1. 比較の基準は「最後に保存した版」より「実際に送った版」

営業・総務の担当者が最初に確かめるのは、どの2ファイルを比べるかです。自社の作業フォルダーで新しいファイルを選んでも、それが取引先に送った版とは限りません。

次を記録する方法を提案します。文書本体はアクセスを制限した保管先に置き、一覧には参照先を残します。

残す項目 確認する内容
契約の管理番号 同じ相手先の別契約と区別する番号
比較元 実際に送ったファイル名・社内の版・送付日・送付記録の参照先
比較先 今回受け取ったファイル名・社内の版・受領日・受領記録の参照先
比較する範囲 本文、別紙、添付資料の対象と不足している資料
確認担当 資料をそろえる人、取引条件を判断する責任者、回答をまとめる予定日

受領したファイルをそのまま保存し、比較作業はコピーで行います。送付版が見つからなければ「比較元未確認」として、送付記録と添付ファイルの所在を確認します。AIに旧文面を補わせたり、似た契約書で代用したりしません。

2. Wordで比較し、結果は新しい文書に出す

MicrosoftのWindows版の公式手順では、2つの文書を比較し、違いを別の文書に表示できます。Word for Microsoft 365などのWindowsデスクトップ版を対象としています。

  1. 比較用の2ファイルを開き、[校閲]から[比較]を選びます。
  2. 元の文書に自社の送付版、変更された文書に取引先の受領版を指定します。
  3. 文字・書式・コメントなどの比較対象と、文字単位・単語単位の表示設定を確認します。
  4. 比較結果を新しい文書に表示する設定を確認して実行し、比較した版と設定を記録します。

元の文書や変更された文書へ結果を出す設定では、その文書が変更されるため、出力先を確認します。既存の変更履歴があると、比較の際にその扱いを確認するメッセージが出ます。意味が分からないまま進めず、履歴付きの受領原本を残し、比較する文面を担当者が確認してください。比較上の変更確定を、相手との合意と扱わないようにします。

Mac向けの公式資料にも2版を比較する説明がありますが、取得時の適用先表示はWord 2019 for Macです。現在のMac版やWeb版で同じ画面・手順を使えるとはせず、利用中の版のヘルプを確認します。

比較後は、変更箇所の前後を人が読みます。条項が移動して番号が変わった場合は、旧条番号と新条番号の両方を残します。本文中の参照先や別紙も確認し、比較対象に入れていない資料は「変更なし」と記録しません。

3. 差分の事実と、確認したいことを別の欄にする

以下はhirostaが提案する確認表です。Wordの比較結果だけを渡すより、変更前後の原文に戻れる場所と、次の担当者を一緒に残すことを重視します。

欄 書く内容
確認番号・場所 差分ごとの番号、旧条番号と新条番号、見出し。ページ番号だけにしない
変更前と変更後 送付版と受領版の原文。省略した場合はその旨と参照先
変更の説明 「日数が変わった」「段落が削除された」など、原文から確かめられる事実
質問案 変更理由、対象範囲、運用上の意図など、相手へ確かめたいこと
社内の確認先 納品担当、経理、責任者など、実際の運用を確認する人
判断の依頼先 取引条件を決める責任者、法的な判断を依頼する専門家
状態と回答 未確認・質問準備中・回答待ち・判断待ち・対応済み。回答記録と判断した人・日付

相手のコメントは「相手の説明」として原文の差分から分けます。コメントに「表記のみ」とあっても、それだけで内容に影響がないとは決めません。回答が来たことと、社内で合意したことも別の状態にします。

