1. エクセルの勤怠管理でよくある困りごと
- 入力と転記の手間:紙のタイムカードや自己申告の内容を、エクセルに入力し直している
- 集計のミス:関数の範囲がずれたり、行を追加したときに計算が崩れたりする
- 作った人しか直せない:複雑な関数やマクロの中身が分からず、担当者が変わると直せない
- 月末に作業が集中する:締め日の後に、集計と給与計算がまとめて発生する
- 記録の正確さ:自己申告だけでは、実際の勤務時間との違いに気づきにくい
2. 自動化の3つの選択肢
| 選択肢 | 勤務ルール | 承認・給与とのつながり | 注意点 |
|---|---|---|---|
| A. エクセルのまま効率化する | 関数や入力書式で扱える、単純な勤務形態 | 確認担当を決め、確定した集計を給与へ渡す | 関数の保護、版の管理、修正履歴を整える |
| B. 勤怠管理システムを導入する | 自社のシフト・休暇・締め日に設定が合うか確認する | 修正申請・承認と、利用中の給与ソフトへの連携を確認する | 必要な機能と契約プラン、運用変更の手間を比較する |
| C. 今の運用に合わせて仕組みを作る | 既存サービスの設定では扱いにくい条件を実装する | Webフォームの打刻から集計、承認、給与への受け渡しを設計する | ルール変更時の修正・保守担当を決める |
勤務の形が単純で、集計と確認を無理なく続けられるならAも選択肢です。打刻の回収や承認、給与への転記まで困っているなら、まずBで必要な流れを扱えるか確認します。設定で合わない部分が残る場合に、Cの必要性を検討します。独自ルールがあるだけで、個別構築が必要とは限りません。
特定製品の対応機能や料金を一律には比較していません。候補を選んだら、その時点の公式仕様・料金・連携先を確認し、自社の勤務ルールを使って試してください。
ガイドラインから見る、3択に共通する記録の条件
ここからは、厚生労働省の公開資料を分析して、3択の確認点に対応させます。今回の分析は、hirostaによる勤怠システムの導入・実運用検証の結果ではありません。今回の情報確認日はこのガイドラインの参照範囲に対するもので、後述の公開事例は2026年10月7日の確認内容を維持しています。
ガイドラインに書かれていること:2026年10月10日に、厚生労働省本省の掲載ページで案内されている平成29年1月20日策定の本文PDFを確認しました。参照範囲は第2項(適用の範囲)、第3項(労働時間の考え方)、第4項(1)〜(3)(始業・終業の確認・記録と自己申告制の措置)です。
- 日ごとの始業・終業を確認して記録する:原則は、使用者が自ら現認するか、タイムカード・ICカード・PC使用時間などの客観的な記録を基礎に確認する方法です(第4項(1)・(2))。月の合計時間だけを残す方法とは異なります。
- 自己申告で把握せざるを得ない場合にも確認・補正する:労働者と管理者への十分な説明に加え、必要に応じて実態調査を行い、労働時間を補正する措置が示されています。特に、保有する入退場・PC使用記録などと申告時間に著しい差がある場合には、実態調査と補正が必要です(第4項(3)ア〜ウ)。
- 差の理由と、申告を妨げる運用も確認する:申告を超えて事業場にいた時間の理由を報告させる場合、その内容が適正か確認します。「休憩」「自主研修」という報告でも、実際に使用者の指揮命令下にあった時間は労働時間として扱います。申告時間に上限を設けたり、実態より短く記録する慣習がないかも確認する内容です(第3項、第4項(3)エ・オ)。
hirostaの提案:残す記録と、差異を確認する担当をセットで選ぶ
以下はガイドラインの指定する製品・帳票ではなく、記事の3択へ対応させたhirostaの運用提案です。どの方法でも、元の記録を修正値で上書きするだけにせず、申告・修正理由・確認結果と確定値をたどれるようにします。確認担当は、使用者または労働時間を管理する権限を委ねられた担当者を想定しています。
| 選択肢 | 残す記録の提案 | 誰が、どの差異を確認するか |
|---|---|---|
| A. エクセルの改善 | 元のタイムカードや現認の記録、日ごとの始業・終業、本人の申告、修正前後と理由・確認者を対応づける | 確認担当が元記録とExcelの転記値を照合する。自己申告を使う場合は申告と保有する入退場・PC使用記録、実態との差も本人や現場責任者に確認する |
