1. 試したこと:集計の前に、確認する理由を残す
表に数値が並んでいても、空欄や日付、単位の意味がそろわなければ、そのまま比べられません。今回は合計を作る前の工程として、AIに確認理由と質問を整理させました。
表計算の自動化の選び方は方法の比較、グラフの検証ラボは作った図と元表の照合を扱っています。今回は集計へ渡す前の元表の状態に絞ります。在庫の増減や帳簿への調整は扱いません。
単純な空欄や日付の判定のためだけに、AIが必要とは限りません。この試作では、仮ルールをAIに渡したとき、理由と質問をどう残せるかを試しました。関数やコードとの精度・速度の比較ではありません。
2. 作り方の要点:空欄・日付・単位のルールを先に決める
架空の入力8行
題材は「サンプル事務室」の、1回当たりの作業時間です。作業名・数値・日付はすべて架空です。表の「空欄」は入力がないことを示しています。
| 元番号 | 架空の作業 | 値 | 単位 | 確認日 |
|---|---|---|---|---|
| R01 | 資料整理A | 2 | 時間 | 2026-10-18 |
| R02 | 伝票点検B | 空欄 | 時間 | 2026-10-18 |
| R03 | 転記C | 0 | 時間 | 2026-10-18 |
| R04 | 台帳整理D | 3 | 時間 | 2026-09-30 |
| R05 | 資料整理E | 90 | 分 | 2026-10-18 |
| R06 | 書類点検F | 1 | 日 | 2026-10-18 |
| R07 | 伝票整理G | 空欄 | 時間 | 2026-09-29 |
| R08 | 台帳点検H | 2 | 時間 | 空欄 |
この教材では、次の仮ルールを先に保存しました。業種共通の有効期限や、実際の勤務時間の定義ではありません。
- 基準日は2026年10月20日。当月の比較に使うため、確認日が10月1日より前なら「古い記録」の候補にする。
- 値の空欄は「欠損」。0は記録された値として残し、意味は人に確認する。
- 比較単位は「時間」。60分=1時間として換算できるが、「日」は何時間か記載がないので保留する。
- 確認日が空欄なら「日付不明」。古い記録と断定しない。
事前の想定は、R02・R07が欠損、R04・R07が古い記録、R06が換算条件不足、R08が日付不明です。R01・R03・R05は仮ルール上の比較候補としました。比較候補も元記録を確認済みという意味ではありません。
AIに渡した指示と、実際に行った処理
初版では「主な状態を1つ選ぶ」と指示し、欠損、古い記録、換算条件不足、日付不明、比較候補の優先順を指定しました。元番号・理由・時間換算値・質問を付け、入力を補完しない条件も渡しました。
初版を読んだ後、状態を1つに絞る制約を外し、次のように修正しました。
欠損・古い記録・換算条件不足・日付不明を別の欄に残す。
1行に複数の理由があれば、すべて残す。
空欄を0で埋めず、日付や1日の時間数を推測しない。
元番号、換算値、確認理由、担当者への質問を付ける。
全行を担当者未確認とし、元表を変更せず、質問も送らない。
作業しているAI自身が素材を読み、表形式の下書きを保存しました。別のAIサービスや外部APIへの送信はしていません。90分÷60=1.5時間の換算もAIの出力であり、別の計算コードで確定した値ではありません。
3. 結果:5行の比較を保留し、6つの確認理由を残した
修正版を、同じAIが事前の想定表と1行ずつ読み合わせました。表は横にスクロールできます。
| 元番号 | 修正版の確認理由 | 時間換算値 | 次に確認すること | 状態 |
|---|---|---|---|---|
| R01 | 仮ルール上の問題なし | 2 | 元記録と作業範囲 | 比較候補・担当者未確認 |
| R02 | 欠損 | 保留 | 実際の値はあるか | 比較保留・担当者未確認 |
| R03 | 仮ルール上の問題なし | 0 | 作業なしなのか、未計測なのか | 比較候補・担当者未確認 |
| R04 | 古い記録 | 3 | 当月に確認した記録はあるか | 比較保留・担当者未確認 |
