1. 「受け放題の契約」と「助成対象の受講」は別に確かめる

定額制訓練でいうサービスは、1訓練ごとの対象経費が明確ではなく、同じ料金で複数の訓練を受けられるeラーニングや同時双方向型の通信訓練です。eラーニングでは、LMS(学習管理システム)などで進捗を管理できることも確認します。月額料金というだけで、この区分に当たるとは判断できません。

そのうえで、通常業務の作業とは区別したOFF-JTであり、教育訓練機関に委託する事業外訓練であることが必要です。事業者のホームページで、計画届の提出時点に講座の概要・連絡先・申込みや資料請求の案内が公開されているかも確かめます。

「AI・DX向け」「助成金対応」という名称だけで決めず、次の3つを分けて確認しましょう。

確認の単位 確かめること
サービス・契約 定額制の仕組み、全講座の構成、期間、人数区分、費用
講座と社員の職務 その社員の職務に関連する専門的な知識・技能を学ぶ内容か
社員ごとの受講 対象講座の修了、標準学習時間の合計、労働時間内の実施、記録

AI研修全般の対象・対象外や、事業主・雇用保険被保険者などの前提、計画届の準備は、AI研修と助成金の記事を参照してください。ここでは定額制に特有の契約と受講管理に絞ります。

2. 10時間要件は、社員ごとの「修了した標準学習時間」

支給申請時に、社員ごとに修了した対象訓練の標準学習時間が合計10時間以上あるかを確認します。標準学習時間は講座に定められた学習時間であり、単なるログイン時間や動画を開いていた時間とは分けて扱います。

  • サービスに収録された全講座の合計が10時間以上でも、その社員が修了していなければ足りません。
  • 複数の対象講座を修了して合計することはできますが、社員同士の時間は合算しません。
  • 未修了の講座や職務関連教育訓練に当たらない講座の時間は、10時間を満たすために足しません。
  • 業務命令として労働時間内に行う訓練を計画します。勤務外に自発的に受けた分を、その10時間に計上しません。

人事担当者は、受講予定と勤務予定を照合し、訓練中の賃金を適正に支払えるよう調整します。LMS上で修了していても、労働時間内に実施したことまで示せるとは限りません。出勤簿・賃金台帳などと突き合わせられる形で残しましょう。

想定シナリオ:3人で合計30時間なら足りる?

架空の「みどり商事」が、職務に関連する対象講座を3人に受講させたとします。労働時間内に修了した講座の標準学習時間が、Aさん12時間、Bさん8時間、Cさん10時間の場合、合計は30時間です。しかし、Bさんは10時間要件を満たしません。

Bさんが別に趣味の講座を2時間修了していても、その分は加えません。担当職務に合う対象講座の修了計画を見直す必要があります。Aさん・Cさんについても、他の要件や経費の審査があるため、支給が確定する例ではありません。

3. 対象外の講座・期間の重複・費用を契約前に確認する

全講座の構成と、社員が受ける講座を分ける

対象外の講座を含むサービスは、講座数の構成も確認します。支給要領の06013では、全講座数に占める対象外講座の割合が5割以上の場合は対象外とされています。時間の割合や、社員が選んだ講座だけの割合ではありません。

研修事業者から全講座の一覧と分類の根拠を入手し、対象外講座の数を確認します。対象外がちょうど半分の場合も、この支給要領の対象外条件に当たります。講座の分類や追加・削除の扱いが分からなければ、一覧を用意して労働局に確かめてください。サービスの構成を満たしていても、社員ごとの10時間には職務に関連する対象講座だけを計上します。

更新・乗換えでは、契約期間を並べる

同一の事業所について、同じ内容の定額制サービスで別途助成を受けようとする契約がある場合、一部でも期間が重なれば、その重複期間は原則として対象と認められません。旧契約・新契約の開始日と終了日、内容、申請状況を並べ、更新や乗換えで重複していないか確認します。

訓練の実施期間は原則として契約期間で、1年以内です。1年を超える契約は1年ごとの申請と要件確認が必要になるため、契約全体で一度10時間を満たせばよいと考えないでください。自動更新・既契約の扱いは、詳細版p.21と支給要領で確認します。

法人全体の一括契約を、事業所ごとに重ねて申請しないことも大切です。複数事業所の契約は、原則として利用する被保険者が最も多い主たる適用事業所の所在地の労働局に、他の事業所分を含めて手続きします。申請担当を一本化し、同じ契約への二重申請を防ぎます。

