1. AIが読んだ情報と、見積に採用する情報を分ける

日東工業と日本IBMは、設備図面から分電盤の見積に必要な情報を取り出すアプリを開発したと発表しています。発表の「取り組み概要」では、回路情報・機器情報・特記事項を抽出対象とし、AIが読み取りと整理、営業担当者が確認・補正を担うと説明しています。

ここから参考にするのは、抽出結果を人が確認する工程を残すことです。発表には、そのまま他社へ適用できる精度・費用の保証はありません。本記事でも導入効果の数値は示しません。以下の原図の場所を残す方法や保留条件は、共同発表の製品機能ではなく、hirostaからの運用の提案です。

AIを入れる前に、既存の図面管理・見積ソフトで図面番号や項目を引き継げないか確認します。すでに確定した表データを転記するだけなら、既存機能や通常の自動化で足りる場合があります。AIを使う場合も、機器の選定や必要数量の設計を、文字の読み取りと一緒に確定させません。

2. 原図の版と、項目の根拠を先に決める

受付時に対象を固定する

案件名だけで資料をまとめず、図面番号、改訂記号・改訂日、ファイル名、受領日、対象のページを記録します。PDFの通しページと図面に印刷された番号は違うことがあるため、両方を残します。見積の対象外の範囲と、参照する仕様書も担当者が決めます。

最新版か判断できない場合は、依頼元への確認待ちにします。「最後に届いたファイルだから正しい」とは決めません。図面を外部AIに渡す前には、発注元との契約、自社の情報管理ルール、サービスの入力データの扱いを確認してください。入力可否の整理は顧客情報をAIに入力する前の確認で説明しています。

抽出結果には原文と確認状態を付ける

最初は表計算の一覧でも構いません。横に長い表を増やすより、各項目で次の情報を追えるようにします。

  • 対象:案件、図面番号・版、PDFページ、印刷された図面番号。
  • 場所:機器記号、表の行・列、区画、注記番号など、別の担当者が探せる目印。
  • 読み取り:原文、抽出した値、単位。「記載なし」と「読み取れない」を区別する。
  • 確認:採用・修正・保留、確認者・確認日、修正理由、確認先。

AIが示したページや箇所も、人が実際に開いて確かめます。原図の引用だけでなく、別の場所にある条件を確認するため、切り抜きだけを残して元ファイルを失わないようにします。数量を集計した場合は、原図に書かれた値と集計結果を分け、対象範囲と計算の内訳を残します。

3. 原図で確認するのは、値だけではない

記号・数量・単位・適用範囲

似た機器記号の取り違え、小数点や単位の読み落とし、同じ機器が別ページにも載っている可能性を確認します。図中の記号が数量を意味するとは限りません。凡例・一覧表・対象範囲との対応を担当者が確かめ、重複掲載を単純に足しません。

寸法が読めないときに縮尺から推定して埋めたり、空欄に標準値を入れたりしない運用にします。原図自体が不鮮明なら、読み取りの指示を繰り返す前に、元データや鮮明な資料の再提供を依頼するか判断します。手書き・写真の撮り直しの考え方も参考になります。

特記事項・仕様書・資料間の食い違い

欄外の注記、別紙参照、既設と新設、支給品と調達品、見積対象外などの条件は、数量の表とは別に確認します。図面と仕様書で値が違うときは、AIが選んだ方を採らず、両方の根拠を残して担当者へ戻します。どの資料を優先するかは契約・案件ごとに人が確認します。

次の場合は、該当項目を見積へ渡すのを止めます。

  • 原図の版・場所が分からず、根拠を確認できない。
  • 数値・単位・凡例や注記が読めず、意味を確定できない。
  • 図面と別紙が食い違い、優先する資料が未確定。
  • 機器構成や法令・安全の専門判断が必要で、担当者の確認が済んでいない。

未確認の項目を除外して一部だけ見積を進めるかも、人が決めます。保留が残る一覧を「全項目確認済み」として引き渡しません。

4. 想定シナリオ:修正図面が届いた設備会社

以下は架空の設備会社の未実施の例です。営業担当が受領資料を整理し、技術担当が読み取り内容と専門判断を確認し、見積責任者が採用を決める流れを想定します。

最初の一覧は、全行を確認待ちにする

案件Aの図面D-01・改訂Bを受け取り、AIが拾った機器記号と数量を一覧にする想定です。画面では左に原図、右に項目・根拠・確認状態を並べると、戻る場所を確認しやすくなります。これは画面構成の案であり、操作済みの製品画面ではありません。

  • 項目A:PDFの2ページ、図面番号D-01、機器表の記号K-1。数量欄の「2」を抽出。技術担当が凡例と重複掲載を確かめてから採用します。
  • 項目B:同ページのK-2。数字が不鮮明なため「読取不可」で保留。推測した数字は入れず、営業担当が鮮明な資料の入手を担当します。
  • 項目C:PDFの3ページ、特記事項の注記N-1に「別紙参照」。別紙が未受領のため保留し、確認先と入手予定日を残します。

この数字や記号は説明のための架空の設定で、AIの出力結果ではありません。採用した行にも、誰が何を確かめたかを記録します。単価や必要な構成はこの一覧から自動確定せず、見積担当が別に判断します。

改訂Cが届いたら、改訂Bの確認を引き継がない

同じファイル名で改訂Cが届いた場合も、元のBを上書きせず、版を分けて受領記録を残します。変更の対象と影響範囲を技術担当が確かめ、関係する抽出項目を確認待ちへ戻す提案です。変更箇所を特定できなければ、再確認の範囲を人が決めます。

見積へすでに渡した版がある場合は、その番号と引渡し先を確認し、差し替えの要否を責任者へ戻します。再抽出しただけで、新しい版が見積に反映済みになったとは扱いません。改訂Cの確認結果と保留を受け取ったことまで記録し、帳票の作成・承認は見積書・発注書・納品書の手順へ進めます。

5. 費用と期間は、読取件数より確認工程も含めて考える

一律の金額や日数は示せません。図面の形式・ページ数・改訂の頻度、スキャンの鮮明さ、抽出項目、専門担当者が確認する範囲、見積ソフトへの受け渡し方法によって変わるためです。

相談時は、情報管理上使用できる資料と、現在の転記先・確認手順をそろえます。資料を受け取る工程、読み取り、原図との確認、保留の解消、引き渡しを分けて費用と期間を見積もります。サービス利用料だけでなく、原図を整える作業と、人の確認・修正図面への対応も含めます。

最初の対象を1種類の図面と必要な項目に絞る案があります。採用条件は「一覧ができた」ではなく、「別の担当者が原図へ戻れる」「未確認が残っていると分かる」「確認済みの版だけを見積担当へ渡せる」とします。実際の精度・確認時間を確かめてから範囲を広げる判断であり、削減効果を約束するものではありません。

書類の受付から記録までの全体像は書類処理AIガイド、対応範囲は書類処理の支援内容をご覧ください。書類処理の事例は別業務の参考であり、図面の読取実績ではありません。支援・契約の案内はサービスと料金、対象業務が決まっていない段階の相談はお問い合わせへ進めます。