1. 勤怠システムの導入と、助成金の成果目標を分ける
勤怠ソフトを入れることは、業務を改善するための「取組」です。一方、助成金では、選んだコースの「成果目標」を達成することも求められます。集計が楽になることと、制度上の成果目標を満たすことは別に確認します。
たとえば、労働時間短縮・年休促進支援コースには、36協定の時間外・休日労働の上限設定の見直し、年次有給休暇の計画的付与の新規導入、時間単位年休と特別休暇の新規導入という目標があります。単に「年休の残日数が見えるようになった」というだけで、休暇制度を新たに導入したことにはなりません。
システムを選ぶ前に、現在の就業規則・労使協定・年休管理簿を確認してください。既に導入している制度を新規導入の目標にできると考えず、各目標の要件を労働局に確かめます。
2. コースは製品名ではなく、変える制度と業種から選ぶ
個別企業が勤怠管理の改善を考える際は、次のコースを確認するところから始めます。表は入口の整理であり、対象可否を判定するものではありません。
| 自社で検討していること | 確認するコース | 人が先に確認する点 |
|---|---|---|
| 時間外労働の上限設定を見直す、休暇制度を新しく導入する | 労働時間短縮・年休促進支援 | 現在の36協定・休暇制度と、選べる成果目標 |
| 終業から次の始業までの休息時間を確保する制度を導入・拡充する | 勤務間インターバル導入 | 現在の制度、休息時間、対象となる労働者の範囲 |
| 建設業、運送業等、病院等、砂糖製造業、情報通信業、宿泊業で業種特有の課題に取り組む | 業種別課題対応 | 対象業種の定義と、その業種で選べる成果目標 |
勤務間インターバル導入コースにも労務管理用ソフトウェア等の導入・更新が含まれます。ただし、必要な休息時間や対象者の範囲などは支給要領の確認が必要です。業種別課題対応コースも、業種により選べる目標が異なります。
以下では、労働時間短縮・年休促進支援コースに絞って説明します。他のコースに同じ条件・金額をそのまま当てはめないでください。
自社と対象事業場の条件を確認する
公式ページでは、労災保険の適用、中小企業の規模要件、指定事業場の年休管理簿の作成などが条件として示されています。常時10人以上を使用する指定事業場では、年休の時季指定に関する定めのある就業規則を作成し、交付申請前に届け出ていることも確認します。
「社員が少ないから対象」「労災保険に入っていれば対象」と一つの条件だけで判断しないことが大切です。支給要領で他の要件や不支給となる条件も確認します。
3. 対象経費は、機能と契約の内訳で確認する
支給要領の「労務管理用ソフトウェア等の導入・更新」には、労働時間管理の機能を持つソフトウェアやクラウドサービスなどが含まれます。具体例には、勤怠管理ソフト、既存の給与システムとのAPI連携、連携作業のRPAによる自動化も挙げられています(第2の3(2)⑥)。
これは個別のサービスや開発費が、そのまま助成対象になるという意味ではありません。同項には自社開発を除く旨などの条件もあります。見積りを取る際は、次を分けて労働局に確認しましょう。
| 見積りで分ける項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 勤怠ソフト・クラウド利用料 | 労働時間管理の機能、利用期間、人数、対象になる契約範囲 |
| 初期設定・改修・給与連携 | 何を設定・改修する費用か、既存機能との違い、成果目標との関係 |
| 打刻用機器 | 労務管理が主な機能か、機器の仕様と用途 |
| PC・タブレット・スマートフォン | 原則として導入・更新は対象外。勤怠に使うだけで対象になると考えない |
| 継続的な保守・相談など | 導入費と分け、対象経費として扱えるか確認する |
AI機能があることは、この区分の対象要件ではありません。勤務時間の集計や給与への受け渡しは、決めたルールに沿う通常の自動化で扱えます。必要な機能の選び方は勤怠管理を変える3つの選択肢で説明しています。
4. 見積り・交付申請・契約・支給申請の順に進める
交付申請を出した日と、交付決定を受けた日は違います。 申請マニュアル9頁の物品購入契約の例では、準備段階で見積りを取り、交付決定後の事業実施期間に契約・納品・支払を行う流れが示されています。先に契約した取組は対象にできない例があるため、有料契約・購入・発注を進める前に確認してください。
