1. 試したこと:同名の現物と、処分したという連絡をそのまま採用しない

台帳と同じ名前の設備が見つかっても、その資産番号の現物とは限りません。また、「廃棄する予定」と「処分したとの連絡」は、どちらも処分の完了を裏付ける記録とは別です。

今回は、同じ資料を (a) 名称で対応させる確認と、(b) 資産番号・管理ラベルと証拠の種類まで照合する確認で整理しました。設備の所在・異動の候補、不足資料、次の確認先を残すところまでが対象です。

一般的な進め方は年末の設備・備品を固定資産台帳と照合する手順をご覧ください。この記事は、その手順の一部を架空資料で試した記録です。既存記事の想定シナリオを実運用の実績に置き換えたものではなく、申告書の作成や税務判断も行っていません。

2. 作り方の要点:台帳と記録、先に固定する想定を分ける

固定資産台帳:架空の設備6件

台帳の版はL1、基準日時は2026年10月19日17:00。所在確認は10月20日10:00とし、同時点までに提供された記録を比べました。以下の日付はすべて2026年です。台帳は照合用に読み取り、上書きしていません。

台帳行 資産番号 名称 台帳の所在 状態
L01 FA-101 卓上スキャナー 第一室 使用中
L02 FA-102 卓上ボール盤 作業室 使用中
L03 FA-103 複写機 第一室 使用中
L04 FA-104 作業用端末 保管室 使用中
L05 FA-105 ラベル印刷機 作業室 使用中
L06 FA-106 卓上スキャナー 第一室 使用中

会社名・設備名・役割・記録はすべて架空です。実在の会社・人物・取引先・商品の情報、金額・宛先・動くリンクは資料に入れていません。

所在確認表:確認した範囲と管理ラベル

「現物なし」は表に書かれた範囲で見つからなかったという記載です。会社のどこにも存在しないという判定ではありません。役割名は資料内の設定であり、実際に人が確認した記録ではありません。

記録 探した資産番号 確認日時・役割 場所・確認内容 管理ラベル
S01 FA-101 10-20 10:00・総務担当 第一室で同名品を発見。ただしS06と同じ現物。FA-101自体は未確認 FA-106(S06の再参照)
S02 FA-102 10-20 10:00・作業室担当 作業室で見つからず。貸出・別保管先は未調査 現物未確認・読取なし
S03 FA-103 10-20 10:00・第二室受入担当 第二室で使用中 FA-103
S04 FA-104 10-20 10:00・保管担当 保管室に現物あり FA-104
S05 FA-105 10-20 10:00・作業室担当 作業室に現物なし。廃棄連絡D02を参照 現物未確認・読取なし
S06 FA-106 10-20 10:00・総務担当 第一室で使用中 FA-106

S01とS06は別の設備を発見した2件ではありません。同じFA-106を、FA-101を探した記録からも参照しています。台帳は6資産で、FA-101自身の現物未確認も残す設定です。

移動の受渡と、廃棄関連の記録

記録 資産番号 証拠の種類・本文 記載した役割
M01 FA-103 移動受渡。MOVE-01、10-18に第一室から第二室へ引渡・受領済み 第一室引渡担当・第二室受入担当
M02 FA-103 移動連絡。MOVE-01、M01と同じ異動の再掲 総務担当
D01 FA-104 廃棄予定。10-25に処分予定。実施・処分記録の提供なし 保管担当
D02 FA-105 廃棄連絡。「10-18に処分した」。対象と処分日を裏付ける処分記録の提供なし 処分手配担当

処分の完了を裏付ける記録は全6件で未提供です。FA-101・FA-102・FA-106の移動・廃棄記録も未提供としました。未提供は、記録や異動が存在しないという意味ではありません。 M01・M02は2行ありますが、同じMOVE-01のため移動の候補は1件です。

AIの候補を作る前に固定した想定の結果表

試作者である同じAIが次の想定表を先に保存し、時刻とファイルのハッシュを記録しました。候補の作成後も内容を変えていません。人が評価した正解表ではありません。

資産番号 想定 理由・根拠の記録番号 不足資料 次の確認先
FA-101 同名別資産 L01・L06・S01・S06。発見品はFA-106で、FA-101の所在は未確認 FA-101のラベル付き所在、別保管・貸出記録 総務担当・現場責任者
FA-102 現物不明 L02・S02。作業室で見つからず、異動の裏付けも未提供 別保管・貸出・異動・再確認記録 作業室担当・現場責任者
FA-103 移動済み未反映 L03・S03・M01・M02。第二室で受領、台帳は第一室 台帳反映履歴・反映要否の確認 経理担当・第二室受入担当
FA-104 廃棄予定のみ L04・S04・D01。現物あり、予定は未来 実施の有無、実施後の対象・処分日を追える記録 保管担当・処分手配担当
FA-105 廃棄の証拠待ち L05・S05・D02。連絡のみで処分の裏付けなし 対象と処分日を裏付ける処分記録 処分手配担当・経理担当
FA-106 一致(対照) L06・S06。番号・所在・使用中の記載が一致 記載上の不一致なし。人の原記録確認は未実施 総務担当

