1. 変更の連絡と、旧・新の規格書を対にして残す

ここからの5段階は、hirostaの提案する手順です。まず変更案件に管理番号を付け、連絡日、仕入先、原材料の名称・コード、変更の内容と適用予定を記録します。仕入先名は社内で対応が分かる記号でも構いません。

旧規格書を上書きせず、新規格書と並べて版・発行日・受領日を残します。版番号がない場合は発行日と受領日、ファイル名などで区別し、仕入先への確認が必要な点を記します。変更通知・規格書の保存先を対応表からたどれるようにしてください。

変更通知だけ届き、新規格書がまだない場合は「新規格書未受領」です。原材料の名称が同じでも、中身が同じとは決めつけません。連絡の内容と規格書が食い違う場合は、仕入先への確認担当と回答待ちの内容を残します。

2. 影響する商品と、包装ごとの表示を洗い出す

原材料コードを起点に、自社の配合表や商品一覧から使用商品を探します。中間原料や合わせ調味料に使っている場合も、その先の商品まで確認します。商品名の検索だけで洗い出しが完了したとは扱いません。

同じ商品でも、容量・販売先・包装形態で表示や包材が違うなら行を分けます。商品コード、配合表の版、包材コードも付けると、どの表示案を確認すべきかを追えます。対象外とした商品も、理由と確認者を記録しておくと後から判断をたどれます。

対応表は、変更案件×商品×包装を1行にするのが出発点です。次の列を例に、手元の表計算や既存の管理表で始められます。

列の例 記録する内容
変更の連絡日 変更通知を受け取った日と通知の参照先
仕入先〔記号〕 社内で仕入先を特定できる記号
原材料 名称・原材料コード
旧規格書の版/新規格書の版 各版・発行日・受領日と保存先
影響する商品 商品コード・名称、包装・包材コード、配合表の版
切替のロット/製造日 新原料のロットと、自社で使い始める商品ロット・製造日
表示案の版 原材料名・アレルギー表示を含む案の版と、照合した規格書の版
確認者 表示案を確認する品質の担当者。未割当はその旨を記す
確認日 実際に確認した日。予定日やファイル受領日で代用しない
旧包材の在庫 包材コード・数量・保管場所・在庫の確認日
未確認の点 不足資料、食い違い、回答待ちと確認先

確認者を決めたことと、確認が終わったことは別です。「未確認の点」に対応期限と担当も付け、空欄を確認済みと解釈しない運用にします。

3. 新しい原材料に切り替えるロット・製造日を決める

仕入先の切替予定日を、そのまま自社の切替日にはしません。旧原料の在庫、新原料の入荷ロット、製造予定を合わせ、どの商品ロット・製造日から新原料を使うかを生産と品質の担当者が確認します。

予定と実際の使用開始は別に記録します。旧・新原料が並行して在庫になる場合や、同じ日に異なる原料を使う場合は、日付だけでなく原料ロットと商品ロットを対応させます。特定できない行は「切替時点未確認」とし、表示・包材の選択へ自動的に進めません。

製造予定や使用ロットが変わったら、表示案と包材の対応も再確認します。仕入先への照会が必要なら、何を確認しなければ切替を決められないかを残します。

4. 表示案を新規格書と照らし、品質の担当者が確認する

品質の担当者は、新規格書、変更通知、自社の配合表を照らし、対象商品の原材料名・アレルギー表示の見直しが必要かを確認します。変更された原料だけの記載を見て、商品全体の表示確認を終えないでください。規格書の情報だけでは判断できない点は、仕入先への照会などで確認します。

表示案には版を付け、何版の規格書・配合表と照合したか、確認者・確認日・結果を残します。表示の変更が不要と判断した場合も、その理由を記録します。差し戻しと確認済みを分け、承認後に表示案が変わったら確認をやり直します。

表示対象品目と改正を、古い一覧のままにしない

消費者庁の事業者用ハンドブック(令和8年4月版、冊子7ページ)では、次の区分を示しています。2026年10月21日に確認しました。

  • 表示が義務付けられる特定原材料9品目:えび、カシューナッツ、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)。
  • 表示が推奨される特定原材料に準ずるもの20品目:アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、ピスタチオ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン。

令和8年4月1日の事務連絡で、カシューナッツの特定原材料への追加と、ピスタチオの「準ずるもの」への追加を確認しました。同連絡はカシューナッツに2年間の経過措置があるとしつつ、可能な限り速やかな表示を求めています。

カシューナッツの経過措置は、食品表示基準の令和8年内閣府令第34号附則第2条(PDF178ページ)で確認しました。2028年3月31日までに製造・加工・輸入される加工食品(業務用を除く)と、同日までに販売される業務用加工食品の表示には、改正前の例によることができるとされています。包材の購入日や、すべての商品の販売期限を指す日付とは扱いません。

