1. 育成のために把握することを、先に伝える

始める前に、育成担当者と現場責任者で「次に学ぶことと必要な支援を決めるための確認」と目的をそろえ、本人にも伝えます。今回の記録は人事評価の点数や処遇・採否の判断に転用せず、AIや数値で個人の評価を決める仕組みにしないことを提案します。育成記録を見る人は、本人と支援に必要な担当者に絞ります。

参考になる他社の取り組みとして、みずほフィナンシャルグループの公式記事は、AIレベル指標を個人の評価ではなく、次の学習・実践・支援につなげるためのものと説明しています。これは大企業による自社の取り組みの紹介であり、hirostaの実績でも、中小企業へそのまま適用できる指標でもありません。

以下の業務ごとの整理と手順は、hirostaの提案です。出典の段階・項目を移したものではなく、効果が検証された尺度でもありません。

2. 社員全体のレベルではなく、対象の作業を決める

「AIが得意か」ではなく、「公開の商品案内から変更点を下書きし、元資料と照合できるか」のように、入力・作業・完成物が分かる単位にします。同じ社員でも、要約と表の照合では支援が必要な箇所が違うためです。

確認する作業では、使ってよいツールと情報、人が確認する範囲を先に決めます。練習には公開情報を使い、顧客情報や社員の評価資料は使いません。ツールや入力情報の実態が分からないときは、社員のAI利用を把握する手順で棚卸しを先に行います。

作業をまだ試していない人は「未確認」とします。機会がなかったことを、できないという判断に置き換えません。

3. 本人の説明と作業過程から、任せられる範囲を確認する

本人に困っている点を聞き、対象の作業を進める様子と、下書き・確認・修正の過程を一緒に確かめます。完成物が整っているだけで、習熟したと判断しないようにしましょう。

  • 入力前:使ってよい情報か判断でき、不明なら相談できるか。
  • 依頼するとき:必要な出力と、守る条件を説明できるか。
  • 結果を受け取ったとき:元資料と照合し、誤りや不足に気付いて直せるか。
  • 判断できないとき:AIの回答をそのまま採用せず、作業を止めて確認を頼めるか。

担当者がどこで手助けしたかも残し、作業単位で次のように整理することを提案します。社員を固定した段階に当てはめたり、合計点を出したりするための分類ではありません。

  • できる作業:合意した条件で、入力の判断から結果の照合・修正まで進められる。通常の業務で必要な承認は引き続き受ける。
  • 支援があればできる作業:依頼文の準備や照合など、特定の箇所を誰かと確認すれば進められる。支援する箇所と人を明記する。
  • まだ任せない作業:必要な確認を一人では行えず、支援の準備も整っていない。その作業を任せず、先に練習する内容や相談先を決める。

判断が分かれる場合は、その理由と未確認の部分を残します。本人の認識と担当者の見立てを照らし合わせ、確認していない仕事までできる・できないと広げないようにします。

4. 利用回数は、支援が必要な背景を聞く材料にとどめる

利用回数やログイン回数だけでは、どんな仕事で使い、どこを人が修正したかは分かりません。利用が少なくても対象の仕事がなかった場合があり、多くても回答を直すために繰り返していた可能性があります。回数の多さを能力の高さ、少なさを意欲の低さと結び付けないことを提案します。

回数を見るなら、「使う機会があったか」「使えない条件や困りごとがあったか」を本人に聞くきっかけにとどめます。利用ログを扱う場合も、育成支援という目的を本人に伝え、対象の作業と期間に必要な範囲へ絞ります。会話の全文を広く集めることを前提にせず、作業過程の確認と聞き取りで足りる範囲から始めましょう。

5. 次に学ぶこと・支援する人・見直す時点を決める

把握の結果は、作業名、使える条件、できたこと、支援が必要な箇所、次の練習、支援する人、見直す時点として短く残します。「もっとAIを使う」ではなく、「要約に抜けがないか、元資料の見出しと照合する」のように、次の行動へ落とし込みます。

想定シナリオ:変更点の下書きと確認を分けて把握する

以下は、架空の卸売会社と社員の、未実施の想定シナリオです。研修や育成の効果・実績を示すものではありません。

社員の佐藤さんが、公開の商品案内から変更点を下書きする作業を、育成担当者と確認するとします。佐藤さんは目的と出力形式をAIに伝えられますが、旧版にだけ載っている項目の見落としは、営業責任者に指摘されて気付くという設定です。

この場合、変更点を整理する作業は「支援があればできる」とし、営業責任者と旧版・新版を照合する支援を付けます。次に学ぶことは、両方の見出しを照らして抜けを確認する手順です。確認なしで顧客向けの案内を確定する作業は、まだ任せません。別の作業も得意・不得意だと推測したり、利用回数を増やす目標へ置き換えたりしません。

見直す時点は、次の商品案内の改訂時と決めます。同じ確認手順を本人が進められるか、どこに支援が残るかを確かめ、任せる範囲と練習内容を更新します。ツールや作業の条件が変わったときも、以前の判断をそのまま使わず、必要な箇所を見直しましょう。

練習を実務で試す課題の選び方、試行の条件、振り返りと共有は、AI研修のあと、一つの実務で試す手順で扱っています。導入全体の役割と工程は、AI担当者がいない会社の導入準備と進め方をご覧ください。