1. まず、所在地と賃上げの条件を確認する

業務改善助成金は、設備だけを購入するための制度ではありません。事業場内で最も低い時間当たりの賃金を引き上げ、そのための環境を設備投資等で整える制度です。従業員がいない事業者は対象になりません。

2026年度は、次の順に確認します。これは主な条件の整理で、すべての交付要件を網羅するものではありません。

  1. 所在地の受付状況:申請期間は2026年9月1日から、適用される地域別最低賃金の発効日前日または11月30日の早い方までです。厚生労働省の公式ページから所在地の期限と窓口を確認します。終了していれば、今年度分をこれから申請できる前提で契約しません。
  2. 事業者と事業場:業種別の資本金または労働者数などの中小企業要件を確認します。申請・審査は事業場単位です。会社全体の平均賃金だけでは判断できません。
  3. 引上げ前の賃金:事業場内最低賃金が、令和7年度の地域別最低賃金以上、令和8年度の地域別最低賃金未満であることが対象条件です。申請時点ですでに改定後の額以上なら申請できず、現在の最低賃金を下回っている場合も対象になりません。
  4. 対象者と引上げ額:雇入れ後6か月を経過した雇用保険被保険者の賃金を基に確認し、50円・70円・90円の各コースの引上げ額を満たす計画を立てます。人数の数え方と、ほかの従業員への賃上げの必要性も確認します。

最低賃金の計算に含まれない手当もあるため、給与総額を勤務時間で割るだけでは足りません。賃金台帳・雇用条件・所定労働時間をそろえ、担当者や社会保険労務士と確認してください。労働保険、解雇・賃金引下げ、法令違反などの不交付要件もあります。

助成金を使わない場合も、最低賃金への対応は必要です。 申請や交付決定を待つために、法令上必要な賃上げを遅らせないでください。

2. 勤怠システム・AIの費用をどう分けるか

交付要領の経費区分には、システム開発会社等への委託費用が含まれます。ただし、製品名や「AI対応」という説明ではなく、申請事業場のどの作業を、どの機能で改善するかが必要です。法令で義務づけられたものの整備や、通常の事業活動の経費など、対象外の費用もあります。

見積りは、次のように内容を分けて労働局へ確認します。表は確認項目の提案であり、個別経費の承認を示すものではありません。

見積りの項目 確認すること
勤怠集計や業務システムの開発・設定 転記・照合などの現状と、改善する機能・範囲を説明できるか
AIの読み取り・分類機能 入出力、対象業務、人の確認を明示できるか。必要な機能と経費が対象に当たるか
ライセンス・保守・利用料 契約期間、支払年度、対象期間を区別できるか。汎用AIの利用料を一律に対象としない
パソコン・タブレット 原則対象外。特定業務専用のシステム用などの扱いや、物価高騰等要件による新規導入の特例に該当するか
研修・相談・伴走支援 内容、実施者の要件、経費区分を確認できるか。導入費と一括にしない

ライセンス・保守契約等には支出する年度や期間の制約があります。年額払いならすべて対象になると判断せず、契約案と支払い予定を提示してください。既存契約の更新費用も、対象と決めつけないでください。

AIで給与や助成対象を自動確定する必要はありません。計算条件が決まる部分は通常のシステムで処理し、打刻漏れや例外勤務を人が確認する形も検討できます。業務の選び方は勤怠管理の自動化、研修費はAI研修の助成金記事で分けて考えられます。

3. 賃上げと設備発注では、実施できる時期が違う

設備は交付決定後、賃上げは交付申請後から所定の期限までという違いがあります。「申請を出したので、全部進めてよい」「交付決定まで賃上げも待つ」というまとめ方は避けてください。

