1. 「何の排出量か」を取引先に確認する
依頼票を受け取ったら、資料を集める前に次の条件を確認します。指定のない項目は自社だけで決めず、質問として残します。
| 確認する条件 | 具体的に聞くこと |
|---|---|
| 期間 | 暦年か年度か。開始日・終了日と提出期限はいつか |
| 対象範囲 | 会社全体か、特定の工場・拠点か、納品する製品か |
| 排出の範囲 | 燃料・電気など何を含めるか。Scopeの指定があるか |
| 方法・単位 | 指定の算定方法や係数があるか。CO2か温室効果ガス全体のCO2換算量か。kgかtか |
| 回答形式 | 数値だけか、根拠資料や未算定の説明も必要か |
環境省の算定案内では、自社で燃料を使うなどの直接排出がScope1、購入した電気・熱などに伴う間接排出がScope2、それ以外の事業に関わる間接排出がScope3です。どこまで求められているかで、必要な資料が変わります。
たとえば、会社全体の年間排出量を製品の納品数で割っただけでは、取引先が求める製品単位の算定方法に合うとは限りません。対象範囲や配分方法が決まらなければ、先に取引先の窓口へ確認します。
2. 請求額と使用量を分け、元資料を残す
環境省のQ&Aでは、基本的な算定を「活動量×排出原単位」と説明しています。活動量は電気の使用量など、活動の規模を示す値です。円の請求額を、そのままkWhの使用量として扱うことはできません。
一覧には次の項目を用意します。これは資料整理の提案で、公式の提出様式ではありません。
| 項目 | 残す内容 |
|---|---|
| 管理番号・対象 | 自社で付けた番号、拠点、電気・燃料などの種類 |
| 元資料 | 請求書・使用量明細の保存先とページ、差し替えの有無 |
| 対象期間 | 資料の使用開始日・終了日。請求日とは別に記録 |
| 元の値・単位 | 原文の使用量と単位。読み取れない場合は未確認 |
| 計算に使う値 | 確認後の使用量・単位、換算した場合の式 |
| 係数の根拠 | 資料名・URL・版・表や項目・ページ、値と単位。算定対象年度・活動地域・設備や工程と、係数の対象時期・地域・技術を照合した根拠と適用理由。対応が不明なら不明点・確認先 |
| 計算結果・確認 | 計算式、出力単位、確認者・確認日・状態 |
元の値は上書きせず、換算後の値と分けます。 係数欄が空なら結果も未算定とし、空欄を0に置き換えません。単位換算や掛け算は、担当者が確認した条件で表計算などに行わせます。
環境省の掲載案内では、2026年11月5日時点の最新版としてVer.3.6が案内されています。解説の3ページ・表2と脚注1は、出典をたどれる信頼性と、時間・対象地域・技術の代表性を要件に挙げています。時期は単に公開版が新しいかではなく、算定対象年度や排出が生じる年度との関係を考慮する説明です。
この要件を担当者が確認できるよう、hirostaでは次の対照を残す方法を提案します。公式の提出様式や、個別係数の採用を決める基準ではありません。
| 対照するもの | 確認に使う資料と残す内容 |
|---|---|
| 算定対象年度と係数の対象時期 | 依頼票・使用量明細の対象期間と、係数の解説にあるデータの対象年・期間を並べる。資料の公開・更新時期とは分けて記録する |
| 活動地域と係数の対象地域 | 拠点・活動場所が分かる資料と、係数の解説にある対象国・地域を並べ、対応する範囲と不明な範囲を残す |
| 設備・工程と係数が想定する技術 | 設備仕様書・工程説明と、係数の解説にある製造方法・処理方法などを並べ、共通点と相違点を残す |
対照には資料名と該当ページも添えます。表2には地域の係数がない場合の他地域による代用の説明もありますが、それだけで個別の代用可否は確定できません。対象活動・単位・取引先の指定も含め、採用・代用の判断は算定責任者が行います。
3. 想定シナリオ:本社と工場の資料を総務が集める
以下は未実施の想定シナリオです。部品メーカーが、本社と工場の年間の電気・燃料に関する回答を求められた場面を考えます。
最初は計算せず、確認待ちの一覧を作る