| B. 専用システム | 元の打刻、修正申請、理由・承認履歴、確定した始業・終業を保存・出力できるか確認する | 確認担当が打刻と修正申告の差を確認する。システム外の作業や打刻後の勤務は、本人・現場責任者への確認と保有する記録との照合で把握する |
| C. 個別構築 | Web・QRなどの元の打刻と対象者、修正申告、理由・確認者、確定値を別々に追えるよう設計する | 確認担当が打刻と申告、申告と実態の差を確認する。開発・保守担当は記録欠落や計算の不具合を調べ、労働時間の判断は確認担当が行う |
選び方の見直し:勤務形態が単純でも、元の記録と訂正を照合できなければ「関数で計算できるからAで十分」とは判断しません。Aで照合を続けられるなら改善し、確認漏れや履歴の管理が難しいならBの機能・運用を確認します。Bで記録や修正履歴を取り出せない場合も、集計機能だけで採用せず、別の製品や運用を比較します。Cは、必要な記録・確認の流れを既存サービスで扱えない理由が明確な場合に検討します。
QR打刻や自動計算だけでは解決しない範囲
例えば、退勤打刻の後に業務上の片付けをしていた場合、打刻から集計した時間と実態に差が出ます。これは導入事例ではなく、記録方法を選ぶための想定例です。Aなら元記録とExcel、Bなら打刻と修正申請、Cなら打刻ログと修正申告を残し、いずれも確認担当が本人・現場責任者に作業内容や指示、終了時刻を確認して、必要な補正とその理由を記録する流れを提案します。
QRコードで時刻を残せても、それだけでは本人の勤務実態や打刻前後の作業まで確認できません。PC使用時間や事業場にいた時間を、そのまま全て労働時間として計算することもできません。差を抽出する自動化は確認のきっかけになりますが、何が労働時間かの判断や、適正な申告を妨げる慣習の改善には人の対応が必要です。
この資料から得られる選択の軸は、計算の速さだけでなく、記録の根拠から差の理由を確かめ、補正までたどれるかです。ただし、今回の分析では特定製品の機能、自社・お客様の運用、補正の正確さや効果は検証していません。第2項には対象労働者の除外もあり、適用されない労働者についても健康確保のため適正な労働時間管理の責務があるとされています。個別の適用や労働時間の扱いは社会保険労務士などへ確認してください。3択のどれかを採用すれば法令を満たす、という判断ではありません。
3. 自社に合う方法の選び方
次の点を確認すると、選びやすくなります。
- 勤務の形:シフト、日をまたぐ勤務、直行直帰、休憩や休暇をどう記録・集計するか
- 修正と承認:打刻忘れを誰が確認し、誰が修正を承認するか。元の記録と修正理由を追えるか
- 給与への受け渡し:社員番号、集計期間、時間の単位、給与項目が合うか。CSVや連携で渡すなら、取り込み後も結果を確認できるか
- 独自のルール:手当や端数処理を設定で扱えるか。現在のExcelの計算が適切かも確認する
- 運用の負担:利用料だけでなく、社員の増減、ルール変更、締め後の訂正を担当者が続けて扱えるか
例えば、勤務時間の合計は正しくても、給与への転記に手間がかかるなら、先に受け渡しを整える方法があります。一方、打刻漏れの確認や承認が月末に集中するなら、計算式だけを直しても困りごとは残ります。人数だけで選ばず、止まっている工程を見つけましょう。
AIを使うなら、計算と文章を分ける
勤怠をAI化するかどうかは、3択とは別の判断です。どの選択肢でも、記録の集計・計算は関数やプログラムで行い、必要な工程だけにAIを補助として使えます。
- 通常の自動化で扱うこと:承認済みのルールによる時間の集計、給与項目への変換、未打刻の検出、決まった文面の通知
- AIの活用例:社員向けの打刻手順、運用変更の説明、打刻漏れを本人に確認する依頼文の下書き
- 人が確定すること:実際の勤務状況、修正の可否、計算結果、給与への取り込み、社員に送る文章
例えば、退勤の記録がない日は通常の自動化で抽出し、担当者が本人に確認します。AIを使うとしても確認依頼の文案までとし、勤務時間を推測して埋めたり、給与や承認結果を確定したりさせません。毎回同じ依頼文で足りるなら、定型文で対応できます。これは一般的な運用例であり、後述の導入事例でAIを使ったという意味ではありません。
文章の下書きには、まず個人の勤怠・給与情報を含まない業務手順を使います。個人情報を扱う必要がある場合は、入力する範囲、閲覧権限、利用サービスのデータの扱いを確認してから判断してください。
4. 切り替えの進め方
ステップ1:今のルールを書き出す