制度改正の経過措置と、自社原料の切替時点は別の確認事項です。 経過措置だけを理由に、原料変更後も旧表示の包材を使えるとは判断しません。個別商品への適用は未確認であり、担当者が現行資料と自社の条件を確認します。

5. 旧包材の在庫と切り替えを管理する

旧表示の袋・ラベル・外装などについて、コード、版、数量、保管場所、在庫の確認日を記録します。新しい表示の包材を用意しただけで完了にせず、製造現場にどちらが渡るかまで担当を決めます。

旧包材の扱いは「使用可否未確認」「使用範囲を確認済み」「使用停止」などに分け、責任者が決めた対象ロット・対応・根拠を残します。在庫が残っていることは、使い切ってよい根拠にはなりません。 修正や廃棄などの扱いも人が判断し、未確認の包材が誤って使われないよう区別します。

切替時には、実際の原料ロット・商品ロット、現物の包材コード・表示の版を照合します。確認者・日付と未解決事項を記録し、表示の確認完了と出荷の承認を混同しないでください。

対応表で確認漏れを探す:想定シナリオ

以下は、架空の会社「サンプル加工食品社」が、仕入先Aから架空の原材料「調味ベースM」の変更通知を受けた想定シナリオです。会社・商品・日付・ロット・数量・担当名はすべて架空です。実施した確認や検証の結果ではなく、表示文面や成分の例も示していません。

変更案件「C-01」の共通情報と、商品・包装ごとの行を、読みやすいよう縦向きに示します。実務の対応表では、共通情報も各行から参照できるようにします。

共通の項目 架空の記録例
変更の連絡日・仕入先・原材料 2026年10月20日・仕入先A・調味ベースM
旧規格書 M第2版、発行日9月1日、受領日9月2日
新規格書 M第3版、発行日10月19日、受領日10月20日
保存先の参照 変更案件C-01の通知・規格書の保管欄

行A:表示案が旧規格書のまま

項目 架空の記録例
影響する商品・包装 豆スープA・小袋P-A
切替のロット/製造日 新原料M-03、商品S-11、11月1日製造予定
表示案の版・照合元 A第1版、旧規格書M第2版を参照
確認者・確認日 品質担当Q・未確認
旧包材の在庫 P-A旧版200枚、資材棚A、10月20日確認という設定
未確認の点 新規格書との照合、旧包材の使用可否

新原料の切替予定があるのに、表示案の照合元は旧規格書です。品質担当Qが新規格書と配合表を照合し、表示案の見直し要否と旧包材の扱いを判断する必要があります。この行から、実際の表示に何を追加すべきかは分かりません。

行B:切替時点と確認者がない

項目 架空の記録例
影響する商品・包装 野菜ソースB・瓶ラベルP-B
切替のロット/製造日 空欄
表示案の版・照合元 B第2版、新規格書M第3版を参照
確認者・確認日 空欄・空欄
旧包材の在庫 P-B旧版、数量・保管場所・確認日とも未確認
未確認の点 使用開始ロット、品質の確認担当、旧包材の在庫と扱い

新規格書の版が書かれていても、表示の確認完了とはいえません。生産担当が原料と商品ロットの対応を確認し、品質の責任者が確認担当を決め、資材担当が旧包材を調べる必要があります。

AIは架空の対応表から、不足の候補を挙げるまで

AIを試すなら、架空の対応表だけを使い、「表示案の照合元が旧規格書のまま」「切替時点が空欄」「確認者がない」などの不足の候補と、その根拠となる欄を挙げるところまでに限ります。上の想定シナリオなら、行Aの照合元、行Bの切替時点・確認者が確認対象です。これは期待する指摘の例で、AIを実行した結果ではありません。

空欄の抽出は表計算のフィルターでも始められます。AIを使った場合も、指摘の漏れ・読み違いを人が表と照合し、空欄を推測で埋めさせません。AIに成分の推測や、アレルゲンが含まれないことの判定をさせません。表示の適合・安全性・出荷の可否は人が判断します。

取引先の規格書、実際の配合表など、非公開の資料を外部のAIサービスに入力しないでください。AIの指摘から表示案の確定、包材の使用許可、出荷指示へ自動的につなげる運用にもせず、担当者の確認と判断を記録します。

表示の切り替えとは別に、賞味期限と納品条件を確認したい場合は食品の賞味期限と取引先別の納品条件を分ける手順へ進んでください。食品の表示期限と納品条件を照合する検証ラボは、期限・取引条件の照合を試した記録で、本記事の規格変更・表示の確認とは対象が異なります。