  1. 申請前に準備する:賃上げと業務改善の計画、見積り、賃金台帳などをそろえます。見積りは原則として二者以上から取り、同じ機能・条件で比較します。取れない事情があれば先に労働局へ確認します。
  2. 期限内に交付申請する:必要書類一式を提出します。不備で返戻されると期限に間に合わないおそれがあるため、余裕を持って準備します。
  3. 賃上げを計画に沿って実施する:2026年度は交付申請後から、その地域の令和8年度地域別最低賃金の発効日前日までに実施する扱いです。就業規則等への規定と適用日も確認します。設備の交付決定待ちとは分けて日程を管理してください。
  4. 交付決定を確認して設備を発注する:設備投資等は交付決定後に発注・契約・導入・支払いを行います。申請マニュアルは、発注を含む事前着手を認めていません。先に発注して納品だけを遅らせる進め方はできません。
  5. 実施結果を報告する:賃上げと導入・支払いの証拠をそろえ、事業実績報告・支給申請を行います。仕様、費用、人数、納期等が変わりそうなら、変更する前に労働局へ相談します。

電子申請はJグランツを利用でき、GビズIDプライムが必要です。申請者自身が内容と提出結果を確認します。交付決定と、実績報告後の支給を混同せず、予定した額が必ず受け取れる前提にはしないでください。

4. 費用と納期は、助成額より先に確認する

助成額は、対象経費に助成率を掛けた額と、賃上げ額・人数などに応じた上限額の低い方です。上限額が、そのまま受け取れる額ではありません。対象経費には税抜10万円の下限もあります。

資金計画では、少なくとも次を分けてください。

  • 導入・設定・利用料など、入金前に支払う費用の全額
  • 助成対象外の費用と、導入後も続く利用・保守費
  • 賃上げによって継続的に増える人件費
  • 担当者による確認、運用の習得に必要な時間

2026年度の事業完了期限は原則2027年1月31日で、納品・支払完了・賃上げのすべてを終える必要があります。賃上げには前節の、より早い実施期限もあります。カード払いは購入日と引落日が異なるため、支払完了日を確認してください。やむを得ない理由による期限延長は労働局の判断が必要で、自動的に3月末まで延びるものではありません。

開発期間や審査期間を一律に見込まず、事業者に納期を確認し、余裕がなければ今回の利用を前提にしない判断も必要です。同じ費用や賃上げについて他制度を利用する場合は、併給調整も確認します。別制度との比較はAI導入の補助金記事へどうぞ。

5. 想定シナリオ:勤怠の転記を減らしたい会社

以下は架空の会社での検討例です。hirostaやお客様の助成金利用、導入・検証の実績ではなく、対象経費の認定や効果を示すものでもありません。

紙の打刻記録を表計算に転記している会社が、勤怠システムと、例外の確認を助けるAI機能を検討するとします。最初に所在地の受付・賃金・対象者を確認し、間に合わない場合は助成金を前提とする計画を止めます。

受付と条件を確認できたら、次に打刻の収集、時間の集計、例外の確認、給与への受け渡しに作業を分けます。システムには打刻記録と修正履歴を残し、画面では「元の記録」「集計結果」「確認が必要な理由」を並べる設計を検討します。AIを使うとしても、自由記述の申告を整理するなどの補助にとどめ、勤務実績や賃金を推測で確定させません。

担当者は打刻漏れ・休憩・例外勤務を確認し、責任者が給与への受け渡しを承認します。AIに渡す情報と利用条件も、先に社内で決めます。見積りは基本機能、AI機能、初期設定、利用・保守費、端末に分け、AIなしでも必要な作業が進む案と比較します。

費用だけでなく、締め日までの確認担当と運用手順を決めてから導入を判断します。Web勤怠と給与計算の導入事例は、AIを使わず計算を自動化した例です。この事例は、助成金の利用や対象認定を示すものではありません。

6. 相談先と、相談前にそろえるもの

個別の申請可否・経費・期限は、厚生労働省の公式ページにある窓口から、事業場を管轄する労働局へ確認してください。相談には次の情報をそろえると、確認する点を具体化できます。

  • 事業場の所在地、業種、規模と申請を考えている時期
  • 現在の賃金、対象者の雇用条件、引上げ額と適用予定日
  • 現在の作業、困りごと、導入する機能と改善の見込み
  • 見積りの内訳、契約案、納品・支払予定、他制度の利用予定

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