1. 提案依頼書には「作るもの」より先に、目的と未決の点を書く

提案依頼書(RFP)は、開発会社などに自社の目的や条件を伝え、方法や費用の提案を受けるための資料です。「受注管理システムが欲しい」だけでは、どの工程を変えるか、今のソフトを使い続けるか、誰が確認するかが伝わりません。

IPAの要件定義実践入門・冊子32〜34頁は、導入の目的や業務、要件を提案依頼にまとめ、詳細が書けない部分は開発会社と具体化する進め方を説明しています。また、提案時の概算と、要件定義後の正式見積りを区別しています。

以下の整理表・AIへの依頼文・確認手順は、この考え方を参考にしたhirostaの提案です。IPAがAIでの作成方法や効果を検証したという意味ではありません。

まず、依頼の段階を決めます。

今の状態 依頼すること 先に確定しないこと
困りごとはあるが、業務の整理ができていない 現状の聞き取り、対象業務と未決事項の整理 製品名、開発範囲、完成日
対象業務と必要な条件が見えている 方法の提案と、前提条件付きの概算 未確認の連携を含む固定の金額・納期
要件と確認方法を双方で合意できた 合意した範囲での正式見積り 将来の変更まで含む無制限の対応

AIの導入を前提にせず、既存ソフトの設定や通常の自動化で足りる方法も提案してもらいます。方法の比較はSaaSと個別自動化の選び方を、すでに動くシステムの小改修は既存システムの改修先の選び方を参照してください。

2. 原文を残し、必須・希望・未決の根拠を人が確認する

現場への聞き取りでは、普段の処理だけでなく、変更・取消・担当者不在のときも確認します。発言をすぐ機能名へ置き換えず、元の言葉と、どの作業で困るかを残します。

整理画面は、次の列を持つ一覧を想定します。AIの整理案と人の確定内容を区別し、誰が決めたかを追える形にします。

列 記入する内容
原文・番号 現場の発言や資料の該当箇所。R01などの番号を付ける
困る工程 受付・入力・確認・出荷など、どこで何が起こるか
必須・希望・未決 必須は今回外せない条件、希望は代替や後回しを相談できる条件、未決は判断材料が足りないもの
根拠 業務上の理由、確認した資料と版、発言者。裏付けがなければ未確認と書く
制約 使い続けるソフト、共有できる情報、停止できない業務、予算・希望時期の条件
確認者 条件を決める担当と、確認先・次に見る資料

「あったら便利」をAIが必須に変えたり、似た要望を一つにまとめて例外を落としたりすることがあります。原文の番号を残すのは、要約が自然かだけでなく、条件が変わっていないかを人が確認するためです。

必須にするなら、外した場合に業務がどう困るかを説明します。根拠が決まらないものは未決にし、「誰に何を聞けば決まるか」を書きます。意見が割れる場合も、AIに多数派を推測させず、双方の要望を残して責任者が判断します。

顧客名、個別の注文、認証情報、社外へ出せない仕様は、そのまま入力しません。項目名と架空の例で整理を始め、実資料の入力が必要なら、社内ルールや利用サービスの条件を先に確認します。生成AIへ情報を入力する前の確認も参考になります。

3. AIには分類案と確認質問を頼み、仕様の確定を任せない

AIを使わずに同じ表を作っても構いません。要望が少ない場合は、担当者が直接整理したほうが確認しやすいこともあります。AIを使うなら、入力を認められた聞き取りメモに番号を付け、次のように依頼します。

目的:新しい業務システムの提案を頼む前に、現場の要望を整理する。

入力:以下の番号付きメモだけを使う。社外秘や実際の顧客情報は含めない。

出力:原文・番号/困る工程/必須・希望・未決の整理案/根拠/制約/確認者の表。その後に、未決事項ごとの確認質問と、提案依頼書の下書きを作る。

条件:

  • 原文と番号を残し、すべてのメモの対応先を示す。
  • 必須・希望は、人が明示した区分だけを転記する。それ以外は未決にする。
  • 似た要望でも、条件が違うものや矛盾するものを消さない。
  • 資料にない機能、件数、費用、納期、連携可否を補わない。
  • 不明な制約や確認者は「未確認」と書き、確認する質問を付ける。
  • 送信、システムの操作、発注はしない。下書きにとどめる。

人が見るときは、原文の番号が全部あるか、まとめた行から元の条件に戻れるか、未決が確定事項に変わっていないかを確認します。文章の読みやすさだけで採用せず、根拠がない行は聞き取りへ戻します。

4. 想定シナリオ:卸売会社が受注の二重入力を見直す

以下は、架空の卸売会社で新しい受注の仕組みを検討する想定シナリオです。表・依頼文は説明用に執筆した例で、AIの実出力や、hirosta・顧客の導入・検証・成果ではありません。

現在は営業が注文を表計算へ記録し、事務担当が販売管理ソフトへ入力しています。次の聞き取りメモから始めます。

  • R01・営業:「同じ注文を二度入力したくない」
  • R02・事務:「取り込む前に、変更注文が混じっていないか確認したい」
  • R03・営業:「スマホからも見られると便利」
  • R04・業務責任者:「販売管理ソフトは継続する。受注業務を止める切り替えは避けたい」

