売上予算と資金繰り表は、見る時期と対象が違う

売上が増える予定でも、同じ月に使える現金が増えるとは限りません。 売上予算は売上の計画であり、費用を組み合わせて損益を見通します。一方、資金繰り表では、売上代金が実際に入る日と、支払いで現金が出る日をもとに予定を立てます。ここでいう現金の出入りには、預金口座の入出金も含みます。

比べる点 売上予算・損益の計画 資金繰り表
基準にする時期 売上・費用が発生する時期 入金・出金の時期
掛け売り 売上が立つ月に計画する 売掛金を回収する月に入金を置く
仕入・経費 費用になる時期を確認する 支払サイトに沿って出金を置く
借入金 借入金の受取は売上ではなく、元金返済は費用ではない 借入金の入金も元金返済の出金も含める
確かめること 売上や利益の見込み 手元の資金がいつ、何によって増減するか

賞与や税金も、損益上の扱いと実際の支払時期を分けて確認します。個別の計上時期・税額は、担当者や税理士に確かめてください。

たとえば、12月に売上が立っても、契約上の回収が翌年1月なら、資金繰り表の入金は1月です。その前に12月の給与や賞与を支払う予定があれば、売上予算を見るだけでは支払日までの残高を把握できません。

公庫の様式から分かる、残高をつなぐ考え方

日本政策金融公庫の資金繰り表の記入例には、売上高とは別に、現金売上・売掛金回収などの収入と、仕入・人件費などの支出があります。さらに、設備購入などの経常外収支、借入・返済などの財務収支を分け、前月繰越金から翌月繰越金につなぐ構成です。

記入例は、回収・支払の予定を月次で記入し、その算出根拠も残す考え方を示しています。売上予算をそのまま入金欄へ写すのではなく、回収時期に置き直すことが必要です。 公庫の様式を使う場合は、ダウンロードページにある現行の様式と記入例を参照してください。

以下は、この考え方を踏まえて年末の予定を整理するためのhirostaの提案です。公庫が指定する年末専用の手順ではありません。

手順1:年末から年明けの入出金予定を並べる

まず11月・12月・翌年1月など、年をまたぐ期間を決めます。年明けに回収する売掛金や支払いがあれば、その月まで含めます。請求書、売掛・買掛の一覧、給与・賞与の支払予定、納付書、返済予定表などを確認し、取引ごとに次の情報をそろえます。

  • 入金か出金か、内容、金額、入出金予定日
  • 根拠となる書類や一覧の参照先
  • 確定した予定か見込みか、未確認の点と確認する担当者

入金側は、売掛金の回収日と現金売上の予定を分けます。未回収の請求分と、今後の売上見込みから計算した回収分に、同じ取引を二重に入れないようにします。

出金側は、仕入・外注費、給与、賞与、社会保険料、税金、借入の返済を確認します。家賃や設備代など、ほかに支払いがある場合も加えます。返済の元金と利息は返済予定表で確かめ、別の経費欄との重複を避けます。

年末年始の休業などで入出金日が動くかは、取引先との取り決めや金融機関の案内で確認します。日付が分からないものを一律に月末へ置かず、「予定日未確認」として確認先を残してください。税金・社会保険料の金額や納付日は各社の資料で確認し、この記事から一律の日付や金額を当てはめません。

手順2:前月繰越から月末残高を出す

集計対象の現金・預金を決め、開始時点の残高を帳簿や口座残高と照合します。対象に含めた自社口座同士の振替を、新たな収入・支出として二重に数えないようにします。

月ごとの計算は、前月繰越 + その月の入金合計 − その月の出金合計 = 月末残高です。その月末残高を、翌月の前月繰越にします。ここでの合計は、営業上の入出金だけでなく、設備代や借入・返済など、対象期間の入出金も含みます。

想定シナリオ:12月の売上代金を1月に回収する会社

以下は架空の卸売会社・取引による説明用の数値で、単位は万円です。12月の出金には賞与が含まれ、12月に売上が立つ掛け取引の代金の一部は1月に回収する想定です。公庫の記入例の数値を転載したものではありません。

項目(万円) 11月 12月 翌年1月
前月繰越 150 170 60
入金合計 200 180 260
出金合計 180 290 210
月末残高 170 60 110

12月は「170 + 180 − 290 = 60」です。この例から読めるのは、12月末の残高が前月末より下がることです。60万円あれば十分か、借入が必要かは、この表だけでは決められません。 月内の支払日や入金の確かさ、会社ごとの必要資金を別に確認します。

手順3:残高が下がる月と、その前の支払日を確かめる

月末残高が下がる月を見つけたら、原因を元の予定へ戻って確かめます。「回収が翌月になる」「賞与と仕入代の支払いが重なる」「税金や返済がある」など、どの入出金によるものかを整理します。

月末に残高があっても、月の途中で支払いが先行することがあります。気になる月は週ごと、必要なら日ごとに並べ直し、入金前の支払日に残高がどうなるかを確認します。回収が遅れた場合の予定は、通常の予定と区別して担当者が見直します。

予定の抜けや日付の不明点は担当者へ、税額・会計処理は税理士へ、借入の要否・金額・条件は経営者と金融機関へ確認します。未確定の借入や補助金を、確定済みの入金として扱わないようにしてください。

AIは下書きと予定日の抜けの整理を補助する

hirostaの提案では、AIの利用は、請求・支払予定の一覧を資金繰り表の下書きに並べ替える、予定日や根拠が空欄の項目を一覧にする、といった補助に限ります。実際の利用前に社内の情報管理ルールと利用サービスの条件を確認し、取引先名・口座情報などを必要以上に渡さないようにします。

AIへの依頼では「日付や金額を推測で埋めず、元の行と確認待ちの理由を残す」と指定します。人が元資料と照合してから採用し、合計や繰越は表計算の決めた式で計算します。資金の不足の判断、借入の要否・金額をAIに確定させません。 この記事では、AIによる資金繰り表の作成や実運用の検証は行っていません。

経理全体のAIと人の分担は経理をAIで効率化する方法、集計手段は表計算の集計自動化の選び方へ整理しています。完成したグラフの数値を確かめる工程は月次グラフ照合の検証ラボをご覧ください。この記事では、グラフや自動化を作る前の、入出金予定と残高の整理に絞っています。