1. 試したこと:値がそろっても、引き渡す根拠はそろうか

図面から見積情報を拾う手順では、版・場所・原文・単位・注記を残し、不明な項目を保留にする方法を提案しています。今回はその条件を、文字だけの架空資料に当てはめました。既存記事が紹介する他社の共同発表を、この試作の結果として扱ってはいません。

問いは、数量が同じでも、参照した版・区画・注記が違えば、見積担当へ渡す前に確認を戻せるかです。最初は値中心の一覧(A)、次に根拠の参照関係を残す一覧(B)を作りました。AIには数量の確定・合計、価格、設計の適否、実際の引き渡し可否を判断させず、人が判断する材料の整理だけを指示しました。

請求書のラボは単票の項目抽出と再送、スライド修正のラボは修正範囲の比較を扱います。今回は、原資料の値と位置・参照先の関係に限定しています。取得漏れの検出、途中からの再開、二つの表の変更競合は試していません。

2. 作り方の要点:資料・依頼・想定表を先に固定する

文字だけの配置資料

見積対象の版をR2と設定し、次の8ページ相当を文字の表にしました。pは受領資料の通しページ、Dは資料に書かれた図面番号です。図面番号順には並べていません。実際の図面ファイルや画像は作らず、製品型番・価格・宛先も含めませんでした。

ページ・図面・版 区画 数量の原文 関連する注記
p1・D-00・R2(全体) 東D 東D パネルPD 8枚 N4:D-40のPDと同一。追加ではない
p2・D-10・R2 北A 北A パネルPA 4枚 N1:見積対象。別紙なし
p3・D-30・R2 南B 南B パネルPB 4枚 N2:南Bのみ。北Bとの対応記載なし
p4・D-20・R2 西C 西C パネルPC 6枚 N3:見積対象。別紙なし
p5・D-40・R2(詳細) 東D 東D パネルPD 8枚 N4:D-00のPDを再掲。追加ではない
p6・D-50・R2 入口E 入口E パネルPE 2枚 N5:対象範囲は別紙A-9参照
p7・D-60・R2 背面F 背面F パネルPF 3枚 N6:R2では注記を再確認すること
p8・D-60・R1 背面F 背面F パネルPF 3枚 N6旧:R1の確認記録あり。R2の確認記録なし

提供資料はこの8ページ相当だけとし、別紙A-9は入れませんでした。PA〜PFはこの教材内のパネル記号で、実在の型番ではありません。

確認依頼と、先に保存した想定の結果表

依頼はI01〜I06の6項目です。正しく対応するもの、別区画の同数値、ページと番号の食い違い、全体と詳細への再掲、別紙不足、旧版の確認記録という6条件を意図的に入れました。

以下が整理前に固定した想定表の要点です。根拠欄の原文・注記は直前の資料表に対応します。「引き渡し」は人が確認した後に渡せる想定であり、今回の承認結果ではありません。

項目・依頼内容 想定 根拠の版・箇所・原文と注記 理由・確認先
I01:北A・4枚、R2 p2 D-10 引き渡し R2 p2 D-10「北A パネルPA 4枚」、N1 正しい対応。見積担当が原文と単位を確認
I02:北B・4枚、R2 p3 D-30 保留 R2 p3 D-30「南B パネルPB 4枚」、N2 値は同じでも別区画。資料提供担当へ北Bの資料を確認
I03:西C・6枚、R2 p3 D-20 保留 p3はD-30。R2 p4 D-20「西C パネルPC 6枚」、N3 指定ページと図面番号が不一致。資料提供担当へ対応の訂正を確認
I04:東D・8枚、R2 p1 D-00 引き渡し R2 p1 D-00とp5 D-40「東D パネルPD 8枚」、N4 同一PDの再掲。見積担当が注記を確認し、一度だけ扱う
I05:入口E・2枚、R2 p6 D-50 保留 R2 p6 D-50「入口E パネルPE 2枚」、N5 対象範囲を決める別紙不足。資料提供担当へA-9を依頼
I06:背面F・3枚、R2 p7 D-60、確認記録R1 保留 R2 p7とR1 p8 D-60「背面F パネルPF 3枚」、N6・N6旧 同数でも旧版だけの確認。資料管理担当へR2の確認を依頼

想定表を読み取り専用で保存し、整理の前後でSHA256が同じことを確認しました。ただし、同じAIが表を作り、後の整理でも参照可能でした。答えを隠した評価ではありません。

通常のコードで抜き出す部分

Pythonの標準ライブラリで文字の表を読み、各I番号について「指定ページに実際にある図面・版」と「指定の図面番号・版があるページ」を並べました。次は実行したコードの抜粋です。

cited_page = [p for p in pages if p['page'] == item['page']]
drawing_pages = [p for p in pages if
    (p['drawing'], p['revision']) == (item['drawing'], item['revision'])]

I03では指定p3がD-30、D-20・R2はp4と出ました。コードは原文と注記もそのまま出しますが、意味を判断しません。別紙の存在確認や同一パネルの再掲の解釈は、この短いコードの機能には含めていません。

AIに指示した二つの整理

汎用の生成AIに指示して処理しました。外部API・有料サービス・認証情報は使わず、作業しているAI自身が整理を行いました。

  • A・値中心: 同じ資料とコード出力を読み、I番号、依頼対象、依頼欄の記載値、単位だけを一覧にする。数量を確定・加算しない。
  • B・根拠付き: 同じ入力から、依頼と実際の参照先を分け、版・ページ・図面番号・区画・原文・単位・注記を残す。別紙不足、再掲、確認記録の版を記載し、不明な対応や数量を補わない。人の確認先を下書きする。