見積りの総額を、そのまま対象経費にしない

経理担当者と研修事業者で、基本料金・人数区分・オプションを分け、次を確認します。

  1. 対象外講座を分けて契約できるか:区分して契約できる場合、対象外講座の経費部分は対象になりません。
  2. 人数に合う料金か:対象者一覧の人数を超える高額区分の差額や、合理的な理由なく安価な契約方法を超えて支払う差額は対象になりません。
  3. 訓練に直接必要なオプションか:詳細版p.20では初期設定費用・アカウント料などと、対象外のタブレットレンタル・LMS入力代行などを分けています。名称だけで決めず、内容と根拠を確認します。
  4. 契約者と助成対象者が一致するか:全利用者が助成対象になるとは限りません。人数や対象期間を反映した算定が必要で、対象者が途中で変わる場合も確認します。

見積書・契約書・請求書・支払いの証拠を対応させ、事業主が負担する費用を確認します。助成金の入金を前提に支払うのではなく、支給されない場合も含めた資金と受講計画を社内で判断してください。

4. LMSに残す記録と、提出する書類は分ける

契約前に、社員別の講座名・標準学習時間・修了日・受講開始終了日時・受講時間数・進捗率などを保存・出力できるか確認します。契約終了後に閲覧できなくなるサービスなら、いつ誰が出力して保管するかも決めます。これは受講管理の準備であり、LMSの画面だけを提出すればよいという意味ではありません。

4月8日の改正資料と現行の詳細版p.51〜53では、定額制訓練について次の扱いを示しています。

区分 主な内容
支給申請で提出する受講関係の資料 定額制サービスによる訓練実施結果報告書(様式第8-5号)と、教育訓練機関が発行する10時間以上の修了を証明する一覧表
様式第8-5号の提出人数 対象労働者10人以上なら任意の10人分、10人未満なら全員分
事業所で整備・保管する資料 提出する10人以外の報告書、修了証、LMS情報など。労働局から追加提出を求められる場合がある
実施と支払いを裏付ける記録 出勤簿・賃金台帳・必要に応じたパソコンのログイン/ログアウト記録など。労働時間内の実施と賃金支払いを確認できるようにする

教育訓練機関の一覧表は雇用保険適用事業所ごとに作成し、事業所名、訓練コース名、対象者氏名、標準学習時間10時間以上を修了した日、機関による証明の記載が必要です。社内で合計した表で代わると考えず、発行の可否・必要情報・発行時期を事前に確認しましょう。

この表は申請書類の全件一覧ではありません。経費助成の内訳(様式第6-3号)、支払いの証拠、価格設定の疎明書(様式第28号)なども、最新の提出案内で確認します。修了証やLMS情報の写しが通常の提出から外れたことは、記録を残さなくてよいという意味ではありません。

5. 4月8日と8月3日の改正を混同しない

2026年4月8日の改正では、定額制訓練の10時間要件を社員ごとに確認する扱いと、受講関係書類の提出方法の見直しが示されました。古い案内の「1時間以上受けた社員を含める」扱いを、そのまま使わないでください。

一方、8月3日の改正リーフレットは事業展開等リスキリング支援コースの案内です。同コースのeラーニングの受講回数制限を、人への投資促進コースの定額制訓練に一律に当てはめません。8月改正の内容や一般的なAI研修の対象可否は、既存記事の説明を参照し、利用するコースに対応する資料で確認します。

6. 契約開始日を決める前に、人が確かめる順番

  1. 研修担当者がサービスを確認する:定額制の仕組み、公開されている募集情報、契約期間、全講座の構成、費用の内訳を事業者に確認します。
  2. 部門責任者が講座を選ぶ:社員の担当職務と学習内容を照合し、対象外講座を除きます。対象可否が曖昧な講座は労働局に確認します。
  3. 人事担当者が社員ごとの計画を組む:修了予定の講座と標準学習時間、労働時間内の受講枠、賃金支払い、契約期間内の修了予定を確認します。
  4. 申請担当者が記録の残し方を決める:LMSの出力、全対象者分の記録、教育訓練機関の証明一覧、提出様式の担当と準備時期を決めます。
  5. 責任者が管轄の労働局に確認する:契約書案・講座一覧・社員別計画・記録の出力例を用意し、対象可否と期限、適用様式を確認したうえで契約を判断します。

定額制の計画届は、原則として契約期間の初日の1か月前までです。既契約や期限を過ぎた場合には一部期間が対象になり得る扱いもありますが、全期間が対象になる前提で契約を進めないでください。契約開始日から逆算して、厚生労働省の公式ページと問い合わせ先で確認しましょう。

人への投資促進コースは令和8年度までの時限措置として案内されています。2027年度の継続や同じ条件を前提に長期契約せず、次年度の公表内容を確認してください。

研修の修了と、実務でAIを任せられるかの判断も別です。研修後の学び方は社員のAI習熟度の記事、ツール導入費の検討はAI導入の補助金の記事で整理しています。hirostaへの相談範囲は、制度の情報提供・業務改善計画の整理・サービス説明です。研修の助成対象可否や支給の保証、申請代行は行いません。