1. 職務の要件を先に書き出す

最初に人が、担当する仕事と、その仕事に必要な経験・能力を整理します。「どんな人がよさそうか」から質問を作るのではなく、どの仕事の何を確かめるのかを出発点にします。

想定シナリオ:架空の卸売会社「みどり商材社」が受注事務の面接を準備する場合を考えます。担当業務は注文内容の入力、在庫の確認、出荷担当への連絡です。注文内容に不足があれば確認し、自分で判断できない案件は担当者へ引き継ぐ仕事と設定します。実在の会社の採用条件や応募者の情報ではありません。

この仕事なら、確認したい能力を「不足情報を見つける」「入力内容を照合する」「判断できない点を整理して引き継ぐ」に分けられます。仕事の説明にない要件をAIが足したら、人が必要性を確認するまで質問の根拠にしません。

求人文の材料も整理したい場合は、求人票の仕事内容・魅力をAIで書き直す前の準備を参照してください。この記事は求人文の表現比較から先へ進み、面接で使う質問の設計に絞ります。

2. 確かめたい能力ごとに質問案を対応させる

AIには、応募者に関する資料ではなく、社内で入力を認めた職務の要件だけを渡します。機密を含む業務情報の入力可否は、AIへ情報を入力する前の確認で別に確かめます。

たとえば「不足情報を見つける能力」には、「注文書に数量の記載がない場合、入力前に何を確認しますか」という質問案を対応させます。これは想定業務での確認の進め方を尋ねるための案で、特定の応募者の評価例ではありません。

以下は依頼文の例です。実際にAIへ送信して確かめたものではありません。

次の職務の要件だけを使い、面接の質問案と対応表の下書きを作ってください。列は「職務の要件・確かめたい能力・質問・確認上の懸念・採用/修正/除外・理由・確認した人」です。各質問と能力・職務の対応を示し、懸念は確認すべき候補として挙げてください。要件にない能力や個人情報を追加しないでください。人物の評価・点数付け・順位付け・採否の判断は行わないでください。採用/修正/除外・理由・確認した人は、人が確認して記入するため空欄にしてください。

応募者の情報はAIへ渡しません。 履歴書・職務経歴書・面接の回答やメモを使わず、人物の評価を依頼しないでください。質問案の下書き、表の整理、懸念の候補の洗い出しまでが、ここで提案するAIの役割です。

3. 職務との関係と、聞くべきでない事項を確かめる

厚生労働省の「公正な採用選考の基本」は、職務に必要な適性・能力を確かめる観点で、面接の質問項目や評価基準を事前に決めるよう説明しています。また、採用基準に使わないつもりでも、適性・能力と関係のない事項を把握すると、採否に影響し就職差別につながるおそれがあるとしています(2026年10月20日確認)。

人が質問を1つずつ読み、次の順で確認します。

  1. 職務との関係:この質問で何の能力を確かめ、その能力をどの仕事に使うのかを、要件に戻って説明できるか。
  2. 把握する情報:答えてもらう過程で、職務に必要な適性・能力と関係のない事項を集めることにならないか。公式資料の「採用選考時に配慮すべき事項」と照合する。

公式資料が挙げる事項には、本籍・出生地、家族の職業など、住宅状況、宗教、支持政党、尊敬する人物、購読新聞・雑誌・愛読書などがあります。これは同資料から取り上げた例で、確認すべき事項の全体ではありません。質問の言い回しだけを見ず、回答として何を把握することになるかを確かめてください。

職務に関係する案は、たとえば上の想定業務で不足情報の確認方法を尋ねる質問です。一方、家族の職業を尋ねる案は、本人が受注事務を進める能力を確かめる質問にはなりません。家族に関する事項は公式資料にも挙げられており、言い回しを和らげるだけで残さず除きます。

厚生労働省の「よくある質問」は、AIを活用する選考にも公正な採用選考の基本が求められることを明記しています。家族・住宅状況についての説明では、緊張をほぐすための会話にも就職差別につながるおそれのある事項が含まれるとしています(2026年10月20日確認)。雑談用の質問や、その場で付け足す質問も同じ観点で確認します。

4. 対応表で採用・修正・除外を決める

職務との関係を説明できない質問や、不適切な情報の収集につながる質問は使いません。必要な能力を確かめたいのに質問が曖昧な場合は、職務上の具体的な場面に修正し、修正後の質問にも第3節の確認を行います。

次は、みどり商材社の想定シナリオにおける記入例です。質問案は説明用に作ったもので、実際のAI出力でも面接の実施記録でもありません。「採用」は質問案を使う判断で、応募者の採用を意味しません。表は横にスクロールして確認できます。

職務の要件 確かめたい能力 質問 確認上の懸念 採用/修正/除外 理由 確認した人
注文の不足情報を確認する 不足情報を見つける 注文書に数量の記載がない場合、入力前に何を確認しますか 職務の想定場面に限って聞けるか 採用 不足情報の確認手順を尋ねる質問で、例示した文面に家族などの事項を求める内容はない 採用担当A(架空)
入力内容を照合する 照合の手順を組み立てる 修正前:事務は得意ですか。修正後:注文書と入力内容を照合するとき、何をどの順に確認しますか 得意かどうかだけでは、仕事の進め方が分からない 修正 自己申告だけを求める案から、担当業務の照合手順を尋ねる案へ変更し、関係のない事項を求めない文面にした 現場担当B(架空)
対応する要件なし 対応する能力なし 家族の職業を尋ねる案 公式資料の家族に関する事項に当たる 除外 本人の職務遂行能力との関係を説明できず、聞くべきでない情報の収集につながる 採用担当A(架空)

AIが懸念を挙げなかった質問も、人がすべて確認します。対応表が埋まっているだけでは、公正な質問だと確認したことにはなりません。

5. 人が理由を残してから使う

面接前に、現場担当者が仕事と能力の対応を、採用担当者が公式資料との照合と質問の文面を確かめ、責任者が使う質問案を決める流れを提案します。兼務の場合も、どの観点を誰が確認したかを残してください。

対応表には元の案・修正後の文面・採用/修正/除外の理由・確認した人を残し、あわせて確認日、職務要件の版、参照した公式ページ名と確認日を記録します。応募者の回答や人物の評価を記入する表とは分け、確認済みの質問と職務上の評価基準を面接担当者の間で事前に揃えます。AIに評価基準を使わせて人物を点数付けさせる手順ではありません。

職務との関係や、公正採用の観点での扱いを判断できない質問は、確認が終わるまで使いません。法的な判断が必要な場合は、ハローワーク・労働局などの公式の窓口や専門家に確かめてください。この記事の対応表やAIの説明だけで、個別の質問の適法性を判断しないようにします。