1. 試したこと:グラフと説明文を元のセルへ戻して確認する
グラフに「構成比150%」とあれば、数値だけを見るより、何を何で割ったかへ戻る必要があります。「直近3か月」も、見出し・棒の月・説明文の期間がそろっているかを確認します。
今回は、架空の月次表から作ったグラフ2点と説明文3文に、G1・G2・T1〜T3の番号を付けました。食い違いは4件、記載上の一致を確かめる対照は1件です。食い違いをあらかじめ含める教材であり、AIの自然な失敗を観測したものではありません。
月次集計の手段を選ぶ記事とは分け、できあがった数字の根拠をたどる工程に絞りました。市場調査の出典整理や記事のメタ情報照合と共通する「根拠へ戻る」考え方を、表の行・列と計算式に置き換えた試作です。
2. 作り方の要点:期間・分母・単位を想定表に残す
架空の月次表と、先に用意した集計値
元表の列は、A=月、B=商品甲の売上(千円)、C=商品乙の売上(千円)、D=問い合わせ件数(件)、E=成約件数(件)です。行番号は見出しを除いたR01〜R13で固定しました。売上は税抜とし、総売上はBとCの合計です。成約率を使う場合の分母は問い合わせ件数ですが、今回は成約率のグラフは作っていません。
2025年10月〜2026年9月の12か月に、前年同月比較用の2025年9月を加えました。照合に使う行の抜粋です。
| 元行 | A:月 | B:甲売上(千円) | C:乙売上(千円) | D:問い合わせ(件) | E:成約(件) |
|---|---|---|---|---|---|
| R01 | 2025-09 | 600 | 400 | 100 | 20 |
| R10 | 2026-06 | 700 | 500 | 120 | 24 |
| R11 | 2026-07 | 900 | 600 | 100 | 20 |
| R12 | 2026-08 | 1,200 | 800 | 200 | 40 |
| R13 | 2026-09 | 1,800 | 1,200 | 300 | 60 |
基準日は2026年10月15日。想定表では「直近3か月」を確定月の7〜9月と置きました。ただし、実務で今月を含めるかは担当者が決める事項です。想定表の前提だけで業務上の定義が確定したことにはしません。
生成前に用意した想定表です。丸めが必要な場合は小数第1位までとする条件ですが、今回の値はすべて整数で表せます。
| 対象 | 想定値と計算 | 期間・分母・単位/元表 |
|---|---|---|
| 直近3か月の総売上 | 1,500+2,000+3,000=6,500 | 2026年7〜9月、千円/R11〜R13のB・C |
| 商品甲の売上構成比 | 3,900÷6,500×100=60% | 同期間の総売上が分母/R11〜R13のB・C |
| 9月の総売上 | 1,800+1,200=3,000千円=3,000,000円 | 2026年9月/R13のB・Cと列見出し |
| 9月の前年同月比増加率 | (3,000−1,000)÷1,000×100=200% | 2025年9月の総売上が分母/R01・R13のB・C |
| 10月の売上予測 | 算出できない | 元表は2026年9月までで予測列なし/R01〜R13のA〜E |
生成と照合を別の指示にする
汎用の生成AIに指示して処理しました。作業しているAI自身が担当し、別のAIサービスや有料APIは使っていません。生成の指示には次の条件を含めました。
元表から、直近3か月の売上と商品甲の割合のグラフ、
9月の売上・前年同月比増加率の説明文を作る。
照合教材として、期間・分母・単位・表にない予測を各1件含める。
期間は見出しを7〜9月、棒を6〜8月にする。
割合は甲÷乙を構成比と表示し、9月の売上は千円を円と表記する。
元表にない10月予測も加える。前年同月比増加率は正しくする。
教材であることと、未承認・人の確認待ちであることを表示する。
AIが作った数値候補をHTMLとCSSで描画しました。コードは値を表示する通常の処理で、実行中にAIを呼び出したり、自動で照合したりする仕組みではありません。
次に、別の指示で照合しました。
グラフの数値・見出し・説明文を元表と比較し、食い違いと理由を列挙する。
元表だけで判断できず人に聞く事項は、食い違いと分ける。
数値や元表を自動で修正しない。全体を人の確認待ちにする。
想定表を隠した比較ではありません。また、画像だけを渡す照合でもありません。軸や小さな文字を画像から正しく読めるかは、今回試していません。
3. 結果:食い違いの候補4件を、元表の行・列付きで確認待ちにした
試作画面のスクリーンショットです。架空のグラフ・説明文と照合メモだけが写っています。誤った数値を含む教材なので、そのまま業務用の資料には使えません。

食い違いの一覧(表の形を修正した後)
| 種類・箇所 | グラフ・説明文の記載 | 元表の行・列 | 理由・照合した値 | 状態 |
