1. 研修案内から分かることと、この記事で提案すること
中小機構の支援機関向け研修案内には、応募が集まらないことや、自社の魅力の伝え方に迷う相談を背景に、魅力の整理と生成AIによる求人文の改善・比較を学ぶ内容が掲載されています。案内上の日程は2026年7月1日・8日で、2026年10月16日の確認時点では受付終了です。
これは相談の背景とカリキュラムの説明であり、相談件数の統計や、受講企業の採用成果ではありません。この研修で以下の表や手順が使われたとも扱いません。
ここからは、求人文の書き直しに使う材料をどう用意し、案をどう確かめるかについてのhirostaの提案です。AIに魅力を考えさせる前に、現場で確かめた事実を揃えます。
2. 事実の表に、仕事・流れ・条件・職場の様子を集める
既存の求人票だけでなく、現場の担当者への聞き取りと、会社が承認した最新の労働条件を照合します。古い求人票に書かれた内容が、今も同じとは限りません。
表には「内容」「確認元・確認日」「確認する担当」を置きます。未決定・未確認の欄をAIに埋めさせず、人への確認事項として残してください。AIに渡す情報の可否は、入力前の確認事項で整理します。
想定シナリオ:架空の卸売会社の受注事務
以下は架空の「あおば商材社」で、受注事務の仕事内容を書き直す未実施の想定シナリオです。表の内容も架空で、実際の求人票の完成例ではありません。
| 事実として用意する項目 | この想定例での材料 | 確認元・担当の例 |
|---|---|---|
| 仕事内容と範囲 | 注文内容の入力、在庫の確認、出荷担当への連絡。価格の変更は営業担当へ引き継ぐ | 業務手順と受注担当への聞き取り |
| 1日の流れ | 出社後に注文を確認し、入力・在庫確認・出荷連絡を行う。退勤前に未処理の注文を引き継ぐ | 現場の作業記録と担当者の確認 |
| 労働条件 | 賃金・労働時間・休日・就業場所などは、承認済みの条件表から転記する。未確認の条件は求人文にしない | 最新の募集条件を管理する総務 |
| 職場の様子 | 受注担当と出荷担当が、未処理の注文の状況を共有している | 現場責任者への聞き取り |
| 困る場面と相談先 | 在庫が足りないときは、自分で納期を約束せず営業担当へ相談する | 受注・営業の担当者 |
実務では確認日と資料の版も記録します。「簡単な事務」だけでは、担当する作業も判断の範囲も伝わりません。任せる作業と引き継ぐ作業を分けて書きます。詳しい聞き取りの進め方は、業務マニュアルの材料を集める手順をご覧ください。
労働条件は、読みやすくするために変えない
厚生労働省の解説は、求人申込み時の業務内容・賃金・労働時間などの明示と、虚偽や誤解を生じさせる表示の禁止、情報を正確かつ最新に保つことを説明しています。
また、募集時等の明示事項の案内では、2024年4月1日から、業務と就業場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準も明示対象に加わっています。
AIには条件の決定を任せず、会社が確認した文面を維持させる方針を提案します。仕事内容の説明を短くした結果、変更範囲などの条件が落ちていないかも確かめます。この表は法定事項の一覧ではありません。求人票全体の明示事項や自社への適用に迷う場合は、ハローワークや社会保険労務士などに確認してください。
3. 魅力の表には、言いたいことと根拠を並べる
「働きやすい」「成長できる」といった評価だけを渡すと、何を根拠に言えるのかが曖昧です。事実の表とは別に、具体的な出来事・制度と、その対象や制限を整理します。
次も、あおば商材社の想定シナリオです。
| 伝えたい魅力 | 根拠として確かめる出来事・制度 | 言い過ぎを防ぐ境界 |
|---|---|---|
| 入社後に仕事を覚える支援がある | 受注入力の手順書があり、初めは先輩が入力内容を一緒に確認する運用 | 研修期間や独り立ちまでの速さは約束しない |
| 困ったときの相談先が分かる | 欠品時は営業担当へ相談する手順が決まっている | 「いつでも誰かが必ず対応する」とは書かない |
| 業務の改善を相談できる | 受注手順について担当者が改善案を出し、手順書を見直した出来事がある | 提案が必ず採用される制度にはしない |
実際には、手順書や制度の現行版、出来事を確認した担当者、対象の部署・雇用形態も添えます。単発の出来事は出来事として書き、全員に適用する制度や将来の保証へ置き換えません。実施を検討中の支援は、既に利用できる魅力として書かないようにします。
