は、作成・届出を事業場単位で考えることや、不利益な変更を慎重に検討することも説明しています。会社全体の人数や一つの条文だけを見て、手続きの要否を決めないでください。
正式な採用前には、社会保険労務士などの専門家や所管官庁へ、次の点を確かめます。
- 自社の事業場・対象者・適用日に必要な規定と、届出の要否。
- 意見聴取、過半数代表者の選出、周知など必要な手続き。
- 既存の労働契約・労働協約との関係と、従業員に不利益となる変更の扱い。
- 法令や通達の解釈、例外・経過措置、自社の勤務条件への適用。
相談時は、条文案、参照した一次資料の箇所、現在の規程との差分、未確認の質問を揃えます。AIの回答だけを渡して「問題がないか」と聞くより、何を判断してほしいかを具体的に示せます。
5. この工程の限界と、最初に進めること
出典を出させる依頼文だけで、古い根拠や架空の条文を防ぎ切れるとは言えません。一次資料の確認にも読み落としや解釈違いは残り、照合後に法令や会社の条件が変わることもあります。確認記録があることだけで、法令に適合する、AIの下書きをそのまま使えるとは判断しません。
社内の観察は学習記録の検索に限られます。法令検索での候補の出方、提案した工程による法的適合や誤りの減り方は未検証です。代表例の回答照合も、規程の下書きの正しさを示すものではありません。
この記事の規程作成については、生成AIの実操作、架空の貸出規程の試作、個別企業への適用、時間・費用の削減効果を確認していません。社内で観察したこと、その解釈、公式資料の説明、読者向けの提案を分けて示しています。
最初は見直す箇所を絞り、条文案と根拠を並べ、未確認の説明を正式な規程から外すところから進めましょう。改正や社内方針の変更が分かったときは、記録した根拠から影響する条文案を見直せます。
既存の記録にないことをAIに答えさせない工程は社内検索の根拠確認、社員が使うサービスの把握と利用ルールは社員のAI利用の整理、実際の作業から手順書を作る方法は業務マニュアルの下書きで扱います。本記事は、社内規程の下書きで法令・官庁資料などの根拠を確かめる工程に絞っています。