| R05 | 仮ルール上の問題なし | 1.5 | 90分の作業範囲はほかと同じか | 比較候補・担当者未確認 |
| R06 | 換算条件不足 | 保留 | 1日を何時間として記録したか | 比較保留・担当者未確認 |
| R07 | 欠損、古い記録 | 保留 | 値と当月の確認記録の両方はあるか | 比較保留・担当者未確認 |
| R08 | 日付不明。古さは未判定 | 2 | いつ確認した値か | 比較保留・担当者未確認 |
比較保留はR02・R04・R06・R07・R08の5行です。理由の延べ件数は、欠損2、古い記録2、換算条件不足1、日付不明1の計6件。R07に2つの理由があるため、行数と理由の数は一致しません。
修正版の区分・換算値・保留の扱いは、想定表と8行で一致し、不一致は0行でした。空欄の0補完、「1日=8時間」などの推測換算、日付不明を古いと断定する出力は、この読み合わせでは見つかりませんでした。
これは、想定表も参照できる同じAIによる自己照合です。人が評価した正解や、実務での正答率を示す数値ではありません。 繰り返し実行した場合の安定性も未確認です。比較候補3行を含め、全行の元記録・値の意味は担当者未確認のままです。
かかった時間と測定範囲
2026年10月20日10:03:39〜10:04:05(日本時間)の26秒を、素材・想定表の保存開始から初版・修正版・読み合わせ記録の保存までの経過時間として記録しました。AIの処理だけの速度や人の作業時間ではなく、テーマ選び、記事執筆、ビルド、表示確認は含みません。手作業との比較や削減率は測っていません。
4. うまくいかなかったこと:主な状態だけでは、2つ目の理由が消えた
初版では、R07を「欠損」とし、値を聞く質問だけを残しました。9月29日という古い確認日も持つ行ですが、1行1状態の指定と優先順に従ったため、その理由と更新日の質問が出力から落ちました。
修正版は「欠損」と「古い記録」を別々に残し、値と確認日の両方を聞く下書きになりました。AIが勝手に誤分類した問題の改善ではなく、こちらが指定した出力形式の不足を直した結果です。誤分類率の改善としては扱いません。
また、R03の0は欠損ではありませんが、比較に使ってよいかは別です。「作業しなかった」と「測っていない」の意味が混ざる運用なら、別の入力欄や担当者の確認が必要になります。表面上の形式がそろうことと、業務上の意味がそろうことは分けて扱います。
5. 実際の業務で使う前に確認すること
今回はAIだけで下書きと照合を行い、担当者の回答や承認は得ていません。実際に使う前には、次を人が決めて元記録と照合します。
- 鮮度の基準: 確認日・測定日・入力日のどれで判断するか、何日前まで使うか。今回の当月ルールをそのまま採用しない。
- 値の意味: 空欄・0・未計測・対象外をどう記録するか。欠損を平均値などで自動補完しない。
- 単位と範囲: 1日の定義、休憩を含むか、作業1回か月全体か。単位を換算しても比較範囲が合うとは限らない。
- 修正と履歴: 元番号を残し、誰が何を確認して直したか記録する。質問の送信や元表の変更は、下書きの作成と別に判断する。
数値が文字列になった行、負の値、未来の日付、不正な日付、同じ元番号の重複、大量の行は試していません。今回の結果を、それらも検出できる保証にはしません。
ルールが決まった空欄・日付・換算の処理は、関数や通常のコードに任せる方法が候補です。AIには自由記述の解釈や質問の下書きを任せ、人が意味と例外を確認する分担を検討できます。ただし、この分担を実装した結果ではありません。実データをAIに渡す前には、情報の扱いと利用条件も確認してください。
6. 元表の確認で手が止まるところから相談する
集計を自動化する前に、何を欠損とし、どこまで比較に使い、誰に何を確認するかを整理できます。すべてをAIに任せる必要はなく、今の表と担当者の確認方法に合わせて分担を決めます。
AI業務改善ガイドやサービス・料金を参考に、困っている工程を無料相談でお知らせください。最初から機密資料を送る必要はありません。