1. 有効期間を確認し、5つの工程を逆算する
総務が最初に確認するのは、現在の協定の有効期間と、次の協定を始める日です。会社の決算期や前年の提出日から推測せず、締結した協定と届出の控えを事業場ごとに読みます。
準備は、次の5行に分けて追います。
- 現在の協定と実績を確認する:時間外・休日労働の実績、特別条項を使った回数と手続の記録をそろえる。
- 次の協定の内容を見直す:対象業務、必要な時間・日数、業務の減らし方を労使で検討する。
- 締結する労働者側の当事者を確認する:過半数労働組合がある場合はその組合と、ない場合は適切に選出された過半数代表者と締結する準備をする。
- 協定を締結し、届け出る:内容と様式を確認し、有効期間の開始前に所轄の労働基準監督署へ届け出る。
- 控え・受付の記録を保管し、周知する:提出した版、受付の記録、労働者が確認できる場所と周知日を残す。
厚生労働省の令和8年9月版リーフレットは、協定を締結した後、有効期間の開始前までに届け出るよう案内しています。これは以下の「準備を2か月前から始める」といった社内の目安とは別です。具体的な期限日は、担当者が実際の協定・届出方法と照合して確かめます。
同資料では、有効期間を1年とすることが望ましいとされています。自社の有効期間を読まず、一律に年度末が更新時期だと決めないでください。
2. 現在の協定と実績を照合して、内容を見直す
更新のための実績確認と、日々の上限管理は別に必要です。問題を更新時期まで放置せず、疑問が見つかった時点で担当者・社会保険労務士・労働基準監督署に確認します。
先にそろえるもの
- 現在の協定と届出の控え、有効期間、実績集計の起算日
- 対象業務・労働者の範囲と、協定で定めた時間外労働の時間・休日労働の日数など
- 同じ期間・区分で集計した時間外労働と法定休日労働の実績、元の勤怠記録への参照
- 特別条項がある場合は、使った回数・該当する月・事情、協定で定めた手続と健康福祉確保措置の実施記録
会社が「残業」と呼ぶ時間の合計だけでは、協定との照合ができない場合があります。所定時間を超えた時間と法定時間外労働、法定休日とそれ以外の休日を混ぜていないか、担当者が集計条件を確認します。個人別の照合は、権限のある担当者が社内の記録で行ってください。
年度途中の準備では、確認日までの実績と、残りの期間の見込みを別に置きます。未確定の月をゼロや実績として扱わず、締結前にも直近の状況を確認します。
前年と同じ内容でよいかを検討する
現場責任者と、繁忙の理由、業務量、人員配置、時間外・休日労働を減らす方法を整理します。対象業務や人数が変わっていないか、特別条項を使った事情が繰り返されていないかも確認します。
厚生労働省の上限規制の解説では、法定の上限を超える時間を協定することはできず、特別条項は臨時的な特別の事情があり労使が合意する場合の仕組みとされています。過去の実績が多かったという理由だけで、次の上限を引き上げる判断はしません。
ここでは上限時間の数値や、自社が特別条項を使えるかは確定しません。適用される事業・業務や労働時間制度を含め、公式資料と専門家に確認した上で内容を検討してください。
勤怠の集計方法自体を見直す場合は、Excelの改善・専用システム・個別構築の比較を参照できます。助成金の成果目標としての見直しは、働き方改革推進支援助成金の記事で分けて説明しています。
3. 代表者の選出と、協定の締結を別々に記録する
事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は、その組合が締結当事者です。ない場合は、過半数代表者を選出します。「昨年と同じ人だから」「親睦会の幹事だから」で自動的に決めません。
厚生労働省の選出手続の解説に沿って、少なくとも次を確かめます。
- 36協定を締結するための代表者を選ぶことを明らかにする。
- パート・アルバイトを含むすべての労働者が手続に参加できるようにする。
- 投票・挙手など、過半数の支持が明確になる民主的な手続を取る。
- 労働基準法上の管理監督者を代表者にせず、会社の指名など使用者の意向で選ばない。
選出方法・選出日と、その根拠となる記録を残します。その後、労使が内容を確認して協定を締結し、締結日を記録します。選出済み・締結済み・届出済みは別の状態として扱います。選出の適否に疑問があれば、届出の前に専門家や所轄署へ確認してください。
4. 届出方法を決め、控えと周知まで確認する
36協定は事業場ごとに締結し、原則として事業場の所在地を管轄する労働基準監督署へ届け出ます。様式は前年のファイルだけを頼りにせず、労働局の様式案内から、自社の事業・業務や特別条項の有無に合うものを確認します。
届出には電子申請も利用できます。厚生労働省の電子申請案内で、e-Govや電子申請様式作成支援ツールの手順・注意事項を確認し、利用環境と担当者を早めに準備します。郵送なら到着までの時間や控えの返送方法も確認しましょう。
