需要予測は、売上目標や現在の在庫とは違う
中小機構の解説では、需要予測システムは過去の実績や関連データから将来の需要を予測し、計画立案を支援するものとされています。
ただし、「来月売りたい数量」「今ある数量」「来月売れると見込む数量」は別です。目標に合わせて予測値を増やしたり、今ある在庫だけで需要を判断したりすると、仕入れや生産の判断に使う前提が分からなくなります。
以下の準備と判断条件は、hirostaの提案です。特定製品の操作手順ではなく、製品選定や相談の前に担当者と整理するためのものです。
1. 何を、どの期間で予測するか決める
最初に、予測で変えたい判断を一つ選びます。「全商品の売上を予測する」より、「毎週の部品発注で、次の入荷までに必要になる数量を考える」のように、使う場面から絞ると整理しやすくなります。
| 決めること | 確認する内容 |
|---|---|
| 対象 | 品目別か商品群別か。拠点や販売経路を分けるか |
| 予測する数量 | 受注・出荷・販売のどれか。個・箱などの単位 |
| 予測の先と区切り | 何週間先までを、日別・週別・月別のどれで見るか |
| 判断の時点 | 発注や生産計画をいつ決めるか。納入まで何日かかるか |
| 困っていること | 欠品、余剰、廃棄、集計の負担のうち何を見直すか |
| 判断する人 | 営業・購買・生産の確認担当と、発注の承認者 |
例えば、納入まで時間がかかる材料では、来週の予測だけでは今回の発注に間に合わない場合があります。逆に、個別仕様の単発受注では、過去の平均より確定注文や営業への確認を優先する場面があります。
2. 出荷実績だけで、需要が分かったとしない
同じ品目コードでも入り数や単位が変わっていれば、そのまま合計できません。品目・単位・日付の意味をそろえ、元の記録へ戻れる状態にします。次の一覧は、すべてを必須にするものではなく、対象業務に応じて確認する項目です。
| 記録 | 確かめる点 | 不明な場合の扱い |
|---|---|---|
| 受注と出荷 | 注文日・希望納期・出荷日、取消・返品をどう数えたか | どの数量か確認するまで混ぜない |
| 品目と単位 | 品目コード、改番、箱の入り数、代替品の扱い | 換算できない行を分ける |
| 欠品・休業 | 売れなかったのか、売れる状態になかったのか | 未記録を販売ゼロと決めない |
| 特売・大口案件 | 通常販売と、臨時の増加を区別できるか | 増加の理由を担当者へ確認する |
| 在庫・入荷予定 | 確認日時、引当済み数量、入荷予定と確定の違い | 発注量を決める前に確認する |
| 供給条件 | 納期、最小発注量、生産能力、保管期限 | 予測とは別に購買・生産が判断する |
欠品中の出荷がゼロでも、注文したかった人がいなかったとは限りません。 反対に、一度だけの大口注文を通常の需要として引き延ばすのも危険です。失注や欠品の記録がない場合は、その限界を残し、AIに本来の需要を推測で埋めさせません。
同じ条件の集計や換算は、まず既存ソフトや表計算で処理します。AIを使うなら、許可された範囲の備考から「欠品」「臨時注文」などの確認候補を整理する補助にとどめ、担当者が元の記録と照らします。入力できるデータは、顧客情報をAIへ渡す前の確認に沿って決めます。
3. 今の方法と、同じ時点・期間で比べる
導入前に、比較の相手を決めます。担当者の現在の見込み、直近の平均、前年の同じ時期など、自社の業務に合う方法です。季節性や品目の入れ替えによって、どの方法が参考になるかも変わります。
過去の期間で比べるときは、その時点で分かっていた情報だけで予測し、後から分かった実績と比較します。後日確定した注文や実績を入力へ混ぜると、当時できた予測との比較になりません。モデルの調整に使う期間と、評価に残す期間も分けます。
- 数量の差:品目・期間ごとに予測と実績の差を並べ、多すぎた側と少なすぎた側を分けます。合計だけで相殺させません。
- 発注への影響:不足した場合の納期遅れ、余った場合の保管・廃棄など、どちらの誤りを重く見るかを決めます。