どちらも引き渡しの確定は指示していません。資料と想定表、コードは変えず、残す列と指示だけを広げました。

3. 結果:値だけでは残らなかった、保留の理由

各整理を1回ずつ行い、同じAIが想定表と1項目ずつ読み合わせました。Bの列は出力の要約で、根拠の原文・注記は前の表の対応を保っています。

項目 コードの抜き出し AIのA・値中心 AIのB・根拠付き 想定 一致/不一致・理由
I01 p2 D-10 R2、ページ対応あり 北A・4枚 原文とN1を保持。相違は見つからないが未承認 人の確認後に引き渡し A未比較/B一致。正しい対応の材料を保持
I02 p3 D-30 R2、原文は南B・4枚 北B・4枚 北Bと南Bは別区画。北Bへの対応記載なし 保留 A未比較/B一致。同数値を対応の根拠にしない
I03 指定p3はD-30。D-20 R2はp4 西C・6枚 指定の不一致と候補のp4を併記。黙って訂正しない 保留 A未比較/B一致。訂正の確認が必要と残る
I04 p1 D-00 R2、N4を保持 東D・8枚 p5 D-40のN4まで戻り、同一PDの再掲と記載 人の確認後に一度だけ引き渡し A未比較/B一致。16枚に足していない
I05 p6 D-50 R2、N5を保持 入口E・2枚 A-9未提供、対象範囲は不明 保留 A未比較/B一致。不足別紙の内容・数量を補っていない
I06 p7 D-60 R2、依頼の確認版はR1 背面F・3枚 p8 R1の確認記録とp7 R2を区別 保留 A未比較/B一致。旧版の確認を引き継がない

Aは全6項目で想定の引き渡し・保留を比較する根拠が足りず、「未比較」としました。Aが全件を引き渡し可と誤判定したわけではありません。 値だけの転記では、判断の理由が見えないという出力形式の制約です。I04もAでは8枚と写しただけで、加算の誤りは起きていません。

Bでは、事前に引き渡しを想定した2項目と保留を想定した4項目の判断材料が、想定と6項目とも一致しました。不一致はありませんでした。I02の北Bの数量、I05の別紙の内容や追加数量を推測で補うことはなく、I04を16枚にする二重計上もありませんでした。これは小さく意図的に作った教材での自己照合で、読み取り精度や業務での有効性を示す成績ではありません。

かかった時間と測定条件

2026年10月25日10:29:58〜10:30:31(日本時間)の経過33秒を記録しました。素材の保存直前から、想定表の固定、コード実行、AIの2通りの整理、読み合わせと想定表のハッシュ再確認までの1回の経過時間です。事前の資料調査・構想・指示の検討、記事制作、ビルド、表示確認、人による評価は含みません。AI単体の速度や、人の作業時間の目安、削減時間ではありません。

4. うまくいかなかったことと、直したこと

値中心の一覧には、元資料へ戻る手掛かりがなかった

AではI02が「北B・4枚」とだけ残り、実際の参照先が南Bであることを一覧から確かめられませんでした。依頼欄の数量を写した一覧を、原資料で確認した数量と読み違える余地があります。Bでは依頼対象と参照先を別々に残しました。

I03はコードが不一致を出しても、Aの列には載りませんでした。p4に候補を見つけたことと、依頼の参照先を訂正してよいことは別です。Bでは両方を記載し、資料提供担当への確認として残しました。

ページ対応だけでは、注記の不足や古い確認を扱えなかった

I05・I06はページ・図面番号・版の対応自体は一致しました。それでも、I05には別紙がなく、I06の確認記録は旧版だけです。Bでは注記の参照先と確認した版まで残す形にしました。I04も、同じ記号と「再掲・追加ではない」という明記があったから関係を追えたのであり、同じ数値だけで重複と決めたのではありません。

入力資料や想定表の修正、AIの取り違えを直す再実行はしていません。直したのはAからBへの指示と出力列です。Bで新たな取り違えは見つからず、失敗を作るための追加実行もしていません。想定を参照できる同じAIの整理なので、問題が出なかった範囲を一般化できません。

5. 実際の業務で使う前に確認すること

  • 版の採用根拠: 今回はR2を対象と設定しました。実務では最新版・採用版と受領範囲を人が確かめます。番号が新しいだけで採用しません。
  • 原図との対応: 見積担当者がページ、図面番号、区画、原文、単位を開いて確認します。今回、文字の表にない図形・寸法・凡例は読んでいません。
  • 再掲と別項目: 同じ数量を重複と決めず、記号・対象範囲・注記を確認します。今回のような明記がない再掲、記号の変更、複数資料の食い違いは未試行です。
  • 保留を解く担当: 北Bの資料、ページ対応の訂正、別紙A-9、R2の確認結果をそれぞれ入手してから再確認します。今回、確認先は架空の役割の下書きで、依頼・回答の受領は行っていません。
  • 引き渡しの確定: 人が確認者・確認日・対象の版・採否と理由を残し、保留が残る表を全件確認済みにしません。専門判断や見積価格は別途担当者が確定します。

この試作は、素材作成と照合を同じAIが行った自己照合です。見積担当者・設計者による評価、実図面、OCR、設計・法令適合、安全性、価格、反復時の安定性、大量資料での確認は未実施です。特定のAIサービスや図面・積算ソフトの機能、hirostaの対応範囲や効果を保証するものではありません。実資料を使う前にAIへ渡せる情報の条件も確認します。

6. 相談への案内

数量を拾う工程と、その数量を採用してよいか確認する工程は、別々に整理できます。通常のコードで番号を突き合わせ、AIが根拠を並べ、人が不足や食い違いを解消してから引き渡す流れを考えます。

書類処理の支援やサービス・料金をご覧のうえ、今の資料と転記先、確認を戻している箇所から無料相談でお知らせください。