本社一括届出には、届出方法ごとに協定内容・様式などの条件があります。令和7年3月28日の厚生労働省通達を確認し、自社で利用できるかを所轄署へ確かめてください。一括で届け出るためだけに、事業場の実態に合わない時間数へそろえないようにします。
「送った」で完了にしない
hirostaの提案は、締結した協定、提出した届出の控え、受付を確かめられる記録を事業場・有効期間と結び付けて保管することです。送信・発送の記録と、受付を確認できる記録は分けます。電子申請で補正等の連絡があれば担当者が内容を確認し、対応状況も残します。
届出後は、常時各作業場の見やすい場所に備え付ける、書面を交付するなどの方法で労働者に周知する必要があります。確認表には周知日・方法・掲載先を残し、対象の労働者が新しい協定を確認できるか確かめます。
間に合わないおそれや期間の空白に気付いた場合は、届出を準備しているだけで時間外・休日労働をさせてよいと判断せず、勤務の扱いを担当者・専門家・所轄署へ直ちに確認してください。
5. hirostaの提案:事業場ごとの確認表で逆算する
次は進行管理のための提案であり、法定の帳票や必須項目を示すものではありません。横に長い表が扱いにくければ、事業場ごとのシートに分けても構いません。
| 追う工程 | 確認表に置く項目 |
|---|---|
| 対象と期間 | 事業場、現在の有効期間、次の協定の開始日、担当 |
| 実績確認 | 実績の確認日、集計対象期間、時間外・休日労働と特別条項の使用状況の参照先 |
| 内容の見直し | 変更点、確認先、未確定事項、確認予定日 |
| 代表者・締結 | 代表者の選出方法と日付、選出記録の保管先、締結日。過半数労働組合と締結する場合は組合名と要件の確認記録 |
| 届出 | 届出日、届出方法、届出先、提出した版の保管先、受付の記録、補正等の対応状況 |
| 周知 | 周知日、方法、掲載先・配付先、確認者 |
各工程に「予定・確認待ち・完了」を付け、完了は担当者が根拠の記録を見て更新します。届出日を入力しただけで、受付確認や周知まで完了にしないことが要点です。
想定シナリオ:架空の卸売会社で準備するなら
架空の卸売会社にある「本店」と「東営業所」を、それぞれ別の事業場として確認済みとした想定です。以下は、各事業場の次の協定の開始日から逆算した準備時期の想定です。法令上の期限や標準処理期間ではありません。
| 準備時期の想定 | 進めること |
|---|---|
| 開始の2か月前ごろ | 各事業場の有効期間と次の開始日を確認。現在の協定、確認日までの実績、特別条項の使用記録を集める |
| 開始の1か月半前ごろ | 現場と内容を見直し、不明点を専門家・所轄署へ確認する |
| 開始の1か月前ごろ | 代表者の選出手続を行う、または過半数労働組合と協議する。内容がまとまったら締結する |
| 開始の2〜3週間前ごろ | 締結後に届け出る社内目標を置き、提出内容・受付の状況・補正等を確認する |
| 届出後、開始前までを社内目標に | 控えと受付の記録を整理し、労働者へ周知する。未完了項目を担当者が確認する |
本店は実績確認済みでも、東営業所の代表者選出が未確認なら、その工程を「確認待ち」に残します。本店の進捗をコピーして会社全体を完了扱いにしません。郵送の日数、労使の協議、補正等を見込み、自社の状況に応じて準備を前倒しします。
6. AIは確認表の下書き・集計の補助・抜けの洗い出しまで
AIを使うなら、確認表の列の下書き、集計方法の整理、確認項目の抜けの洗い出しに限ります。日付や数値の集計は、担当者が確かめた条件を表計算や勤怠システムに設定して行い、元記録と照合します。AIの出力で実績や完了状態を自動確定しません。
従業員個人ごとの労働時間・健康情報や実際の協定書を、そのままAIへ入力しないでください。氏名を消すだけでは個人を推測できる場合があります。まずは個人情報・非公開情報を含まない項目名と架空の例を使います。
下書きを頼む場合の想定例です。
36協定の更新準備を事業場ごとに追う確認表の項目案を作ってください。実績確認、内容の見直し、代表者の選出、締結と届出、控えと周知を分けてください。各工程に担当・予定・確認待ち・完了と記録の保管先を置きます。協定の要否、上限時間、特別条項の可否、代表者選出の適否、期限日は判定せず、人の確認欄として残してください。
協定の要否・上限時間・特別条項の可否・過半数代表者の選出の適否・期限日を、AIに確定させないことが前提です。担当者が公式資料と実際の協定を照合し、迷う事項は社会保険労務士や労働基準監督署に確認します。
集計や期限の一覧をどこで管理するかは、勤怠・給与・期限管理の支援で扱う業務改善の相談につながります。支援範囲や費用はサービス案内、現在の確認表や引き継ぎのご相談はお問い合わせをご覧ください。