- 確認の負担:データ準備、例外の確認、修正と承認にかかる手間も比べます。
- 適用を止める条件:記録不足、新商品、供給停止など、比較した条件から外れる場面を決めます。
必要な過去データの長さや許容できる誤差は、一律に「何か月」「何%」とは決めません。季節の一巡を比較できるか、注文がまばらな品目をどう扱うか、外した場合の損失を担当者と確認します。条件をそろえられなければ、導入を決めず記録の整備へ戻ります。
文章を作る生成AIの説明が自然でも、数量予測の妥当性を確認したことにはなりません。数量の予測方法と、理由・確認事項を文章にまとめる役割を分けて選びます。
想定シナリオ:部品卸が毎週の発注を見直すなら
架空の部品卸が、継続販売する部品Aの週次発注を見直す未実施の例です。毎週金曜に判断し、通常は発注から入荷まで2週間かかる設定にします。予測するのは次の2週間の需要ですが、入荷後から次の補充までに必要な在庫も別途確認します。
まず担当者が並べて見る表を作る
画面や確認表には、品目ごとに次の欄を設ける案です。予測値と発注量を同じ欄にしません。
| 欄 | 部品Aで確認すること |
|---|---|
| 対象期間・基準日時 | どの金曜時点で、いつからいつまでを見たか |
| 実績と例外 | 受注・出荷の数量、欠品日、今回限りの大口注文 |
| 今の方法と新しい予測 | 同じ期間の数量を並べ、差が出た理由の確認先を残す |
| 在庫・入荷・確定注文 | 引当済み分を二重に数えず、使える数量と約束済みの数量を確認する |
| 判断と承認 | 発注案・保留、理由、確認者、承認者、判断日 |
例えば前週に欠品があり、その期間の失注数も不明なら、出荷の減少だけを理由に発注を減らしません。営業が問い合わせや受注残を確認し、購買が入荷予定を確認します。未確認の間は「欠品の影響が不明」として、予測の採用を保留します。
発注は、予測に供給条件を加えて人が決める
発注案を考える際は、対象期間の需要見込みに、使える在庫、確定した入荷、必要な余裕を組み合わせます。確定注文を需要見込みに含めたかどうかも明示し、重ねて足さないようにします。安全在庫の水準、最小発注量、保管場所、仕入代金を払える時期は人が確認します。
承認後に別の担当者が同じ案を発注しないよう、対象期間・品目・版と、実際の発注番号を対応させます。予測を更新しても、処理済みの発注を自動で出し直しません。
資金面の確認は売上予算と資金繰り表の違い、現在の在庫数量が合わないときは棚卸差異の確認手順へ進んでください。
他社の試行結果は、何を確かめた数字か読む
NTTデータの2026年10月28日の発表では、大手消費財メーカーとの先行PoCと、通年シミュレーションによる在庫金額の削減余地が紹介されています。発表時点では本番化を決定し、これから本番実装を進める段階です。実運用で在庫金額を削減済みという報告とは区別して読みます。
導入相談では、似た数字を自社の目標へ写すより、「対象商品と期間は何か」「実際の運用か、過去データによる比較か」「欠品や確認の負担も見たか」を質問します。大手企業の条件や導入工程を、そのまま小さな製造・卸へ当てはめる必要はありません。
費用と期間は、データ整備から分けて見積もる
中小機構の特集も、導入目的や商品との相性、詳細な過去データ、導入・利用費、予測が外れる場合への対応を確認点に挙げています。
見積もりでは、①データの取り出し・整理、②予測方法の比較、③確認画面や既存ソフトとの連携、④継続利用料・保守、⑤社内の確認時間を分けることを提案します。既存ソフトの集計で足りる部分と、新しく作る部分も区別します。
期間を左右するのは、記録の欠け、品目・単位の対応、季節性を評価できる範囲、発注を見直す周期、担当者が確認できる日程です。最初は対象を絞り、確認表を作れるか → 比較できるか → 人が判断に使えるかの順で、次へ進む条件を決めましょう。
相談時は、今の発注方法、使っている販売・在庫のソフト、取り出せる項目、困っている品目を分かる範囲で整理すれば十分です。hirostaのサービス・料金で支援範囲を確認し、無料相談では、予測モデルを選ぶ前のデータ整理や確認の負担からご相談いただけます。