主な区分を1つずつ置いていますが、原因を排他的に決めた表ではありません。FA-101は「同名別資産」と分かった後も、FA-101自体の現物未確認が残ります。「一致」も、この資料の記載上の一致候補です。

最初の形と、AIへの指示

最初は名称で対応させ、所在の有無と異動の記載を並べました。(a)では廃棄関連の記載を一括りにし、(b)で番号と証拠の種類を明示して整理し直しています。指示の要点は次のとおりです。

(a) 名称を対応キーとして、所在の有無と異動の記載を整理する。
番号・証拠の種類による追加照合は(b)で行う。廃棄を確定しない。
(b) 資産番号と管理ラベルを照合し、異動候補を根拠番号・証拠の種類付きで書き出す。
台帳との差、不足資料、次の確認先を残す。同じ異動の再掲を二重に数えない。
番号未確認のものを名称で既存資産に結び付けない。未提供を不存在にしない。
紛失・売却・廃棄や税務・会計項目を確定しない。台帳を更新・削除しない。
一致候補も人の確認待ちとする。質問は送信しない。

作業中のAI自身が文字表を読み、候補と照合表を作りました。今回は結合・集計のコードは使っていません。番号照合を通常のコードへ分担することは可能ですが、その実装は今回の成果ではありません。

(a)も元資料・想定を知る同じAIによる整理です。別セッションや盲検の比較ではなく、名称だけの方法が常に同じ失敗をするという実証でもありません。廃棄関連の違いは文章を丁寧に読む方法でも拾えます。今回はどの項目を表に残すかの比較です。

3. 試した結果:番号と証拠の種類を残すと、確認待ちの理由が分かれた

(a) 名称中心の表と、想定との照合

以下の「不一致」は、想定した区分・理由を候補として残せなかったものです。全行が人の確認待ちで、表の「一致候補」は現物を確認済みという意味ではありません。

資産番号 項目・台帳の値 AIの候補と根拠 想定/一致・不一致と理由 不足資料・確認先
FA-101 卓上スキャナー・第一室・使用中 一致候補。S01の同名品が第一室にある 同名別資産/不一致。FA-106の現物を取り違えた FA-101の所在・ラベル。総務・現場責任者
FA-102 卓上ボール盤・作業室・使用中 現物不明候補。S02、異動記録未提供 現物不明/区分一致。調査範囲外は不明 別保管・貸出・異動記録。作業室・現場責任者
FA-103 複写機・第一室・使用中 移動済み未反映候補。S03・M01・M02の第二室への記載 移動済み未反映/区分一致。ただし名称での対応 反映履歴。経理・第二室受入担当
FA-104 作業用端末・保管室・使用中 廃棄関連あり・完了未確認。S04・D01 廃棄予定のみ/不一致。予定という段階を候補欄で区別できない 実施の有無と記録。保管・処分手配担当
FA-105 ラベル印刷機・作業室・使用中 廃棄関連あり・完了未確認。S05・D02 廃棄の証拠待ち/不一致。連絡のみと処分の裏付け不足を区別できない 対象・処分日の裏付け。処分手配・経理担当
FA-106 卓上スキャナー・第一室・使用中 一致候補。S06に同名品が使用中と記載 一致/区分一致。ただし同一性の裏付け不足 番号と原記録の確認。総務担当

(b) 記録から書き出した異動の候補

番号・証拠の種類を付けた表では、次のように整理しました。実施日が不明なものを推測で埋めていません。

資産番号 異動・所在の候補 根拠と証拠の種類
FA-101 異動は未特定。S01の発見品はFA-106で、FA-101自身の所在は未確認 L01・L06、S01・S06の管理ラベル
FA-102 異動は未特定。作業室では見つからない L02・S02の探索範囲と、異動記録未提供
FA-103 10-18、第一室から第二室へ移動した候補 M01の受渡、M02の同一異動の再掲、S03のラベル・使用中の記載
FA-104 10-25の廃棄予定。処分した候補にはしない D01の予定、S04の現物ありの記載
FA-105 10-18に処分した「との連絡」。完了は未確認 D02の連絡、S05の現物未確認。対象と処分日の裏付けなし
FA-106 記載上一致。異動記録は未提供 L06・S06の番号・所在・状態

