1. 議事録に残す項目を先に決める

全文の文字起こしと議事録は用途が違います。文字起こしは発言を振り返る材料、議事録は何を決め、誰が次に動くかを共有する記録です。残す項目を決めてからAIに下書きを依頼します。

残す項目 人が確かめること
会議名・日時・出席者 実際の参加者と所属
議題と主な論点 結論に必要な意見・条件が抜けていないか
決定事項 提案・検討中の案と区別されているか
完了の報告(済んだこと) 何を確認・実施し、どんな結果だったか
次の行動(宿題・担当・期限) これから行う作業か、引き受けた人と期限が合っているか
保留事項 未決の理由と次に確認すること

すべての発言を議事録へ転載する必要はありません。ただし、結論に付いた条件や反対意見を省くと、合意の意味が変わることがあります。確認担当と、最終的に確定する責任者も決めます。

社内の記録から考える、済んだことと次の行動を分ける理由

議事録では、決定事項・完了の報告・次の行動・保留事項を分けて書くことを提案します。 根拠にしたのは、会議ではなく、AIが作業記録を読み違えた社内の記録です。

2026年10月9日、hirostaの社内の開発基盤で、変更案(PR)の本文に残した記録をAIが「取り込み前に人が行う作業」と読み違え、自動での取り込みが止まりました。AIへの業務依頼の書き方にこの観察と学びがあり、AIに任せた仕事が止まったときには10月10日にも発生したと記されています。解決済みとは扱えません。

hirostaは、この記録を「記録があるだけでは、完了の報告か次の指示かが伝わらない」例と捉えています。確認したことと結果、人が決めること、これから行う作業を分け、未実施の項目には担当と実施する時点を書く、という学びです。

これを読者の会社の議事録へ応用するなら、採用した方針は「決定事項」、確認・実施済みの内容と結果は「完了の報告」、未実施の作業は担当・期限を添えた「次の行動」、まだ決められない内容は理由を添えた「保留事項」に置きます。決定した方針に伴う作業があっても、決定の記録だけで担当や期限まで合意したとは扱いません。

会議の議事録で同じ誤りを観察したものではありません。 この書き分けによる効果と、その後の再発の有無は未確認です。社内の開発基盤での観察から、議事録の下書きと照合に応用する提案として示しています。

最初に選ぶ業務の考え方はAI業務改善の始め方、作業手順や例外を引き継ぐ文書は業務マニュアルの記事で説明しています。

2. 会議前に参加者への通知と機能の設定を確認する

録音・文字起こしの目的と扱いを伝える

招待時と開始前に、録音や文字起こしを行うこと、目的、使うサービス、閲覧できる人、保存期間を知らせます。生成AIで下書きを作る予定も含め、社内ルールや相手との契約に沿って必要な了承を得てください。ツールの画面表示だけで、情報の利用や共有の合意まで済んだとは扱いません。

社外の参加者がいる会議では、相手が記録を認める範囲と、後で渡す情報を先に確認します。人事評価、健康情報、取引条件など機密性の高い会議は、情報管理の責任者が利用可否を判断します。不明なまま記録を開始せず、必要なら録音・AIを使わずに、共有してよい決定事項だけを人が記録します。

個人情報保護委員会は、個人情報を入力する際の利用目的と、個人データが機械学習に使われないこと等の確認を求めています。注意喚起の別添1の(1)①②を参照しています。会議の記録を別の生成AIへ渡す前にも確認が必要です。契約・学習利用・保存・削除などの詳細は顧客情報をAIに入力する前の確認へ進んでください。

製品例:Google Meetの文字起こし

公式ヘルプで確認した例として、Google Workspace Business Plusは文字起こしの対象で、日本語に対応しています。管理者の許可、Driveとファイル作成の有効化、組織と主催者の空き容量を確認します。ここではパソコンから利用する想定です。

主催者向けの管理機能がオンなら、文字起こしを有効にできるのは主催者・共同主催者です。オフなら主催者のドメイン内のユーザーが開始できます。開始後は全参加者の画面に文字起こしのアイコンが表示され、自動開始を設定した会議では参加時に警告が表示されます。全員に明示的な同意を求める管理者設定は、既定ではオフです。公式の利用手順と管理者向け設定に基づく説明です。

文字起こしの対象は話された言葉で、チャットは含まれません。会議前に開始担当を決め、必要な議題で記録が始まっているか確認します。録画やAI要約は文字起こしとは別の機能です。利用する場合は、対象プラン・管理者設定・言語・通知をそれぞれ現行の公式資料で確認してください。この記事ではそれらの機能が使えるとは断定しません。

3. 文字起こしを確認し、AIに下書きを依頼する

ここからは、社内の進捗会議で議事録を作る未実施の想定シナリオです。記録担当が出席し、会議の記録を使う許可と確認責任者が決まっている会社を考えます。

  1. 会議の議題、出席者、会議中に人が残した決定事項のメモを用意します。
  2. 文字起こしの欠け、発言者の取り違え、聞き取りにくい箇所を確認します。チャットや共有資料で決めたことは、許可された資料やメモで補います。
  3. 下書きに不要な個人情報や取引先の情報を除き、利用が認められたサービスに必要な部分だけを渡します。名前を消しても内容から相手を特定できる場合があります。
  4. 決めた項目で下書きを作り、各決定事項・宿題に元の発言箇所を付けるよう依頼します。

