1. 人数より、繰り返しの負担と確認の手間を見る
「経理から」「問い合わせから」と、部署名だけで決める必要はありません。同じ部署でも、決まった計算と、文章を読んで分類する作業では、適した方法が違います。
少人数の会社では、一人が複数の仕事を担当していることもあります。毎日繰り返す転記や下書きが負担なら、改善候補として整理しましょう。一方、たまにしか発生しない作業や、AIの結果を確認する方が大変な作業は、最初の候補から外してよいものです。
たとえば、社員10人の会社でも、定型的な問い合わせが繰り返し届き、回答の根拠と確認者が決まっていれば、返信の下書きを試す候補になります。問い合わせが少なく毎回個別判断が必要なら、先に回答方針や手順を整理する方がよい場合もあります。これは判断のための想定例で、人数別の効果を示す実績ではありません。
AI業務改善の全体像や業務別の入口は、AI業務改善ガイドで確認できます。ここからは、自社の候補を選ぶ手順を説明します。
2. 困っている作業を書き出す
まず、負担を感じている作業を担当者に聞き、次の項目を短く整理します。部署全体ではなく、「日報から引き継ぎ事項を拾う」「問い合わせの返信を下書きする」など、入力と出力が分かる単位にします。
- 困っている作業・担当者:何で手が止まり、誰に負担が集中しているか
- 頻度・件数・作業量:いつ、何件ほど処理し、準備・確認までどのくらい手間がかかるか
- 入力と出力:何を受け取り、何を作るか。元資料や判断の根拠はどこにあるか
- 既存ツール:今使っているメール、表計算、業務ソフトと、使える取り込み・集計機能
- 人が確認する部分:誰が、何と照合し、誰が承認するか
- 例外:資料不足、いつもと違う依頼、担当者しか分からない判断は何か
書き出しの例:問い合わせへの返信の下書き
以下は棚卸しの想定例です。件数や時間は、自社で確認した値を書きます。
- 困りごと・担当者:総務担当が、似た質問への返信を毎回書いている
- 頻度・件数:営業日ごとに発生。件数と下書き・確認の時間を記録する
- 入力:問い合わせ文、承認済みの回答方針。出力:返信の下書き
- 既存ツール:メールと共有フォルダ。定型文の機能で足りるかも確認する
- 人の確認:担当者が方針・宛先・事実を照合。個別条件は責任者が承認してから送信する
- 例外:苦情、契約変更、資料に答えがない質問は、下書きの対象から外す
属人化している作業は、「詳しい人の代わりにAIが判断する」と考える前に、その人が見ている資料や例外を整理します。判断の根拠を用意できなければ、先に手順の共有から始めましょう。
3. 候補を比べ、最初の1つに絞る
候補ごとに、次の4点を確認します。ここで示すのは選定のための提案で、効果を予測する採点表ではありません。
- 繰り返しの負担があるか:反復回数や作業量を見ます。待ち時間や確認作業も含め、何を減らしたいかを言葉にします。
- 入力情報を用意できるか:必要な資料を取り出せるか、内容が読めるか、入力してよい情報かを確認します。資料探しに大きな手間がかかるなら、先に保管方法を整えます。
- 人が結果を確認できるか:元資料や正しい答えと照合でき、確認する担当者がいるかを見ます。正誤を判断できない作業は、最初の試行には選びません。
- 誤りが出たときに止められるか:登録・送信・公開の前に止め、修正できるかを確認します。試す段階では本番への自動反映を外し、今の手順に戻せるようにします。
まず、入力可否・確認者・停止方法を決められない候補を保留します。残った候補の中で、繰り返しの負担があり、今のツールを活かして狭い範囲で試せるものを1つ選びます。同程度なら、資料の準備と確認がしやすいものから始めましょう。
先ほどの想定例で、定型的な質問には回答方針があり、担当者が送信前に確認できるなら、その種類の返信下書きだけを候補にできます。契約変更への回答まで一緒に任せる必要はありません。
4. AI・通常の自動化・人の判断を分ける
IPAは、AIの活用として文字の認識、要約、文書作成、分類などを挙げています。ただし、AIが使えることと、自社の作業で採用する価値があることは別です。次のように工程を分けて考えます。
AIを試す工程:下書き・分類・読み取り
問い合わせの分類、承認済み資料を基にした返信の下書き、書類から項目を読み取る作業などが候補です。元の文面や書類と照合できる形で結果を出し、人が修正します。
具体的な流れは、問い合わせ対応や書類処理の業務ページも参考にしてください。
既存機能や通常の自動化を使う工程:集計・転記・通知
決まった列の合計、形式が揃ったデータの転記、期限に基づく通知などは、表計算や業務ソフトの既存機能で足りるかを先に確認します。回答が固定なら、メールの定型文を使う方法もあります。