責任者と事務担当への確認後、整理する例です。長い表を一つにせず、同じ番号で二つの表をつなぎます。

原文番号・困る工程 区分と条件 根拠
R01・受付から転記 必須:同じ注文の再入力を減らす方法を提案してもらう 責任者が今回の対象と確認。全注文の自動登録までは求めない
R02・販売管理への登録前 必須:変更注文を担当者が確認してから登録する 事務担当が通常注文と変更注文を分ける必要を説明
R03・外出先での参照 希望:スマホでの参照は別案でもよい 営業と責任者が初回の対象外でもよいと確認
R04・既存ソフトとの連携・切り替え 継続利用は必須。取り込み方法と切り替え方法は未決 責任者の方針。利用中の版・契約での対応可否は未確認
原文番号 制約・まだ決まっていない点 確認者と次の確認
R01 注文番号の管理方法、元データの項目 事務担当が現行の入力項目を整理
R02 変更注文の見分け方、確認後の登録手順 業務責任者が事務担当と手順案を確認
R03 閲覧権限、端末で扱ってよい情報 責任者が社内ルールを確認し、採否を判断
R04 ソフトの取り込み機能、受注を続ける切り替え手順 社内担当が提供元へ条件を確認し、依頼先に方法の提案を求める

R01だけを要約して「注文を自動登録する」と書くと、R02の確認が抜けます。また、R04の継続利用が決まっていても、連携できると確認したことにはなりません。決まった方針と、まだ確かめていない実現方法を分けます。

提案依頼書へ移す文例

目的は、営業の受注記録から販売管理ソフトへの再入力を減らすことです。変更注文は事務担当が確認してから登録する流れを残します。既存ソフトの継続を前提とし、全注文の自動登録、顧客への自動通知、スマホ参照は今回の必須範囲に含めません。

取り込み機能の利用条件と、業務を継続できる切り替え方法は未決です。確認が必要な資料・担当、提案の前提、対応できない条件を示してください。既存機能で対応する案も含め、方法と概算費用、要件を具体化する作業の範囲をご提案ください。

これは提案依頼の中心部分です。実際に渡す文書には、対象業務と利用者、現行の業務の流れ、確認済みの件数・繁忙時の条件、共有を認めた資料、予算と希望時期、提案の回答期限と窓口も添えます。不明な数値や希望時期をAIに埋めさせず、未確認と書きます。

権限・バックアップ・障害時の連絡や保守も、現場の要望に出なくても必要かを人が確認します。詳しく決まらない部分は、依頼先に確認方法と選択肢を求めます。

5. 概算と正式見積りを分け、前提が変わったら依頼書も直す

概算は、記載した前提での費用や期間を検討する材料として受け取ります。「未決の連携も含めて、この金額で完成する」と読み替えないことが大切です。

比較するときは、各社に同じ版の依頼書と補足資料を渡し、次をそろえます。質問への回答で前提が変わったら、版と変更箇所を残し、比較に必要な情報を各社へ同じ条件で伝えます。

  • 含む作業:聞き取り・要件整理、設定や開発、データ移行、動作確認、切り替え、説明・引き継ぎ。
  • 別にかかる費用:ソフトの利用料、連携の追加契約、保守、既存の提供元による作業。未確認のものは別枠にする。
  • 期間の前提:資料がそろう日、社内の確認日、既存ソフト側の回答待ち、切り替え可能な時間。
  • 次の判断:要件を具体化する作業の費用と成果物、正式見積りを出す条件、開発へ進むかを誰が決めるか。

金額だけで選ばず、未決事項を誰が解消するかと、確認作業が見積りに含まれているかを読みます。この記事では金額・日数の相場や、AIによる短縮効果は示していません。支援内容と料金はサービス・料金を参照してください。

業務の聞き取りからAIの使い方を整理した公開例は、業務ヒアリングとマニュアル作成の事例をご覧いただけます。提案依頼書の作成や、本記事の想定シナリオを実施した事例ではありません。

依頼する範囲がまだ決まらない場合は、AI業務改善ガイドから対象業務を整理できます。相談フォームには、困っている工程と利用中の仕組みだけでもお書きいただけます。

よくある質問

Q. AIに提案依頼書を全部書かせてもよいですか? 下書きに使うことは考えられますが、原文との対応、未決事項、依頼範囲と優先度は人が確認します。資料にない連携方法や費用が埋まっていたら、確定事項として使わず確認へ戻します。

Q. 要件が決まらないと、見積りを頼めませんか? 未決の点を明示して、要件を整理する支援や、前提条件付きの概算を依頼できます。正式見積りに必要な条件と、その条件を具体化する作業の費用・範囲は依頼先と確認してください。

Q. 必須と希望をAIに判断してもらえますか? 判断材料の整理や質問案の作成を補助させても、業務上の優先度は責任者が決めます。聞き取りで明示されていない区分は未決とし、理由を確かめてから確定します。