4. 想定シナリオ:検収の連絡期限が変わっていた

ここからは架空の会社・条文による未実施の想定シナリオです。取引先から戻った修正版で、検収に関する文が変わっていた場面を考えます。

  • 比較元の第8条:「受領後10営業日以内に結果を通知する。」
  • 比較先の第8条:「受領後5営業日以内に結果を通知する。」

担当者が比較結果と原文を確認した後、表には次のように分けて残します。

  • 変更の事実:第8条の通知期限が「10営業日以内」から「5営業日以内」に変更された。
  • 質問案:「期限を変更する理由と、対象となる成果物の範囲を教えてください。」
  • 社内の確認:納品担当が、受領日の確認方法と、確認・通知に必要な作業を整理する。
  • 判断待ち:責任者が受け入れられる条件か判断し、解釈が必要なら専門家へ確認する。

確認表の画面では、この差分を1行にし、原文・質問・担当・状態を見られる形にします。長い条文は参照先へ分け、表の幅を広げすぎないようにします。取引先から説明が届いた後も、責任者の判断が済むまでは「判断待ち」です。

この例の2文だけでは、契約全体の効果、通知がない場合の扱い、変更の有利不利は決められません。前後の条項や別紙との関係は、原文に戻って確認します。

AIへ頼むなら、説明案と質問案だけ

入力が認められた環境・情報の範囲を先に確認します。実契約を外部AIへ丸ごと渡さず、相手の名前を消しただけで取引条件まで入力できるとは考えません。入力可否が分からなければAIを使わず、人が表を埋めます。詳しくは顧客情報とAIの利用前の確認へ進んでください。

上の例なら、次のような依頼文を準備できます。

提示した変更前後の文だけを使い、変更の説明案と、担当者が確認する質問案を分けて書いてください。変更前後の語句と条番号を残し、分からないことは未確認としてください。提示していない条項を補わず、有利不利・有効性・承諾してよいかは判断しないでください。

担当者はAIの文案を原文と読み合わせ、数字・条件・対象の抜けや、説明に混ざった推測を直します。AIが質問を挙げなかった箇所も、人の確認対象から外しません。

5. 不足があれば止め、返送する版を人が決める

次の場合は、差分の説明を完成させるより先に資料と比較条件をそろえます。

止める条件 次の行動
どれが送付版か分からない 送付記録と添付ファイルを確認し、比較元を固定する
別紙や参照される合意書がない 不足する文書と確認担当・回答予定日を記録する
PDFや画像しかなく、Wordで同じ条件の比較ができない 編集可能な版の入手を相談する。文字起こしだけで変更なしとしない
変更履歴の扱いや比較設定が分からない 利用中の版のヘルプと担当者に確認し、未比較の範囲を残す
相手の回答と修正版の本文が食い違う 該当箇所を示して確認し、回答だけで対応済みにしない

返送前には、責任者が回答と修正の対応、返送対象の版、未解決の確認事項、外部へ見せてよいコメントかを確認します。比較結果・社内の質問表・返送文書を取り違えず、自動で承諾・返送しない流れにします。

電子契約へ進む段階では、同意待ち・却下・訂正版を追う手順へ、締結後は契約期間と通知期限の管理へつなげます。

6. 費用と期間は、比較作業と判断を分けて見積もる

まず手元のWordで比較機能を利用できるか確認し、AIの追加契約を前提にしません。AIを使う場合も、利用が認められたサービス・プランと入力条件を確認します。

工数は、版の特定、Wordの比較、原文の読み合わせ、質問表の作成、社内・専門家の判断、相手の回答待ちに分けます。ページ数だけでなく、別紙の数、未解決の確認事項、修正版が戻る回数で変わるため、一律に何時間・何日とは置きません。専門家への依頼費用と、書類管理の仕組みを整える費用も分けて確認します。

この記事は公式資料に基づく操作案と、確認表の提案です。Wordでの実操作、実契約での比較、AIの見落とし率、時間や費用の削減は検証していません。書類の保管・確認・引き継ぎを整える場合は書類処理AIの業務改善ガイドと対応業務へ、支援内容と料金はサービス案内へ進めます。相談では、今の管理方法と困っている点からお聞きします。