(b) 台帳・候補・想定を1件ずつ照合した表

「想定と一致」は、この試作で用意した表との一致です。人の評価や、所在・処分の確定ではありません。

資産番号 項目・台帳の値 AIの候補・根拠 想定/一致・不一致と理由 不足資料・次の確認先
FA-101 所在:第一室、使用中 同名別資産。S01はFA-106。L06・S06へ対応 同名別資産/一致。FA-101自体は未確認のまま FA-101のラベル付き所在、別保管・貸出記録。総務・現場責任者
FA-102 所在:作業室、使用中 現物不明。L02・S02 現物不明/一致。調べた場所での不在だけ 別保管・貸出・異動・再確認記録。作業室・現場責任者
FA-103 所在:第一室、使用中 移動済み未反映。M01・M02・S03 移動済み未反映/一致。第二室受領、MOVE-01は1異動 台帳反映履歴と反映要否の確認。経理・第二室受入担当
FA-104 所在:保管室、使用中 廃棄予定のみ。D01・S04 廃棄予定のみ/一致。現物あり、予定は未来 実施の有無と実施後の処分記録。保管・処分手配担当
FA-105 所在:作業室、使用中 廃棄の証拠待ち。D02・S05 廃棄の証拠待ち/一致。連絡があるだけ 対象と処分日を裏付ける記録。処分手配・経理担当
FA-106 所在:第一室、使用中 一致候補。L06・S06 一致/一致。番号・所在・状態の記載が一致 記載上の追加不足なし。人の原記録確認は未実施。総務担当

この試作・この条件では、(a)に同名品の取り違え1件、廃棄関連の区分未特定2件があり、(b)は6行の主区分と理由が想定表と一致しました。これは想定を知っている同じAIの読み合わせであり、一般的な正答率ではありません。

(b)でもFA-101・FA-102の実際の所在、FA-104の予定後の実施、FA-105の処分の裏付けは分かりません。FA-103の反映要否も人に残し、FA-106も現物と原記録の確認待ちです。

かかった時間と、測った範囲

2026年10月20日、想定表の固定記録(UTC 07:37:27)から、候補と6件の読み合わせ結果の保存(07:38:19)までの経過は52秒でした。素材・想定表の準備、記事編集、ビルド・表示確認は含みません。同じAIによるこの整理範囲の経過時間で、人の確認時間や実務の削減時間ではありません。

4. うまくいかなかったことと、直したこと

最初の名称中心の表では、S01の「同名品あり」をFA-101の一致候補にしました。ラベルのFA-106を照合欄に残さないと、同じ現物をFA-101とFA-106の両方の根拠に使ってしまいます。番号を照合した(b)ではFA-101の一致候補を取り下げ、同名別資産と、FA-101自身の所在未確認を併記しました。

また、FA-104とFA-105を「廃棄関連あり」にまとめると、次に集める資料の違いが隠れます。そこで、予定・連絡・処分記録の有無を分けました。FA-104は実施の有無、FA-105は連絡に書かれた対象と処分日の裏付けを確認先へ渡す形です。AIの説明を足しても、処分の証拠自体は増えません。

M01とM02は、同じ異動IDと再掲の明記から1件として扱いました。ここでは重複した移動候補の修正はありませんでした。想定表・元の台帳も変更していません。今回ない誤りや修正を、失敗例として追加していません。

短い文字表でラベルと再掲が明記された条件です。番号が欠けた現物の照合、ラベルの読み間違い、複数回の移動、訂正や取消し、実際の証憑や画像・OCRは試していません。廃棄予定や連絡だけの例であり、処分記録がある場合の十分性も評価していません。

5. 実際の業務で使う前に確認すること

まず対象の台帳の版、拠点、確認時点をそろえ、現場責任者が未調査の場所・貸出先を調べます。番号が読めないものは仮の管理番号などで分け、同名の既存資産へ結び付けずに確認してください。

次に、現物・管理ラベル・元の受渡や処分の記録を人が照合します。対象と処分日をたどれるか、必要な書類は何かも経理や専門家に確かめます。「見つからない」だけで紛失・売却・廃棄を選ばず、「使われている」だけで台帳反映済みにもしません。

照合用の一覧には、確認する担当者と社内の回答予定日、何がそろえば確認を終えられるかを残します。台帳への反映は、この一覧の作成と別に人が決める操作です。申告の対象・取得価額・耐用年数・勘定科目・税額をAIへ判断させません。

実務での評価には、AIの候補を見る前に担当者が元資料から整理した結果との比較が必要です。今回の同じAIによる想定表との一致では代替できません。実際の台帳を入力する前には、AIへ渡せる情報と利用条件も確認してください。

6. 相談への案内

「移動の連絡が台帳に戻らない」「処分の記録を探せない」「誰に確認するか分からない」といった場面から、資料を並べる工程と人へ確認を渡す流れを整理できます。経理AIの判断ポイントやサービス・料金もご覧のうえ、今の困りごとを無料相談でお知らせください。