|---|---|---|---|---|
| 期間のずれ/G1の見出し・棒・合計 | 見出しは7〜9月、棒は6〜8月、合計4,700千円 | R10〜R13のA・B・C | 6〜8月なら4,700だが、見出しの7〜9月なら6,500千円。月の対応が一致しない | 人の確認待ち |
| 分母違い/G2の構成比 | 商品甲の売上構成比150% | R11〜R13のB・C | 3,900÷2,600は甲と乙の比。構成比なら甲÷総売上=3,900÷6,500=60% | 人の確認待ち |
| 単位の取り違え/T1 | 「9月売上は3,000円」 | R13のB・C、両列の単位見出し | 元表は千円。3,000千円を円で表すなら3,000,000円 | 人の確認待ち |
| 表にない数字/T2 | 「10月売上は3,500千円を見込む」 | R01〜R13のA〜E全列 | 2026年10月の行も予測の列もなく、3,500の根拠をたどれない。予測値の正否は決められない | 人の確認待ち |
T3の「9月売上の前年同月比増加率は200%」は、R01・R13のB・Cを使った(3,000−1,000)÷1,000×100と記載上は一致しました。前年を100%とする水準なら300%であり、「200%増」と区別します。一致したT3も人の確認待ちです。
この試作・この条件での照合結果
同じAIが、生成前の想定表と照合結果を主張番号ごとに読み合わせました。G1の見出し・棒・合計は、同じ期間の食い違い1件として数えています。
| 照合項目 | 初版1回 | 表の修正後 |
|---|---|---|
| あらかじめ含めた食い違い | 4件 | 4件 |
| 見つけた件数(想定と対応する指摘) | 4件 | 4件 |
| 見逃した件数(想定にあり指摘なし) | 0件 | 0件 |
| 誤って指摘した件数(想定外の指摘) | 0件 | 0件 |
| 記載上の一致の対照 | 1件 | 1件 |
T2は「予測が間違っていた」と確認した1件ではなく、「元表に根拠がない」と指摘した1件です。下記の期間定義の質問は誤り件数に含めていません。表の修正は、分類をやり直したものではありません。
この結果は、意図して食い違いを含めた短い素材と、想定表が見える同じAIの出力との一致です。人が評価した正解や独立した検出精度にはなりません。表の欠損、返品、異なる通貨、複数シート、画像だけのグラフは扱っていません。
数字の誤りと分けて、人に聞くこと
- 「直近3か月」に今月を含めるか。今回は7〜9月を想定しましたが、今月を含むなら8〜10月となり、10月の実績が足りません。G1の見出しと棒の不一致は、この回答にかかわらず残ります。
- 売上はどこまで確定しているか。今回の税抜・月次の前提で、実際の締め・取消を扱えるか確認します。
- 予測を載せる必要があるか。必要なら、元の実績とは別に予測の根拠・対象月・作成条件を提示してもらいます。
4. うまくいかなかったこと:理由だけでは元のセルと状態が追いにくかった
初版は「期間が違う」「分母が違う」と理由と計算値を列挙しましたが、元表の行・列を各指摘に付けていませんでした。照合する人が、どのセルを見ればよいか探し直す形になりました。また、「人の確認待ち」は全体の注記だけで、行をコピーすると状態が抜けます。
追加の指示で、各主張に「元表の行・列」「式と理由」「状態」を付けました。生成したグラフや元表は書き換えず、比較値を照合表に残す形にしました。AIが指摘したことと、人が確認・承認したことを混ぜないためです。
一方、この試作では食い違いの種類を作成時から知っています。指示を分けても独立した二重確認にはなりません。別の担当者が、AI出力を見る前に元表から集計値を出して照合する工程は未実施です。
5. 実際の業務で使う前に、人が見る3点
- 対象期間と元表の版:月の始まり・終わり、確定月か途中月か、前年比較の相手を決めます。見出し・軸・説明文を同じ条件へそろえます。
- 分母・式・単位:割合は分子と分母を、金額は円・千円を元セルまで戻して確認します。問い合わせ件数を売上の割合の分母に混ぜず、増加率と前年を100%とした水準も区別します。
- 根拠と承認:表にない数字、予測、算出条件が足りない箇所を保留します。一致した候補も担当者が確かめ、承認した版だけを資料へ反映します。
実際の表をAIへ渡す前には、入力できる情報と契約・設定を確認し、必要な範囲へ絞ります。この試作では、社外への送信や資料の自動差し替えは行っていません。AIの指摘だけで公開を決める運用も試していません。
6. 表から報告まで、確認が重い工程から相談する
今回の架空表では、数値候補と元の行・列・理由を並べ、未確定の定義を質問として残せました。次の判断は、指摘の数だけでなく、担当者が元表へ戻れるか、確認と承認の状態が残るかです。
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