- 現状を整理する:対象事業場、勤務・休暇制度、集計・承認・給与転記の困りごとをまとめます。
- 目標と見積りをそろえる:選ぶ成果目標と導入内容を結び付けます。マニュアル10頁に従い、複数の事業者から見積りを取り、納品時期も確認します。
- 交付申請する:コースの最新様式と必要書類を確認して提出し、交付決定を確認します。
- 計画に沿って導入する:契約、設定、運用変更、必要な規程の整備などを進めます。計画から変更する場合は、変更申請等が必要かを労働局に確認します。
- 成果と支払を記録し、支給申請する:誰が誰に、何の取引で、いつ、いくら払ったかを示す資料と、成果目標の達成を示す資料をそろえます。交付決定だけで最終の支給が確定するわけではありません。
2026年度の期限
労働時間短縮・年休促進支援コースの公式資料で確認した日程です。
- 交付申請:2026年11月30日17時まで。予算の都合により早期に受付を終える場合があります。
- 事業実施:交付決定の日から2027年1月31日まで。
- 支給申請:事業実施予定期間が終了した日から起算して30日後の日、または2027年2月5日の、いずれか早い日まで。
「1月末までに導入すれば、その後30日間は申請できる」とは限りません。自社の実施予定期間から逆算し、労働局の審査、機器の納期、設定、支払、書類準備を入れても間に合うかを先に確認しましょう。審査・導入に一律の所要日数があるとは案内しません。
5. 想定シナリオ:紙の勤怠と休暇の管理を見直す会社
ここからは、社員20人の架空の卸売会社が、紙の勤怠を集計して給与へ転記しているという未実施の想定シナリオです。hirostaの導入・受給実績や、個別案件の対象判定ではありません。
この会社は年休の計画的付与をまだ導入しておらず、休暇制度の見直しと勤怠システムの導入を検討している、とします。
申請前にそろえる資料と確認担当
- 経営者・労務担当:現在の就業規則、労使協定、年休管理簿を確認し、計画的付与を新規導入できる条件を満たすか、労働局や社会保険労務士に確認します。
- 勤怠担当・システム提供者:打刻、修正、承認、休暇取得、給与への受け渡しをどう扱うかを整理します。想定する画面は「日ごとの始業・終業」「修正理由と承認状態」「年休の付与・取得」「給与へ渡す確定データ」です。
- 経理担当:ソフト利用料、初期設定、機器、連携、保守を分けた見積りと納期をそろえ、対象外の費用も含めて資金を準備します。
画面に休暇の残日数が出ることだけで、成果目標の達成を判断しません。制度の整備と、システムの設定・運用の確認を分けます。勤務時間や休暇の確定は人が担当し、AIに制度の解釈や申請可否の最終判断を任せません。
助成額だけで導入予算を決めない
同コースの基本の考え方は、成果目標ごとの上限額と加算額の合計と、対象経費に補助率を掛けた額の低い方です。基本の補助率は4分の3。常時使用する労働者が30人以下で、所定の機器・ソフトウェア等の取組を行い、その所要額が30万円を超える場合は、5分の4です。
年休の計画的付与の新規導入という成果目標の上限額は25万円です。この想定会社でも、人数だけで「総費用の5分の4が戻る」と予算を組めません。対象経費と上限額、加算の有無を確認する必要があります。
導入予算は、助成金の入金を待たずに支払う費用、対象外となる費用、導入後も続く利用料・保守費に分けて考えます。支給されない場合でも必要な改善か、手元資金で進められるかを経営者が判断してください。費用や期間は、既存データの移行、勤務ルールの設定、給与連携の範囲を整理して見積りで確かめます。
6. 相談先と、業務改善の進め方
制度の対象可否・申請要件は、管轄の都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ確認します。働き方改革推進支援センターでも相談を受け付けています。手続きの委託は社会保険労務士などの専門家に相談してください。
hirostaが行うのは、勤怠・給与などの業務改善と、提供するサービスの内容・費用・導入時期の説明です。申請書や申請用の事業計画書の作成・修正、提出の代行は行いません。
Web勤怠と給与計算の自動化の事例は、AIを使わずに処理をつないだ公開事例です。助成金の受給事例や、この助成金に対応する製品の紹介ではありません。支援内容と料金はサービスページ、業務の困りごとの相談はお問い合わせをご利用ください。