締め日、休憩・休暇、残業や手当、端数処理など、今のエクセルに組み込まれているルールを書き出します。関数の中にだけ残っているルールも拾い出し、就業規則や実際の運用と照合します。扱いに迷う点は、実装前に社会保険労務士へ確認します。
ステップ2:記録の方法を決める
社員がどうやって出勤・退勤を記録するか(スマートフォン、パソコン、QRコードなど)を決めます。現場で無理なく使える方法を選び、打刻できないときの連絡先と、修正・承認の手順も決めます。
ステップ3:集計と給与計算の範囲を決める
「打刻→漏れや差異の確認→修正・承認→集計の確定→給与への取り込み→結果の確認」の流れを決めます。未確認の記録を給与に渡さず、締め後に訂正があれば、勤怠と給与のどちらを直したか追えるようにします。
ステップ4:並行して試す
締めから給与への受け渡しまでを含む期間で、これまでのエクセルと新しい仕組みを並行して確認します。通常勤務だけでなく、日をまたぐ勤務、休暇、打刻忘れ、締め後の訂正など、自社にある条件を確かめます。差が出たら原因を確認し、旧Excelと一致するだけで正しいと判断しないようにします。
並行確認でも、給与への取り込み・支払いは正式に採用する一方の結果だけを使います。同じ月のデータを二重に取り込まないよう、確定する担当者と手順を決めておきます。
ステップ5:現場に説明して、定着させる
社員への説明と、人が増えたり減ったりしたときの手順を用意します。計算ルールを変更する担当、問い合わせ先、切り替え後に問題が出た場合の対応も確認します。AIで説明文を下書きした場合も、担当者が実際の操作と照合してから配布します。
5. 注意点
- 労働時間の把握:第2節の記録・差異の確認条件を、集計や給与連携の機能とは別に確認します。自己申告を適正に行える運用も必要です。
- 例外的な計算の条件:手当や端数の処理などの例外は、切り替え前に必ず確認します。
- 法令の判断は専門家に:労働時間や賃金の扱いについて判断が必要な場合は、社会保険労務士に確認してください。
6. 事例:エクセルの勤怠管理をWebに切り替えた例
エクセルで勤怠を管理し、給与を手で計算していた会社の事例です。社員ごとのQRコードからWebフォームで打刻する仕組みにし、勤務時間から給与明細までを計算するプログラムを導入しました。例外的な計算の条件も調整しています。
導入時には現地で運用を指導し、社員が増えたり減ったりしたときの対応方法もお伝えしました。この事例では、AIは使わず、Webフォームとプログラムによる自動化で対応しています。
公開情報から確認できるのは、この導入内容とAI未使用という点です。削減時間や精度、承認の詳細はここでは示していません。Web勤怠と給与計算の自動化の導入事例で、実施内容を確認できます。
7. よくある質問
Q. エクセルのままではだめですか?
勤務の形が単純で、記録・修正・承認と計算の確認を続けられるなら、エクセルを改善する方法も選べます。集計式だけでなく、打刻の根拠や修正履歴、給与への受け渡しまで確認してください。
Q. 勤怠管理システムと、仕組みを作る方法のどちらがよいですか?
まず専用システムの設定で勤務ルール・承認・給与連携を扱えるか確認します。必要な条件が合わず、運用変更でも解決できない場合に、個別構築とその保守の負担を比較します。
Q. AIに勤怠の計算や承認まで任せられますか?
勤務時間や給与は、確認済みのルールを関数やプログラムにして計算し、人が確認・承認する流れにします。AIは説明や確認依頼の下書きに使い、欠けた勤務時間の推測や労務判断、給与の確定は任せません。
Q. 給与ソフトと連携できれば、確認は不要ですか?
連携できても、社員番号、集計期間、時間の単位、給与項目の対応と、取り込み後の結果を確認します。訂正時の再取り込みで同じデータを二重に扱わない手順も必要です。
Q. 切り替えにはどのくらいかかりますか?
ルールの複雑さによって変わります。並行して試す期間を含めて、余裕を持った計画にするのがおすすめです。
8. まとめ
- エクセルの改善、専用システム、個別構築の3択を、勤務ルール・承認・給与連携で比較する
- 集計・計算は通常の自動化で扱い、AIによる文章の下書きと分けて、人が確認・承認する
- 切り替え前に例外と差異を確認し、給与を二重に取り込まない手順を決める
業務全体の進め方はAI業務改善ガイド、勤怠での対応内容は勤怠・給与・期限管理の支援、支援範囲と料金はサービス・料金をご覧ください。方法が決まっていなくても、今困っている工程から相談できます。