たとえば、勤怠の集計は人数だけでAIの必要性を判断せず、今の記録形式と計算ルールから方法を選びます。勤怠・給与の自動化では、AIを使わない自動化も紹介しています。
人が担う工程:承認・例外・専門判断
送信・公開・登録の承認、資料にない質問への対応、税務・労務・契約などの判断は、人が担う範囲を決めます。必要な専門判断は専門家に確認してください。読み取りや下書きだけをAIに任せ、後の工程を人が続ける試し方でも構いません。
5. 入力する情報と確認・承認の担当者を決める
入力する前に、個人情報・顧客情報・社外秘が含まれるかを確認します。個人情報保護委員会は、個人情報の入力について利用目的の達成に必要な範囲か、個人データが機械学習に使われないか等を確認するよう注意を促しています。
実際に使うサービス・プランの現行の契約や設定で、次を確認しましょう。
- 入力してよい情報の範囲と、社内ルール・顧客との契約上の制約
- 入力・出力の学習利用、保存期間、削除方法、閲覧できる人の範囲
- 情報の入力を承認する責任者と、結果を確認・承認する担当者
学習利用を止める設定だけで、すべての情報を入力してよいとは判断しません。不明な場合は入力を保留し、情報管理の責任者や提供元に確認します。最初は架空の内容や、利用が認められた情報で操作を確かめ、実データを使う際は必要な情報に絞ります。名前を削るだけで個人や顧客を特定できなくなるとは限りません。
確認者は「気になる所を見る」だけでなく、何と照合するかを決めます。返信下書きなら、回答方針との一致、固有名詞や日付、宛先、資料にない内容の混入を確認し、判断できないものは責任者へ戻します。
6. 1種類・1工程で試し、確認負担まで比べる
問い合わせなら「定型的な質問への返信下書き」、書類なら「同じ形式の書類から必要項目を読み取る」など、最初は1種類の1工程に限定します。送信や本番登録は試行の対象から外します。
比較の進め方は次のとおりです。
- 範囲と比較条件を揃える:同じ種類・件数・難しさの入力と、同じ完成条件で、今の方法と試した方法を比べます。入力が偏っている場合は、その条件も残します。
- 今の作業を記録する:準備、処理、確認・修正にかかる手間と、完成した結果を残します。
- 試した方法を記録する:AIへの入力準備、処理、確認・修正、ツール間の転記まで含めて見ます。誤りや、判断できず人へ戻したものも記録します。
- 続ける・直す・やめるを決める:必要な品質に達し、確認を含む負担や費用が見合うかを判断します。確認が増えるなら範囲を狭め、通常の自動化や手作業へ戻す選択もあります。
導入期間や削減率を先に固定する必要はありません。通常の作業と、想定される例外を確認できる範囲で試し、その条件で得た結果として扱います。対象を広げるときは、入力情報・確認者・停止方法も改めて確認しましょう。
7. 業務整理から相談した事例
hirostaのAI活用に向けた業務ヒアリングとマニュアル作成では、どの業務にどうAIを使うかが整理できていない状況から、業務をお聞きして候補を整理し、用途別の活用マニュアルを作成しました。一部はサンプルデータ付きで試せる形にしています。
これは業務整理と活用手順の作成を紹介する事例です。人数別の効果、導入期間、時間削減を示す事例としては扱っていません。
自社の候補を決めきれなくても、困りごとだけで相談できます。今のツールや確認の流れを含め、hirostaと一緒に整理しましょう。支援内容・料金・契約条件はサービスページにまとめています。
よくある質問
Q. 中小企業で最初にAI化すべき業務は? 繰り返しの負担があり、入力情報を用意でき、人が結果を確認して誤りを止められる作業を候補にします。今のツールの機能で足りるかも確認し、1業務の1工程から試しましょう。
Q. 社員10人程度でもAI導入する意味はある? 試す価値のある作業はありえますが、人数だけでは判断できません。頻度・件数・作業量と、準備や確認・修正の手間、費用を含めて比べます。作業が少ない場合や確認負担が増える場合は、既存機能や手順の見直しを選べます。
Q. 属人化した仕事を、そのままAIに任せられる? まず担当者が参照する資料、判断基準、例外を整理します。正誤を確認できない仕事は、最初の試行には選びません。手順を共有したうえで、下書きや情報整理など確認できる工程を切り出します。
Q. AI化する業務を決めてから相談した方がよい? 決まっていなくても構いません。困っている作業や今使っているツールをお聞きし、hirostaと一緒に候補と確認の流れを整理できます。