総務は依頼票の条件を記録し、経理から請求書、工場から使用量の明細を集めます。次のように「何を見て、何が足りないか」を先に整理します。
| 対象 | 見つかった資料と問題 | 状態・次の確認 |
|---|---|---|
| 本社の電気 | 請求書はあるが一部は金額だけ | 使用量明細を経理へ確認。金額から使用量を推定しない |
| 工場の電気 | 同じ使用期間の請求書が通常版と訂正版で届いた | 経理が有効な版を確定。両方を合計しない |
| 工場の燃料 | 納品量の記録はあるが、期間中の使用量か不明 | 工場担当が在庫と記録を確認。購入量を無断で使用量にしない |
| 年度の境目 | 請求対象期間が依頼された年度をまたぐ | 分ける方法を担当者へ確認。日割りで勝手に埋めない |
原本は社内の権限付きの場所に保存し、一覧から参照します。AIを使う場合は、入力してよい情報の確認手順に沿って、契約番号や口座情報など不要な項目を除いた、社内で利用が認められた資料だけを使います。
AIには読み取りと質問の下書きまで任せる
依頼には、次のように書きます。
資料ごとに、管理番号、拠点、対象期間、使用量、単位、元資料のページを表にしてください。書かれていない値は「未確認」とし、推定・単位換算・排出量計算はしないでください。同じ対象と期間の資料は削除せず、重複の可能性を示してください。人に確認する質問を別欄に残してください。
総務は出力を原本と見比べ、使用量の桁、期間、単位を確認します。係数や配分方法が未決なら計算へ進めず、責任者へ質問を渡します。AIに「適切な係数で埋めて」と一括依頼しないことが、この工程の境界です。
資料がそろい、人が係数と式を確定した後で計算します。責任者は、含めた範囲・不足・算定方法を確認し、回答と必要な添付だけを承認します。提出した回答、根拠の一覧、採用した資料の版をひとまとまりに残します。
4. 提出前は「同じ条件の数字か」を確かめる
次の項目が未確認なら、回答を確定せず担当者へ戻します。
- 依頼票の期間・拠点・排出の範囲と、集めた資料が一致しているか
- 訂正版や再送分を二重に計上していないか。不足を0としていないか
- 使用量と係数の単位が対応し、結果のkgとtを取り違えていないか
- 係数の出所・版・適用理由と、換算・配分の方法を説明できるか
- 算定対象年度と係数の対象時期、活動地域と係数の対象地域、設備・工程と係数が想定する技術を、根拠資料の該当箇所で照合できるか
- 提出先が認める算定方法か。未算定の項目を明示しているか
- 承認された回答と添付になっているか。不要な契約・口座情報が残っていないか
時期・地域・技術の対応が不明なら、該当する管理番号、照合した両方の資料とページ、不足・相違点、確認したい質問、確認先を確認待ちの一覧に残し、算定責任者へ渡します。設備や工程は現場担当、係数の対象範囲は資料の提供元、提出条件は取引先の窓口など、質問ごとに確認先を分けます。記載がない項目を「一致」とせず、採用理由が確認できるまで、その係数による計算と回答の確定を保留します。
環境省のQ&Aは、年度間の排出量の差には事業の変化や係数の変更なども含まれると説明しています。前年より数値が小さいだけで、省エネ施策の成果とは言い切れません。比較する場合も、範囲・活動量・係数の変更を分けて残します。
5. 費用と期間は、資料の状態から見積もる
最初は対象を一つの拠点・一つの資料種類に絞り、既存の表計算で一覧を作るところから始めます。準備にかかる時間は、欠けた明細の取り寄せ、年度をまたぐ資料の扱い、係数・配分方法の確認で変わります。資料がそろう前に、完了日を決め打ちしないようにします。
継続して資料が届き、転記や確認状況の共有が負担になるなら、読み取り・一覧化・確認待ちの管理を自動化する余地があります。見積りでは、資料整理の仕組みを作る費用と、排出量の算定方法を専門家に確認する費用を分けて考えます。
書類処理の工程は書類AI活用ガイドと書類の読み取り・転記の支援内容で紹介しています。サンプル電機の書類照合デモは架空の書類を確認する例で、排出量を算定した事例ではありません。支援範囲はサービス・料金で確認でき、資料集めや転記の困りごとはお問い合わせから相談できます。