4. 同じ材料で案を作り、1行ずつ照合する
最初に直す欄を「仕事内容と魅力」に限定し、複数の案へ同じ材料を渡します。次は頼み方の例で、AIへ送信して確かめたものではありません。
次の事実の表と魅力の表だけを使って、求人票の仕事内容と魅力の説明を書き直してください。A案は仕事の流れを先に、B案は入社後の支援を先に書いてください。労働条件は変更・省略せず、表にない制度・約束・数値・募集条件は追加しないでください。各文に対応する表の行と、確認が必要な点を別に示してください。不明な点は推測で埋めず「要確認」としてください。
AIが根拠の行を示しても、人が本文を読むまでは照合済みにしません。各文を事実の表と1行ずつ比べ、魅力を述べる文は魅力の根拠も確認します。複数の主張がある文は、主張ごとに分けて確かめます。
想定シナリオ:足された約束を取り除く
以下の文例は説明用に作ったもので、実際のAI出力ではありません。
| 確認する案の文 | 表との食い違い | 修正の例 |
|---|---|---|
| 未経験でもすぐに独り立ちできます | 手順書と先輩の確認はあるが、習得の速さの根拠はない | 手順書に沿って受注入力を覚え、初めは先輩が入力内容を一緒に確認します |
| 受注から価格の変更までお任せします | 価格変更は営業担当へ引き継ぐ事実と違う | 注文内容の入力、在庫確認、出荷担当への連絡を担当します。価格変更は営業担当へ引き継ぎます |
| 改善の提案は必ず採用されます | 手順書を見直した出来事を将来の保証に変えている | 担当者の改善案をもとに、受注手順書を見直したことがあります |
表に根拠がない主張は外すか保留し、事実を確認できた場合だけ表も更新します。「転勤なし」「残業なし」などの条件が追加されたら、魅力的な言い換えとして採用せず、会社が承認した条件と照合してください。
性別や年齢の限定など、材料にない募集条件の追加も止めます。厚生労働省の解説では、年齢制限には例外事由があり、性別による差別的取扱いは原則禁止と説明されています。AIの文面から例外の適用を判断せず、迷う条件はハローワークなどに確認します。ここで確かめるのは求人文の条件であり、人物の評価ではありません。
法令の根拠をさらに照合する方法は社内規程のAI下書きの根拠確認へ、Web公開時のタイトルや説明文の確認は本文とメタ情報を照合する手順へ分けて案内します。
5. 正確さを確認した案を、同じ観点で人が選ぶ
事実と違う案を、読みやすさの点数で相殺しないようにします。まず条件変更・根拠のない約束・誇張を直し、未確認の主張を残した案は候補から外します。そのうえで、同じ観点を並べて比較します。
| 比較する観点 | A案・B案に共通して確かめること |
|---|---|
| 仕事を具体的に想像できるか | 担当作業、1日の流れ、相談・引き継ぎの範囲が読めるか |
| 魅力に根拠があるか | 抽象的な評価だけでなく、出来事や制度と対象条件が伝わるか |
| 誤解のない表現か | 例外や条件を落とさず、実態より強い約束になっていないか |
| 読みやすいか | 社内用語に短い説明があり、同じことを繰り返していないか |
あおば商材社の想定例で、同じ事実から書く順序を変えた短い文例を並べます。労働条件の欄は別に維持し、ここでは仕事内容と支援の説明だけを比べます。実際のAI出力ではありません。
A案:仕事の流れから伝える
注文内容の入力、在庫確認、出荷担当への連絡を担当します。価格の変更は営業担当へ引き継ぎます。受注入力は手順書に沿って覚え、初めは先輩が入力内容を一緒に確認します。
B案:入社後の支援から伝える
受注入力は手順書に沿って覚え、初めは先輩が入力内容を一緒に確認します。担当するのは注文内容の入力、在庫確認、出荷担当への連絡です。価格の変更は営業担当へ引き継ぎます。
上の観点で比べ、「受注事務の担当範囲を先に伝えたいのでA案を選ぶ」のように理由を残せます。これは選び方の提案であり、どちらが応募につながるかを検証した結果ではありません。
最後に現場担当者が仕事の説明を、総務など条件の管理担当者が労働条件を確認し、公開を決める人が採用する文面を確定します。材料の版、確認日・確認者、直した箇所、選んだ案と理由を残し、仕事内容や制度・条件が変わったときは、表と求人文を一緒に見直してください。