次は依頼文の例です。実行や精度検証をしたものではありません。

この会議記録から、議題、主な論点、決定事項、完了の報告(済んだことと結果)、次の行動(宿題・担当・期限)、保留事項を分けた議事録の下書きを作ってください。決定事項、完了の報告、次の行動には、根拠となる発言箇所を付けてください。提案を決定扱いにせず、済んだことを次の行動に混ぜないでください。実施済みか不明な内容や、担当・期限が明示されていない項目は「要確認」としてください。固有名詞・数字を推測して補わず、記録にない内容は追加しないでください。

長い会議を分割して下書きにする場合は、後半で変更された結論を見落とさないよう、会議全体で決定事項を照合します。Web会議サービスの要約を使う場合も同じ項目で確認し、別の生成AIへ無条件にコピーしないでください。

手動で下書きを作る段階から始め、API連携や自動共有は別に判断します。手動利用とAPI連携の違いでは、連携後の確認や保守も含めた考え方を説明しています。

4. 出席者が元の記録と照合して確定する

下書きは「確認前」と表示し、出席した記録担当が元の文字起こし、会議中のメモ、共有資料と照合します。許可を得て録音している場合は、必要な発言を聞き直す材料にできます。録音がなければ出席者に確認し、AIに推測させません。

  • 発言者・固有名詞:別の人の発言になっていないか。会社名・製品名・人名は資料と照合します。
  • 数字・日付・単位:金額、数量、期限の取り違えや抜けを確かめます。
  • 決定事項:「案を検討する」が「案を採用する」へ変わっていないか。条件や反対意見も確認します。
  • 完了の報告と次の行動:「〜を確認した」「〜を確認する」のような行は、誰が、何を、いつ確認したのか、これから確認するのかを元の発言で確かめます。済んだことは結果とともに完了の報告へ、未実施のことは担当・期限とともに次の行動へ振り分けます。判別できなければ保留事項に残し、出席者に確認します。
  • 宿題:誰が何をするか、期限が合意されたかを担当者に確かめます。未定なら未定のまま残します。
  • 抜け・混入:会議全体の議題と照合し、重要な論点の漏れや記録にない説明を確かめます。

想定シナリオで「納期は取引先に確認してから決める」と話したのに、下書きが納期を確定していたら修正します。文章が自然でも承認しません。根拠が見つからない場合は保留事項に戻し、担当者へ確認します。

責任者が修正内容と未確定事項を確認して確定版にします。通常の業務会議の記録を想定した手順であり、法令・社内規程で形式や承認方法が決まっている議事録は、その要件を別に確認してください。

5. 確定版の共有先と保管方法を決める

共有前に宛先と閲覧権限を確認し、確定版の保存先・版・確定日・確認者を残します。社外向けは、社内の検討事項や不要な個人情報を除いた別の共有版を人が確認します。全文の文字起こしと確定議事録で、同じ閲覧範囲にする必要はありません。

Google Meetの文字起こしは主催者のDriveに保存され、カレンダーの予定にも添付されます。公式ヘルプでは、原則として主催者の組織内の招待者が添付を開けるため、出席者だけが見られると考えず、招待者と実際の権限を確認します。共有リンクを送る前から閲覧可能な人がいることに注意してください。

録音、文字起こし、下書き、確定版のそれぞれについて、保管責任者・保存期間・削除方法を決めます。外部サービス側に残る記録も確認対象です。修正が出たら正本の版を更新し、どれが最新か分かる形で共有します。担当者や期限が変わった場合は、議事録と作業管理の記録の両方を人が確認してください。

6. AIで補えない部分と、続けるかの判断

音声が不明瞭、発言が重なる、画面の資料だけを指して話す、といった会議では、文字起こしだけで内容を追えないことがあります。要約では条件や少数意見が落ちる場合があり、AIが付けた発言箇所も正しいとは限りません。出席者が判断できない内容は、整った文章にして確定せず、確認待ちにします。

想定シナリオを自社で試すなら、情報の利用が認められ、出席者が内容を確かめられる会議に絞ります。会議前の準備、下書き、修正、共有までを含めて今の方法と比べ、確認の負担が増えるなら使う範囲を狭めるか、手作業へ戻します。この記事では削減時間や精度・費用の数値を示していません。

Q. 文字起こしをそのまま議事録にできますか? 発言の記録として使えますが、決定事項・完了の報告・次の行動・保留事項を分け、人が発言の意味と合意を確認してから議事録にします。確認済みの報告を、これからの宿題として残さないことも照合の対象です。

Q. 参加者に通知すれば、どの会議でもAIを使えますか? 通知だけで判断せず、社内ルール・契約・情報の利用目的とサービスのデータの扱いを確認します。不明なら利用を保留します。

Q. AIの下書きを出席者全員に自動共有してよいですか? 確認前の下書きを確定版として自動共有する運用にはせず、内容と宛先・権限を確認してから共有します。